海外メディアからみた北海道洞爺湖サミット

海外メディアのニュースを独自の目線で紹介&解説します

「パンドラの箱」を開けた?

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 今回のサミットの前後を通じ、外国に比べて日本ではあまり論じられなかった問題が一つある。「G8」でよいのか、というメンバー構成の問題だ。日本はアメリカとともに拡大反対に回っているので、そうした議論は起きにくかったのだろう。

 その一方で今回のサミットは、日本政府の招きで世界中の新興国の首脳がやって来て、史上最大の規模になった。そうした顔ぶれと、食糧・燃料・金融などが温暖化とともに議題にのぼったというタイミングがあいまって、さまざまな問題が実は互いにつながっているんだという認識が、メディアを通じて世界的に広まった。それが、「G8」で問題を解決できるのか、という一種の「パンドラの箱」を開けることになった。私見では、このことが今回のサミットの最大の「成果」に思える。

 G8拡大の急先鋒に立つのはフランス政府だ。少なくとも中国とインドを含め、アラブやアフリカ、ラテンアメリカの国も入れるべきだと主張している。イギリスやドイツの政府は、G8だけでは不十分だと同意しつつも、「公式」の拡大には消極的だ。イタリアで開かれる来年のサミットはどうなるかというと、米AP通信によれば、アフリカおよび新興5カ国を交えた会合に、まる一日があてられることになるようだ。「8+5」の枠組みを、すでに「G13」と呼んでいるメディアもある。

http://ap.google.com/article/ALeqM5hpc1OBhbhl8XLmEx_jCLNSxKt9LQD91Q9HVG0

 ちなみにアメリカ次期大統領の一方の有力候補マケインは、「リーダー的な市場民主諸国のクラブ」を唱え、ブラジルとインドの追加、ロシアの除外を主張している。当然ロシアは反発している。ノーヴォスチ・ロシア通信社によれば、「客観的に見て経済大国で外交大国であること」がG8の意義だ、というのがメドヴェージェフ大統領のコメントだ。

http://en.rian.ru/world/20080703/112857583.html

 欧州メディアの論調は、公式か非公式かはさておき、なんらかの拡大を支持する点では一致しているように見える。なかでも、アイリッシュ・タイムズが「国際的なガバナンス(統治)」、独シュピーゲルが「グローバル・ガバナンス」という似たような言葉をあげているのが印象的だ。

http://www.irishtimes.com/newspaper/opinion/2008/0710/1215537701545.html
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,564277,00.html

 一連の拡大論が口にする問題意識は二つある。さまざまにつながり合った世界の課題を「G8」で解決できるのか、という実践的なものと、「G8」というのは旧時代の遺物ではないのか、という理念的なものと。二つはコインの表裏でもある。拡大論それ自体には、新たなパワーゲーム(勢力争い)のおもむきもあることは指摘しておきたい。とはいえ、その背景にある問題意識自体は、日本としても共有すべきものだろう。

(斎藤かぐみ)

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写真提供:社団法人 洞爺湖温泉観光協会

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温暖化問題、それぞれの立場

 3日間の日程を完了し、洞爺湖サミットは幕を閉じた。3日目には、「長期目標はやっぱりあった方がいいけれど、先進国がきっちり約束しないのなら、こちらとしても数字は何も約束できない」という新興国の立場が示された。

 米ニューヨーク・タイムズの社説は、良く言えばバランスがとれていて、悪く言えば歯切れが悪い。米政権が参加したこと、新興国が長期目標にいちおう同意したこと、この2点を評価する。でも2点とも、とりあえずのあいまいな約束のレベルでしかないと言う。そして、ブッシュの次の政権はさらに一歩を踏み出せ、と結ぶ。温暖化対策について、これまでブッシュ政権が「抵抗勢力」になっていて、どちらかが次期大統領になるオバマ(民主党)とマケイン(共和党)が2人とも積極的、という節目をアメリカは迎えている。という背景を踏まえれば、この社説のスタンスも納得がいく。

http://www.nytimes.com/2008/07/10/opinion/10thu1.html?_r=1&hp&oref=slogin

 新興国の側はどういう受け止め方をしているのだろうか。タイムズ・オヴ・インディアの社説は、先進国の責任を強調したうえで、インドとしては中国とともにエコ技術に取り組むべきだと言う。ただ、そのためには先進国からの資金援助と技術移転が欠かせないと訴える。この立場は、ここまでストレートには言わないにしても、中国も共有しているものだ。

http://timesofindia.indiatimes.com/Opinion/Editorial/TODAYS_EDITORIAL_Lets_Start_Afresh/articleshow/3224783.cms

