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玻璃の天  北村 薫

玻璃の天

 著:北村 薫(文藝春秋・2007年4月)

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   人間のごく当たり前の思いを、素直に語れる世の中であってほしい。だが、そのことが
  愛する人たちを苦しめる世だとしたら、どうすればいいのか。
   令嬢と女性運転手。昭和初期を舞台にした北村ワールド第2弾
                                 ―帯より―
    

【幻の橋】
  内堀銀行の令嬢・百合江さんから、内堀家で行われるお話の会に招かれる。そこには
 犬猿の仲である内堀ランプの子息・東一郎氏も招かれていた。会場には両家の和解の印として
 贈られた浮世絵が飾られていたが、それがいつの間にか無くなっていて後から、
 盗まれたと聞かされた英子だったが…。
 
【想夫恋】
  公家から華族になられたお家柄の清浦綾乃さんと、同じ本を読んでいた事から仲良くなった。
  二人は本に出ていた話をまねて、学校の裏庭にこっそりと植樹式をする。その数日後、
 綾乃さんのお母様が自宅まで英子を訪ねてきた。

【玻璃の天】
  資生堂パーラーで評判のコロッケを食べながら、兄・雅吉から長く続く不況の話や偶然、
 同日来店していた財閥の大番頭・末黒野についての話を聞く。
  数日後、英子はデパートで末黒野と同席していた男性の不審な行動に首を傾げてしまう。

 ベッキ―さんシリーズ2作目です。

 今回は英子が自身の意見をしっかりと持ち、かなり大人っぽくなったと思いました。
 そして、内堀家のバルコニーで出あった陸軍少尉の若月が印象に残りました。軍人としての
立場を言葉で表現しながら、英子の言葉も聞き受け止める。英子が兄のようなものを感じたと
思うのもわかる、印象深い人でした。また、登場しそうな気がしていたのに出てこなかった、残念。
 同じように、末黒野邸で英子に自身の芸術論を語る乾原の言葉もとてもとても印象に残りました。

 想夫恋では、出てきた暗号を見たとたんに引いてしまって、ややこしや〜の世界へ入ってしまった。
 しかし当時は特に身分差って大変な問題だったでしょうね。でも二人はきっと幸せになれたはず。
 そう願いたいです。

 この時代はそろそろ戦争の気配が強くなっている頃。当時の日本の各界の若き指導者達の間では、
政治・経済の話も戦争の話も当たり前に語られていたのかもしれない。止める方向に語ってくれても
いたでしょうか?

 思想を聴衆に講演する段倉なる思想家が登場してきます。彼はあちこちで講演し、政治・経済界でも
影響力があったように描かれています。ですが、その内容や言動ときたら…私は呆れかえりました。
 作中では《当時の流行り》という意味合いで書かれてはいたけれど、実際にそういう人達が
その時代にはいて、その迷論を信じ込み行動した人間もいたという事。。。。

 さて、ベッキ―さんの過去も出て来ちゃって(来ちゃってなの?ですけど)二人の信頼関係も
強くなったと思いました。ミステリーとしては軽いけれど上品で、やはりそこはいい気分。
 これも次の3作目までだと思うと、淋しいですね。


【玻璃の天】より印象的一文として
  「戦う相手を、同じ人間と思えなくするのが戦争です。わたくしは、軍人です。軍人になるしか
 なかったのです。しかし、戦争のそういうところを最も憎みます。わたくしの部下の一人一人も、
 戦のための道具ではありません。生きた人間です。そして戦場で向き合う相手も、命を持つ
 人間なのです。そう思うことが銃を向け合う時の、わたくしにとっての、礼なのです。」

 理想に燃える若き軍人・陸軍少尉若月の言葉です。
 これを読んだとたんに現実に引き戻されました。

 戦争関連の本を読む度に、似たような言葉をよ〜く見つけます。そしてそれを読むと
必ず言いようのない複雑な気持ちになる。他の本ではこの様な言葉の先は、皮肉なことに
とても哀しい。作中人物とはいえ、好感の持てた若月少尉の行く末が気になりました。
 歌人・与謝野晶子の話題が出たせいもあるかもしれません。

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与謝野晶子の「君死に給うことなかれ」が、弟にはどれだけ迷惑だったろう、という一文はすごくショックでした。確かにそうでしょう。国のために命を捨てようという若者達の中でどれほど肩身の狭い想いをしたかと思うと、弟への愛というだけでは済まされない気もします。
言いたいことが言える世の中は当たり前のようで、実は先人達がすごく努力して手に入れたものだと実感しました。
TBさせてくださいね♪

2010/5/18(火) 午後 1:33 fuwachibiprin

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段々と戦争の足音が聞こえてきましたね
「鷺と雪」ではもっと暗い時代にはいっていくのでしょうか・・・
次作を楽しみにしながらも ちょっと不安です

若月少尉は絶対「鷺と雪」に登場する!!と信じているにゃ〜ごです
・・・登場しなかったらさみしいなぁ(ノ_・。)

毎度すいませんが TBよろしくお願いします(;^_^A

2010/5/18(火) 午後 7:52 にゃ〜ご

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統一されていく思想体制を非難して、発表された歌だと思っていたので、そういう解釈が出たのには本当に驚きでした。
本から離れて考えたのは、明治・大正の頃に発表され、当時相当非難された物が昭和でもその解釈はあまり変わっていなかったという事にもショック、昭和の歴史ってやっぱり何だろうと思ったり。
戦争が絡んでくるとどうも熱くなってしまう、反省です…;;

TBありがとうございます!^^

2010/5/19(水) 午後 1:55 たけのこ

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にゃ〜ごさん
そうなのよ〜段々と迫っているような気がしてこの先どう絡んでくるのか、不安もありますねぇ。でも読みたい気持ちが先ですよ^^

若月少尉、登場しそうですよね^^
あのままでは、消化不良になってしまうよぉ…。

TB大歓迎です!ご遠慮なく〜こちらこそ、いつもありがとうございます。

2010/5/19(水) 午後 2:02 たけのこ

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今回いは昭和初期の恋の事情や、思想の流行りやらが色濃く出てきましたね。
最後のシリーズを先に読んじゃったので若月少尉の再登場は知っていましたが、逆に、なるほどこんな出会いだったのかとニンマリ。
「鷺と雪」でいよいよ戦争へと向かってしまうのでこのシリーズはもう続かないのかしら。ちょっと寂しいですね。

2010/8/7(土) 午前 10:10 coico

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coicoさん
思想家にはげっそりでしたが、若月少尉と英子の出会い方って素敵ですよね〜とても心に残りましたが、この時点では若月少尉の先行きに不安があったんですよね(;;)

3作目の「鷺と雪」で完結だそうです。私も、もう少し続けて欲しいと思いました、あのままじゃ寂しいですね;;;

TBありがとうございます^^

2010/8/7(土) 午後 1:03 たけのこ

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