ロスの犯罪と予防【カージャック、空き巣、泥棒さんの話】#3
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カージャックとその予防法
カージャックはアメリカで頻繁に起きている重罪(Felony)の一つである。以前木庵はホームレスの人を取材したことがあるが、一人のホームレスはカージャックを仕事にしていた。当時車を盗むことは簡単で、車のドアの隙間から特別の器具を挿入させドアを開け、鍵がなくてもコードを接続させスタートさせることができる。ところが近頃、精巧なアラームシステムを装備されている車が多く現れ、プロでも、簡単にはいかなくなった。
そこで、直接ドライバーと接触して、金品を強奪するか、車を盗むかなどになるケースが多い。
もしこのようなことに遭遇したとき、もちろんこの話はアメリカでのことであるが、犯人の言うことに従うことが一番大事である。金や車は取り返しがつくが、命は返ってこない。犯人の目的は金品強奪や車を盗むことであり、相手に危害を加えることではない。犯人がもし金だけが目当てである場合は、財布を犯人から少し離れたところの地面に捨てること。鍵の場合も同じく地面に捨てること。鍵は家の鍵などと一緒にしないで別々にしておいたほうがよい。一緒の場合、財布に入っている身分証明書などから住所を知られ、犯人もしくは、犯人の知り合いが後にその鍵を使って侵入してくる可能性がある。地面に捨てられた財布なり鍵を犯人が拾っている間に、逃げるにかぎる。犯人は捨てられたものが目的であるので、追いかけてくることはほとんどない。
長谷川氏はその後、警察に報告することなどを語ったが、日本の読者にはあまり関係ないので割愛する。アメリカでは自動車保険に入っている人が多く、車が盗まれても新しい車を保険会社がカバーしてくれるので、車を盗まれる程度で、犯人の心証を害するような言動をとらない方が賢明である。
カリフォルニアでは、車の所有者は全員車の保険に入ることが法律で決めれている。しかし、入っていない車にぶっつけられた場合、補償されないが、ある程度自分の入っている保険会社からカバーされることもある。保険には対相手用と対自分用がある。木庵の場合、対相手用しか入っていないので、自分の不注意で自分の車を傷つけた場合、補償されない。木庵のミスで相手の車にぶっつけたとか、どこかの家の壁を壊した場合、補償される。勿論相手が問題がある場合は相手の保険会社が補償してくれる。もし事故にあった場合、保険会社(自分と相手の)の交渉で、見事なほどスムーズに事が運ぶ。木庵は、木庵の責任ある事故と相手が責任ある事故、それぞれ経験しているが、別に大きなトラブルはおきなかった。
空き巣【Burglary】
カリフォルニア刑事訴訟法第459条で定義されているバーグラリーとは、住宅、ルーム、アパート、オフィスビルなど人の居住、ビジネス場所に許可なく侵入し金品を盗む犯罪で重罪(Felony)として扱われる。
木庵の知り合いで、空き巣に二度も入られた人がいる。ロスの空き巣は大胆である。旅行に出かけるなどで家を何日か空けるときは気をつけなければならない。ロスでは家にまで新聞を配達してもらっている人は少ないので、新聞が何日も外に置いてあるという状態はあまりないが、郵便受けに、何日もたまった郵便物があるという場合がある。そういう状況はまさしく犯罪者に不在であることを知らしていることになる。また、夜窓から電気がもれていないとか、テレビやラジオの音がしないと、これも不在を知らしていることになる。
目標とする家が不在であると分れば、真昼間からトラックをもち込み、引越しをしているようなふりをして、堂々と家の中の物すべてを持ち去ってしまうことがある。このような手口で木庵の知人は2回もやられたのである。ロスの市外地になると、家と家との間が少し離れていて、また近所づきあいもないので、引越しのふりをした空き巣を近所の人は気づかない。</fontZ>
泥棒さんの話
空き巣というより、泥棒を日常的にしている人間が木庵のアパートにいた。彼は木庵がアパートを購入し、そこに住むようになってから、要注意の人物として捉えていた。彼の名前をDとしておく。
引越ししてからまなし、木庵がわりと気に入っていた箒をドアの外に置いていた。それがなくなっている。不審に思ったが、外に置いた自分が悪いと諦めていた。ところが一年後に、この要注意の人物Dが堂々と行方不明になっていた箒を使っているではないか。
だんだんDの素行が分かるようになってきた。テナントの中でもDの被害者が多く現れている。しかし、それほど大したものを盗まれるわけではないので、またこの程度のことは犯罪と見なさないのであろうか、誰も警察に訴える者はいない。
彼の親戚の人がアパートに引っ越してきた。その人の話では、親戚であってもDを家の中に入れないという。入れると物がなくなることがある。例えば、カセットテープがなくなったと思っていると、Dはそのテープを平気で使っているという。もはやDの感覚は他人の物と自分の物との区別がつかないのである。