 タイのバンコク・ポストは、エコ技術をビジネス・チャンスととらえる見方を鮮明に打ち出している。世界が温暖化対策に取り組むためにはものすごい資金が必要になるが、ものすごい額の軍事費に比べれば、富と雇用を生み出す正しいお金の使い方だと言う(タイは何度も軍事クーデタの起きた国で、軍の存在感が強い)。アジアはいまやエコ技術に向かって走り出しているのかと思わせる社説だ。

http://www.bangkokpost.com/130708_Perspective/13Jul2008_pers005.php

 韓国の東亜日報の社説は、日本をベタぼめした点で異彩を放っている。「温室効果ガス削減に関連する技術力を誇示し、気候産業の世界的トップランナーのイメージを定着させた」と。ただし、これは日本政府をたたえる以上に、韓国政府も後に続けと叱咤することに主眼がある。同紙が支持する李明博大統領が、牛肉輸入問題で世論のすさまじい反発をかい、動揺している現状を変えたい狙いがあることを、かなり率直に記しているからだ。

http://japan.donga.com/srv/service.php3?biid=2008071145728&path_dir=20080711

(斎藤かぐみ)

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前進か、後退か?

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 サミット2日目、G8の首脳会談が終わった。注目の温暖化対策に関しては、2050年までの排出量半減目標という「ビジョンをUNFCCCのすべての締約国と共有し、かつ、この目標をUNFCCCの下での交渉において、これら諸国と共に検討し、採択することを求める」という宣言が出された。UNFCCCというのは、京都議定書のおおもとにある国連条約のことだ。さて、世界はこのサミットのアウトプットをどう見ているのだろうか。

 焦点の国、アメリカのニューヨーク・タイムズは、2050年までの削減を「真剣に検討する」という去年のサミットでの言い回しに比べ、大きな前進だとする米日の見方を紹介しつつも、批判派の意見のほうを詳しく伝えた。ポイントは2点。半減って言ってもいつが起点なのかをハッキリさせていないこと、もっと手前の、たとえば2020年とかの目標を掲げなかったことだ。

http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-summit9-2008jul09,0,2141040.story

 産油国カタールに拠点のあるアル・ジャジーラも、ちょっと意外ながら同じ見方を示している。アメリカの科学者団体「憂慮する科学者同盟」のオールデン・マイヤー、NASA(米航空宇宙局)のジェームズ・ハンセン、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)議長のラジェンドラ・パチャウリという3人のキーマンによる批判を伝えた。

http://english.aljazeera.net/news/asia-pacific/2008/07/200878182052790556.html

 米欧日の三極の中でいちばん積極的なヨーロッパはイギリスのBBC、ここはめちゃくちゃ厳しい。ホスト国の日本の立ち回りを分析して、二つの妥協を勝ち取ったという。一つは、産業分野別の削減可能量をボトムアップで積み上げていく「セクター別方式」を宣言文書に入れ込んだこと。もう一つは、半減の基準にする年をハッキリさせなかったこと。G8は話をクリアにするどころか混乱させてしまった、最後に決着をつける場はUNFCCCの会合だ、と、言ってみれば達観した結論にいたっている。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/7494891.stm

 最後は、ちょっとマイナーな国だけど、ベルギーのル・ソワールから。アメリカがともかくも国連の(UNFCCCの)協議の場に戻ることを受け入れた点を評価する。その一方で、微妙に脅しみたいなことも書いている。EUでは、今年中に共通の政策が決まることになる。そうすれば、国際交渉にあたって強い立場に立てる、と。

http://www.lesoir.be/actualite/monde/au-g8-partie-de-poker-2008-07-08-614595.shtml

 京都議定書の時のように、EUが「牽引役」になることを期待するにしろ、警戒するにしろ、G8サミットは一つのステップにすぎない。世界が温暖化対策に向け、進むべき道のりはまだまだ続く。

(斎藤かぐみ)

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アフリカという視点

サミット初日は、アフリカ諸国首脳との会談がもたれたが、世界のメディアやNGO関係者の悪い予感があたってしまい、支援金額がはっきり宣言されることはなかった(前に書いたように、3年前のサミットでは、数字ベースの約束が打ち出されている)。

