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高すぎる企業の成長期待 (日経金融新聞2006/10/03(水))
日銀の企業短期経済観測調査(短観)で大企業製造業の業況判断指数が事前の市場予想を上回ったことや、円安・ドル高の進展を株式市場は好感。2日の日経平均株価は4日続伸した。上昇気流に乗ったようにも見えるが、企業の将来の収益力を視野に入れると、強気では押し通しにくい実態が見えてくる。
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東証一部上場企業の税引き利益は、今後20年にわたって4−8%伸び続ける必要がある――。日本経済新聞社の企業情報データサービス(NEEDs fcBRAIN)にある「理論株価分析」を使うと、現在の株価水準からこんな結果を導き出せる。
理論株価分析の考え方はこうだ。企業が将来生み出す純利益を、企業価値評価で一般的なディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法の手法で現在価値に割り引くというもの。具体的には、現在の純資産に今後稼ぐ利益を加え、20年後に株主へ分配すると想定。1株当たりの「価値」を計算する。配当も別途現在価値に引き直し、加える。
それによると、投資家の期待利回りである割引率を3%と低めに見積もった場合でも、東証一部全体では純利益が4.01%ずつ伸びないと、今の株価は説明できない。割引率を株式市場で一般的とされる5%と見なせば、8.35%もの成長を投資家は要求していることになる。割引率はDCF法で使う資本コスト(加重平均資本コスト=WACC)に近いので、実際はもっと高いかもしれない。
トヨタ自動車を例に取る。配当性向が一定で割引率が4%の時、2日の終値である6490円という株価は、2007年3月期の予想連結純利益である1兆3千百億円を基準に、毎年3.7%ずつ伸びてはじめてはじめて正当化される。言い換えれば、現在の株価は3.7%の成長を織り込んでいるわけだ。
もちろん、トヨタならこの程度の成長は可能かもしれない。だが、東証一部企業がすべて、トヨタ以上の成長を20年にわたって続けなければならないとしたらどうだろう。日本航空を含む空運は例外としても、不動産や造船が高成長を続けられるのか。このモデルを開発したクォンツ・リサーチの西村公佑副社長は、「現在の株価水準は割高。純粋なDCF法で計算すると、株価がマイナスになる企業も少なくない」という。
ゴールドマン・サックス証券の元東京支店長で経済評論家の佐藤努氏はいう。「二十一世紀に成長株は存在しない。一時的に伸びる会社はあるが、せいぜい続いて5年だ」。彼は現在の株価水準自体を割高と考えているわけではないが、PER(株価収益率)で50倍や100倍の銘柄が存在することに首をかしげる。
最近の株価が、四半期決算の義務化もあって目先の材料で振れやすくなっているのは確か。ドイツ証券の松岡幹裕チーフヱコノミストは「株価の景気に対する先行性は弱くなっている。かつては六カ月程度先行したが、今はゼロに近い」と打ち明ける。
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ただ、株式と債券の両方を運用する立場に立つと、別の見方も成り立つ。東京海上アセットマネジメント投信の鈴木琢也ファンドマネージャーは、自身が運用するバランス型投信の「東京海上ワールドインワン」について、「株と債券を比較すると株の方が割安。日本市場のモメンタム(勢い)や円安も考慮して日本株をオーバーウエートにしている」という。比較感で「買い」というわけだ。
とはいえ、企業を計る尺度はキャッシュフロi(現金収支)やバランスシート(貸借対照表)の質が中心になり、DCF法への関心も高まっている。M&A(企業の合併・買収)のさらなる増加で、企業の「値段」を厳密に算定する時代が到来した時、果たして今の株価は通用するのだろうか。(磯道真)
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