前のオーナーが雇っていたハンディーマンを木庵も最初使っていた。彼はアパートに住んでいたが、引越しして出て行ってしまったので、仕方なくDをハンディマンとして採用することにした。Dの話では、元々、Dが前の持ち主のハンディーマンであったが、持ち主の親戚に当たる前のハンディーマンに仕事を
奪われたという。
Dは器用である。器用だけでなく金をあまりかけずに修理する術を心得ている。それに仕事の報酬を多く要求しない。意外にいい奴なのである。以前にもこのアパートのハンディーマンをしていたので、アパートの隅々まで知り尽くしている。Dが本気になればどの部屋だって自由に侵入できるという。テナントの一人が鍵を家の中に忘れて中に入れないような場合、網戸などをこじ開けて、入れるようにしてしまう。オーナーである木庵は合鍵を持っているのが、木庵が不在の時など、Dがこのようなことを勝手にしてしまうのである。
Dはハンディーマンとして重宝なのだが、どこか不気味な存在でもあった。だんだんDとの人間関係ができ、Dが間違いなく泥棒であることが分かった頃、Dは木庵の目の前で泥棒を実演した。
「娘のハロウィンの衣装を買いに行きたいのだが、木庵さん、店まで連れて行ってくれないか」と頼まれた。店に入ると多くの客で混んでいる。Dは店員に、「これと同じもので、サイズがもう少し大きいものお願いします」と言った。店員は、それを探しに奥の方に行った。そうするとDはコスチュームを彼が着ている服の下に隠した。客たちは自分の買い物に夢中で、Dの不審な態度など気にかけていない。Dはそ知らぬ顔をして外に出た。完全犯罪成立。この話にはオチがある。アパートに帰って、娘にプレゼントしたが、娘は気に入らないと言ったので、Dはそのコスチュームを近所に売りに出かけた。
犬を散歩に連れて行くときの自由にロープの長さを調節できる、何というのか知らないが、そのようなものがある。そのものが故障してDに直してもらっていた。なかなか直してくれないので「どうなったのだ」と聞くと。「いや、ワイフが捨ててしまったんだ。でも大丈夫、弁償するから」と、ペットショップに同行することになった。一緒に入ると、買うのかと思いしや、コスチュームを盗んだときのように、服の下に隠し、外に出て行った。それも二つも盗んでいる。そして言った言葉がなお驚きである。「ここに二つある。これ前のよりよいだろう。どうだ二つで30ドルだ」。
もうこうなると、こちらまで犯人扶助罪で訴えられる。「今回は金を払ってやるが、もうこれからワタシを巻き込まないでくれ」と念を押した。
Dは元々立派な仕事に就いていた。アメリカ空軍の整備士や警察官でもあったという。ところがどこかで道を外したのだろう。仕事をなくし、奥さんが外で働いて、Dが家にいて一人娘の世話や家事をこなしている。そして時には、ハンディーマンの仕事があれば働くという生活を送っていた。Dは金を儲けてもその金はほとんど酒に変えてしまう。朝からビールを飲んでいる。ほとんどアル中である。まだ40代だというのに老人のように見えた。
時には万引きなどで捕まることがある。そして刑務所に収容される。何ヶ月か経って釈放されるが、刑務所帰りの表情は良い。健康になって帰ってくるからである。さすがに刑務所ではアルコールが禁じられているので、健康体になるのである。刑務所には医者もいるから治療をしてもらい、食事も規則正しく食べ、健康なDになって帰ってくるのである。しかし、帰ってからすぐに酒を飲みだす。やせこけた上に酒ばかりの生活、健康によいわけがない。糖尿病になっていた。血糖値が異常に高くなるのか低くなるのか知らないが、救急車がよく彼を運ぶようになった。病院で治療を受ける。すぐに脱走して、その日からまた酒を飲んでる。
Dはあまりこの世に長く生き続けたくないようであった。元々立派な男であったのが奥さんの世話になり、酒に入り浸り、泥棒が家業になっている自分を一番嫌っていたのはDなのだろう。酒に溺れているのは、自暴自棄の表れ、自殺行為であった。結局昨年の5月、あの世に行ってしまった。
考えてみれば、良い奴であった。気が小さく、酒から逃れることができなかったのである。死んでしまって、Dのことを思い出すことが時にあるが、彼が泥棒をしたようなことより、Dの娘さんをこよなく愛していたようなことがより鮮明に思い出す。Dはある時言っていた。「娘はギャングのような人間と接してほしくないんだ」。Dにすれば、彼が常時行なっていた泥棒は犯罪ではなく、ギャングが行なうドラッグがらみの犯行が本当の犯罪だと思っていたのだろう。
写真の説明:ハロウィンのために魔女やお化けに仮装した子供たち
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