さて、日本の桜もタンノウできたことだし、そろそろオーストラリアに戻ろうかな。
日本の里山は、春が訪れると桜が咲き、桜が咲き終わると茶色から緑色に染まっていくんだね。
そして、里山が緑色に染まる頃に田植えが始まって、紅紫の萩の花で染まる頃に稲を刈り入れる。
こうして日本人は、三千年ものあいだ、コメを作り続けてきたんだね。
日本は三千年来、稲穂の国、瑞穂の国だったんだ。
考えてみれば、雪解け水や雨水を貯める「田んぼ」は、地下水を使うこともないし貯水ダムの役目も果たすから、大雨の時でも洪水や土砂くずれを防いでくれるし、「田んぼ」の水が蒸発して気温が上昇するのを防いでくれるし、そして、蒸発した水が雨になってまた「田んぼ」にかえってくるという、地表の水のサイクルをうまく利用した、畑のように塩害や連作障害などの心配がほとんどいらない、永久に持続可能な循環システムなんだね。
だから、コメを作りつづけてきた日本は、水が豊富で、ずぅーっと稲穂の国、瑞穂の国のままだったんだ。
地表の水が豊富にあるから、地下三百メートルの「化石帯水層」があるようなところに、浄化されるまでに何万年かかるかわからない核廃棄物を埋めようなんていう、子孫たちのことをまったく考えないお役人たちのキチガイじみた発想も生まれてくるんだろうね。
ご先祖様には感謝しなくちゃいけないよね。
大陸の国では、小麦が栽培されるようになって人類の文明が始まったとされるメソポタミアがあった今のイラクやエジプトあたりをみてもわかるように、当時、豊富に小麦が収穫できていた肥沃な土地だったところが、今は「砂漠化」して見る影もないよね。エジプトに至っては、今や世界最大の小麦輸入大国の地位を日本と争うようになったぐらいだからね。畑で穀物を作りつづけると「砂漠化」を招くということを歴史が証明してると思わない?
「砂漠化」するということは、水が不足するということだよね?
水がなければ、飲み水がなくなるどころか植物も育たないよね?
我々は、植物の息を吸って生きてるわけだから、植物が育たなければ吸う息もなくなるよね?
当然のことながら、我々は生きていけなくなる。
ところが、大陸の国の人たちは、またバカな事を始めたよ。
「地球温暖化」が進んだのは、化石燃料を燃やしてCO2が増えたからだっていうんで、CO2をこれ以上増やさないようにと、トウモロコシやサトウキビから「バイオエタノール」を作り始めた。
縦割り官僚が支配する日本では、石油業界から言われるがままの「経済産業省」と、外圧に手も足も出ない「農林水産省」と、まったくやる気の見えない「環境省」のお役人たちがお互いに足を引っ張り合ってるから、「バイオエタノール」についてはまだまだ遅れているけど、すでに世界中が「バイオエタノール」のためにトウモロコシやサトウキビを栽培し始めてるよね。
本当に愚かなことだと思うよ。
だって、ただでさえ増大する人口の食料をまかなうために「化石帯水層」の水を畑にまいて農作物を作ってるというのに、その上さらに、その水を使って「バイオエタノール」を作ろうというんだから。
何万年という長い歳月をかけて氷河期に蓄えられた「化石帯水層」の水は、一度汲み上げてしまえば、二度と補給されることがないから、枯渇すればそれっきり水がなくなるというのにだよ。
そんなことも考えずに、せっせと水を汲み上げて一生懸命「砂漠化」を加速させようとしてるよね。
それに、「化石帯水層」の水を汲み上げると、化石燃料を燃やせばCO2の量が増えるのと同じように、地表の水の量を増やすことになるから、「海面上昇」も招くよね。
私には、「海面上昇」が加速してるのは、「地球温暖化」で地表の氷が溶け出してるということより、1tの穀物を生産するのに1000tの水を必要とする、その膨大な量の水を「化石帯水層」の水を汲み上げて放出してることの方が、要因としてはデカイんじゃないかと思えるんだけどね。
