秘密保持契約書(CDA)についてダラダラと書いてみた
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秘密保持契約、CDA、SA、NDAなど、色々な言い方がありややこしいが、
この記事ではCDAということで統一させていただく。
ある程度企業法務に関わってきたが、
「CDAは奥が深い。」
と改めて思うことが多い。
その理由は、おそらく売買契約などと異なり、目に見える具体的なものではなく、
一般的に、「情報」というものがメインになっているからであろう。
ライセンス契約なども、そういう部分があることはあるが、
対価などがお互いに合意できれば、その他の部分で揉めるような項目というのは
ある程度どのライセンス契約であっても共通しているように思うのである。
また、ライセンス契約の場合、目的やスキーム、ゴールが明確になっている部分が多い分、
契約書を作成する段階でも、これだけは譲れないとか、これは譲っても良いというような項目が
比較的分かりやすいように思う。
しかし、CDAの場合には、そもそも何をゴールとしているのかについてはっきりと決められない部分も多い。
むしろ、それを決めるための材料収集、情報交換という側面がある。
契約交渉においても、法務担当者としても、
まだ何がどうなるのかについて決まっていない段階で、
あまり小難しいことを言いにくい面もあるし、事業部門としてもまだあまり勝手を知らない
将来の取引先に対してCDAの段階からガンガンと契約条件を交渉するというのも正直やりにくいであろう。
こういったCDAの抽象性とでもいうものは、その分、相手方の性格をより如実に表わすような気がする。
もちろん、他の契約書にだってそういう部分がないわけではない。
しかし、CDAの場合、概して決めるべき項目というものはそれほど大差がないにもかかわらず、
それをどう決めるのか?という面では様々なバリエーションがある。
つまり、将棋やチェスのようなゲーム性が強い感じがするのである。
駒やボードは同じだが、しかしその進め方においては千差万別なのと同じである。
(これは私だけが感じているだけかもしれないが。)
CDAの提示内容からは、会社の性格(強圧的、フェアプレイ的、支離滅裂的など)だけでなく、
それを修正していくやりとりの中で、相手方の法務担当者などの性格も良く分かるし、
親会社など別の会社の人間が介入して修正していたりすると、力関係も分かる。
そういう意味では、なかなか面白いものである。
話は変わるが、個人的な考えでは法務担当者を採用する場合、
履歴書や保有資格や過去の会社での経験を語っていただくよりも、
CDAをチェックさせてみるのが一番手っとり早いのではないだろうか。
(もちろんその他の試験などは別途併用すれば良い)
「このCDAを修正してください。但し、このCDAを締結する目的は、
当社がライセンサー候補先からの情報を受領して、それを社内で検討し、
相手方に検討結果を開示するというものですので、それを考慮したうえで修正してください。」
といったかたちでCDAを渡して、制限時間以内に修正してもらうのである。
試験に使うCDAは、その会社のひな型などに合わせた実践的なものが良いであろう。
そのCDAは、わざと自社にとって不利な内容にしておくのはもちろんのこと、
ちょっとした誤記や、甲乙の記載を逆にしておくなど、注意深さなどもチェックするための
トラップも設定しておくと良いであろう。
試験問題を作る側としては、「お!ひっかかった!」などと楽しめそうであり、
自分の法務としてのイヤらしい側面を思う存分堪能できそうである。
こういうものは、法務に配属された新入の研修や、他部署の研修などにも使えるかもしれない。
英語バージョンも作成すれば、国際法務要員の要請にも役に立ちそうである。
それにしても、最近では本当にCDAを締結しないと何もビジネスが開始できない時代になってきた。
それは、法務がCDAに時間を割けば割くほど、ビジネス自体の開始が遅れることを意味する。
市場における製品寿命が短く、サイクリングが早い製品に関わっているような会社の場合、
例えば数か月もCDAの締結が遅れると、例えばそのCDAが新製品の開発を目的としている場合には、
結果として市場への製品投入が遅れて会社の利益を損なう可能性がある。
そういう意味では、法務は正確性も慎重性も大事だが、
同時にスピードを重視しなければならないというのが私のモットーである。
「この条項を譲ったら、こういった損害が出るリスクがありますよ。」
と事業部門に説得することも必要だが、
「今度検討しようとしている新製品の1日の売上は1000万円です。
この契約交渉に費やす日数分×1000万円の逸失利益と比較して、
そこまで重要な条項なのですか?」
とビシッと言い返してみることも事業部門にとっては必要である。
ぜひ、事業部門の方は、法務がうるさいと感じたらそう主張していただきたい。
(ビジネス意識に欠ける法務担当者の場合には通用しないであろうが)