英オブザーヴァーは6日の社説で、次のように書いた。国内経済の減速に青くなっているG8諸国のリーダーは、有権者の関心のうすい開発援助の予算を減らす可能性が高いだろう。でも、今回のサミットの開催費用2億8500万ポンドがあれば、マラリア対策のための蚊帳(かや)が1億張りも買えるんだけどね、と。

http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/jul/06/g8.internationalaidanddevelopment

仏インターナショナル・ヘラルド・トリビューンでは、アフリカをはじめとする貧困国を苦しめている飢えの問題は、人災だ、と言い切っている。とりわけひどい過ちは、富裕国が国内農業に出している補助金だという。補助金によるバイオ燃料の推進でもって、とうもろこしや(それをエサとする)家畜の価格を押し上げている一方で、(安い穀物を輸出することで)貧困国の農業をジリ貧にしているからだ。

http://www.iht.com/articles/2008/07/06/opinion/edg8.php

当のアフリカの見方はどうか。特派員の費用をそう簡単には出せないのだろうけど、独自の記事をうまく見つけられなかった(アフリカのジャーナリストを何人か招待していれば、日本の株はグッと上がっていたかもしれないのに残念だ)。

ので、英ロイター電にもとづく南アのソウェタンの記事を紹介する。食糧の高騰、貧困の悪化、緊急の、また長期的な、支援の必要性など、国連の潘(パン)事務総長と世界銀行のゼーリック総裁の言葉がメインになっている。なかでもフクザツな気持ちにさせられるのは、高値で売れるはずの作物を植え付けたくても、アフリカ南部の農民たちには、これまた価格のはね上がった肥料を買うお金がない、という指摘だ。

http://www.sowetan.co.za/News/Article.aspx?id=797651

アフリカ発のサミット報道を探していたら、G8サミットの会期に合わせて、西アフリカのマリで「貧民サミット」が開かれていることを知った。仏AFP通信が現地から伝えている。「G8のみなさん、(3年前の)約束を守って」「口先の効果、ただそれだけだった」などが会場の声だ。そうした批判が渦巻くなかで、「金持ち国に期待しちゃいけない。開発は自分たちの手で進めるべき。まずは国内の汚職をやっつけることからだ」、そんなふうに語る若者もいたという。

http://afp.google.com/article/ALeqM5j54gvTqzP2Sw9PKSuTitQSNm3PHw

(斎藤かぐみ)

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サミットこぼれ話2

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 外国人記者は北海道だけで1000人ぐらい行っているようだから、こぼれ話的なニュースもばんばん発信されている。たとえば英ロイター通信は、VIPの交通手段に注目した。トヨタ、三菱、スバル、マツダ、ホンダなど、日本の自動車トップメーカー7社が、エコカーを提供した。使われた技術は電気、ハイブリッド、燃料電池。ただ安全のために、走行距離は20キロにとどまったらしい。

http://uk.reuters.com/article/burningIssues/idUKT32832720080706?sp=true

 東京のプレスセンターはエコな技術が満載で、洞爺湖サミットは日本企業の技術力のショーケースともなっている、と書くのは仏ラ・クロワだ。ただ、サミットの本題である「京都議定書の後どうするか」の道筋のほうは、アメリカや中国などとの妥協で狭まっている、とも。

http://www.la-croix.com/article/index.jsp?docId=2342905&rubId=1094

 初日のディナーのメニューを詳しく伝えたのが、ノーヴォスチ・ロシア通信社。イクラのクレープ包み、スモークトラウトとウニのタルト、海藻(昆布?)をきかせた牛ヒレ肉、ゴボウのウナギ巻き、等々、ひたすらグルメな書き方だ。若き新大統領メドヴェージェフが丁重にもてなされたことが誇らしい、という趣旨か。

http://fr.rian.ru/world/20080707/113408076.html

 逆に、英デイリー・テレグラフは、この日の議題が「食糧危機」だっただけに、矛盾もはなはだしいと眉をひそめる。槍玉にあげられているのは自国のブラウン首相だ。間の悪いことに、日本に向かう飛行機の中で、国民に対して飽食を控えるようにと呼びかけたばかり。しかも、イギリスには首相専用機がないため、今回テキサスからチャーターした飛行機が、お迎え先のイギリスまでは乗客ゼロだったことも批判された。
 
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/asia/japan/2262534/G8-summit-Gordon-Brown-has-eight-course-dinner-before-food-crisis-talks.html

(斎藤かぐみ)

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