だから、「化石帯水層」の水を使うということは、陸の「砂漠化」を加速させて気温を上昇させ、海の「海面上昇」も招く、最悪の悪循環のようにしか思えないんだ。
どうしても、アメリカ人が作った「不都合な真実」という映画は、「バイオエタノール」ビジネスのために、本当の「不都合な真実」を隠そうとする映画にしか見えないんだよね。
もし、本当に本気で地球環境のことを考えているなら、ハイパワーで、しかも無尽蔵、無公害の、燃えても水になるだけの水素エネルギーに一気に向かうはずだからね。
とにかく、「生命の源」である水がなくなるということは、人間の生活に便利な石油が枯渇するとか、エネルギーが不足するとか、そういう以前の一番の問題だと思うよ。
はたして、人間が使い果たしてしまっていいものかどうか。
日本は地表の水を利用してるから関係ないと思うかもしれないけど、世界最大の食糧輸入国として「化石帯水層」の水で作った農作物を大量に輸入してるわけだから、「砂漠化」の責任の一端は日本にもあるんだよ。
だから、日本に生まれた日本人として、何か自分に「日本人の知恵」を生かせる方法はないものかと考えてみたんだ。
それで思いついたのが、「バイオエタノール」が、どうせ止められない世界の流れなら、日本の「田んぼ」のように、地表の水のサイクルをうまく利用するシステムからできる作物から「バイオエタノール」を作るようにすればいいんじゃないだろうか?
世界中が「田んぼ」でできる作物から「バイオエタノール」を作るようになれば、余分な地下水を使わなくて済むし、雨が降るようにもなるし、なにより気温の上昇も押さえられるから「地球温暖化」も緩和されるようになるんじゃないだろうか?
と、いうこと。
そうだ、「田んぼ」を世界に広めよう!
しばらく日本にいる間に、「田んぼ」が広がる日本の光景を見てそんなことを思いついたよ。
神も仏もオカルトもまったく信じてない不信心な私だけど、「虫の知らせ」だけはあるんじゃないかと感じているから、空家だった生まれ故郷の、下水道工事中の実家の建物チェックをしてくれなんていう、くだらない理由で日本に呼び寄せられたのは、何かの「虫の知らせ」なんじゃないかと感じて、その「虫の知らせ」が何なのかはっきりするまで、しばらく日本にいようと思ったんだ。
奇しくもオフクロの七回忌の年だったしね。
その「虫の知らせ」が、『「田んぼ」を世界に広めよう!』のような気がしてるんだ。
オーストラリアの「砂漠化」をヒシヒシと肌で感じて、このままいけば食料自給率40%の日本は大変なことになるぞ、と思いながら日本に帰ってきた私にしてみれば、日本にいる日本人のあまりの危機感のなさが不思議でならなかったんだけど、よくよく考えてみれば、日本は水も豊富だし里山の緑も豊富だから、水がなくて農作物が育たないなんて言ってもピンと来ないんだよね。
それで、何で日本は水が豊富なのか、大陸の国と日本との違いをあれこれ考えてみたら、人間活動によって気候が変わるということが、ここのところ騒がれてる「地球温暖化」でもわかるように、逆に日本では、古来、脈々と「田んぼ」を続けてきたことによって、豊富な水に恵まれる気候に変わったんじゃないだろうかという結論に至ったんだ。
だから、「田んぼ」を世界に広めよう!
持続可能な水の循環システムをうまく利用した「田んぼ」を、ただの水の無駄遣いだとしか理解できない欧米人たちの意識を変えるのはムズカシイことかもしれないけど、今、「田んぼ」を世界に広めないと、近い将来とんでもないことになるような気がするんだよね。
先ずは、オーストラリアから「田んぼ」を広めようと思うんだ。
そんなの無理だと思うでしょう?
でも、やってみるよ。
いくらかでも感謝されるような「ご先祖様」になりたいからね。
成せば成る、成さねば成らぬ何事も、成らぬは人の成さぬなりけり。
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