話がそれたが、CDAの締結がなんでもかんでも求められるようになってきているのは、
私は別に悪いことではないと思っている。
というのも、そういったCDAが、社内の契約データベースに登録されていると、
「ああ、今度CDAを締結するこの会社、過去にこんな案件で契約していたんだ。」
というように、履歴が残るためである。
そのときに担当していた事業部門の人間から、色々な情報を得ることもできるであろう。
また、そのときの契約条項などをそのまま利用して速やかに締結できると
いうようなこともなきにしもあらずである。
但し、お互い担当者が替わっていたり、契約をする背景が異なっていると、そう上手くは
いかないことが多いし、自社に不利な内容で締結していると、そのまま契約ということは
こちらとしても当然できなくなるのだが。
私の会社でも、そういった過去のCDAというものはかなりの数が登録されている。
その中には、特に大したノウハウや情報を開示するわけでもないのに、とりあえず生中、
ではなくCDAを準備してくれという事業部門の要請にひたすら応えたにもかかわらず、
プロジェクトがその次の段階まで進まず死骸となっているCDAもかなり多い。
中には、死骸ならまだしも、実質的には中止となっているプロジェクトが、
延々と自動更新条項のせいで生き延びている半死半生のCDA、いわゆるゾンビCDAも多い。
こういうCDAは、きちんと葬ってあげないと可哀そうなので、
事業部門の人に、終了の覚書などを作成してもらうよう依頼することもある。
このように、自動更新にすると、ゾンビCDAを増やすことになるが、
かといって契約期間を例えば1年間というかたちで一定期間にしてしまうと、
「あ、あのCDAもう失効しちゃったんで延長の覚書作ってくれる?」
「え?このCDA半年前に失効してますけど…」
「あ、ごめんごめん気がつかなかった。それじゃよろしく。」
というようなことになるのである。
こういう場合、私の個人的経験則によれば、ほぼ確実に一度だけではなく、
二度三度と延長をすることになる。
つまり、契約期間の定め方は、どちらの方法を採っても、メリットとデメリットがあるのである。
なお、私があまり好まない規定の仕方としては、
「本契約の秘密保持義務は、秘密情報を受領した日から○年間有効とする」
というような内容のものである。
この場合、例えば契約期間中のそれぞれ異なる3つの日時に相手方から秘密情報の開示を
受けたとすると、それぞれの日時から○年間ということを把握している必要が出てくるからである。
秘密情報の定義がしっかりとなされており、書面だけに限定されているような場合ならまだしも、
「一切の開示された情報」などとされていると、いつ開示を受けたかを特定する労力が大きくなってしまう。
特に、昨今のようにメールなどで頻繁に情報のやりとりが生じるケースにおいては、
いくらメールソフトに受領時間が記録されるとしても、やはり面倒には違いないし、
そういった情報はリアルタイムで法務が把握することができない。
そのため、私はいつも、そういう規定が提案された場合には、
「秘密保持義務は締結日から○年間有効であり、契約終了後は○年間存続する」
というような趣旨で変更することにしている。
話が細かい部分にそれてしまったついでに話を続けさせていただくと、
「本CDAは、両者が別途契約(例えば共同開発契約など)を締結したときに終了する。」
というような規定も見かけることが多い。
ということは、契約書の文言をあくまでも形式的に判断した場合、
共同開発契約締結によりCDAが終了した時点(存続条項の規定があれば、その期間終了時)をもって、
秘密情報を自由に使ってよいことになる。
たまたまそれが共同開発の真っ最中であったとしても、そういうことになる。
しかし、これは両者の意思とは異なるであろう。
「共同開発中だけど、あのときのCDAでいただいた情報は某社とのプロジェクトに使いますので悪しからず。」
などと言われてOKと考える会社はないはずであろう。
もちろん、一般的には共同開発契約においても秘密保持条項が設けられているであろうが、
それはあくまでも共同開発契約における秘密保持であり、過去のCDAに対しては効力は及ばないものが多い。
そう考えると、共同開発契約を結ぶ際に、
「旧CDAの規定は、本共同開発契約にも適用される。」
又は、
「本CDAの規定は、別途契約においても引き継がれるものとする。」
というような趣旨での規定を入れたうえで締結すべきであろう。
(具体的な文言はそれぞれの会社により異なるであろうが)
要は、CDAを終了させるタイミングには気をつけないといけないということである。
そして、ブログの記事も終了させるタイミングには気をつけないといけないということである。
ダラダラとCDAについて思うことを書いてきたが、キリがないのでこのあたりにする。
今回の記事は、次回同様のテーマで取り上げるまで引き続き有効とする。
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