UNEPS国連緊急平和部隊の創設

ジェノサイドに即応する個人参加の「国連緊急平和部隊」創設提案

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■ はじめに ■

従来、UNEPS国連緊急平和部隊(仮称)の創設には、国連安全保障理事会の全常任理事国による国連憲章改正決議の採択と各国議会レベルでの新憲章の批准(いわゆる「国連改革プロセス」)が必要と考えられてきた。しかし、このきわめて実現困難なプロセスをバイパスできる可能性が出てきた。国連憲章第11条に定められた、国連総会による国際の平和及び安全の維持に関する勧告権限を活用する方法によってである。

UNEPS召集・始動の権限は、『保護する責任』の「正当な権限」原則により、以下の3つの手段に限って認められていると考えられている。(出典:UNEPSに関するFAQ

(1)国連憲章により慣習国際法上の平和と安全の維持に関する執行権を託された安保理
(2)国連総会による「1950年の平和と為の結集決議」による承認
(3)地域国際機関による加盟国への介入

これらは、国連の緊急展開能力(ERDC)としての派遣のためであり、UNEPS創設後の緊急時の派遣権限を想定して定めたものに過ぎない。そもそもUNEPSはどのように創設されるのか、これまでその道筋が具体的に示されたことはなかった。

これまでは、国連憲章による授権があることが前提の「正当な権限」原則に遡れば、憲章上にUNEPSに関連する規定が存在する必要があり、憲章改正が必要となる──つまり、UNEPS創設には憲章改正のプロセスである国連改革プロセスを経ることが不可欠だとごく論理的に考えられてきた。しかし、現行憲章における国連総会と安保理にそれぞれ与えられた基本的権能を深く考察すると、実は必ずしもこのプロセスを経ないでも安保理の執行権によりUNEPSの創設を加盟国に要請することができる可能性がわかってきた。ただし、落とし穴がないわけではないし、この課題をクリアしなければ、この案は実効性を持ち得ない。

■ 憲章第11条に基づく総会勧告決議による安保理の召集 ■

憲章第11条は総会に、「国際の平和及び安全の維持についての協力に関する一般原則」を安保理に勧告する権能を与えている。

第11条〔平和と安全の維持〕
1 総会は、国際の平和及び安全の維持についての協力に関する一般原則を、軍備縮少及び軍備規制を律する原則も含めて、審議し、並びにこの様な原則について加盟国若しくは安全保障理事会又はこの両者に対して勧告をすることができる。

この「一般原則」を『保護する責任』6原則に置き換えてみれば、総会は安保理に対し、『保護する責任』原則の適用を勧告し具体的な対応を求めることができることになる。安保理はこの勧告を受けて召集され、事態への対応を決議する。このとき、安保理の判断を有効に左右する補完文書のようなものがあれば、安保理はより具体的な対応策を検討することが可能となる。この「補完文書」となりえるのが、国連事務総長直下に設置されるハイレベル・パネルが作成する報告書である。

アナン前事務総長の指示のもと、2000年に同様の報告書が作成されており、この文書は現在も進行中の国連改革プロセスの指針となる最重要文書となっている。2002年に発表され、国連の平和維持活動について緊急展開能力(ERDC)の整備が必要であると訴えたいわゆる『ブラヒミ報告』がその文書である。(出典:外務省「国連の平和活動の進捗と新たな課題(概要)」(平成19年8月))

2.平和維持能力の強化
 平和維持活動を成功させるためには、要員(軍及び文民)を集め、迅速にその要員を展開させる能力が必要である。ブラヒミ報告では、安保理決議採択 後30日(複雑なPKOの場合は90日)以内に要員を展開することが適当であり、このために各国は待機制度の枠内で相互に協力を行うべきであるとされた。

『保護する責任』原則を「国際の平和及び安全の維持についての協力に関する一般原則」に適用する件については、すでに2005年9月の段階で国連首脳会合の成果文書として認められているため、これを更に国際社会の普遍的原則とするための決議を国連総会で採択することで、次のステップであるUNEPS創設の勧告決議を採択することが可能になると考えられる。また『保護する責任』の原則化については、国連人権宣言同様に『保護する責任』宣言という形をとることもできる。

こうして採択された新原則に基づいた新たなERDC(緊急展開能力)として、安保理に対し国連緊急平和部隊(仮称)の創設を勧告すればよいのである。このとき、ブラヒミ報告同様の権威ある報告書が事務総長直下のハイレベル・パネルから出されていれば、安保理はこれを入念に検討して結論を出さざるを得なくなる。したがって、このハイレベル・パネルの権威付けと質が、その後の展開を左右することになる。このハイレベル・パネルの設置方法については、本案ではとくに言及しないこととする。

■ 課題:憲章7章下の拘束力の確保 ■

国連総会による勧告決議が安保理まで通ったとして、問題はこの勧告を受けて安保理で行なわれる決議の内容である。安保理が加盟国に対して完全な拘束力を持って要請できるのは、7章下の措置、すなわち「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」と憲章に規定されている。そして同章では、第43条でその行動を担保する特別協定の締結も義務付けられている。この特別協定は、国連史上いまだかつて結ばれたことはない。

第43条〔特別協定〕
1 国際の平和及び安全の維持に貢献するため、すべての国際連合加盟国は、安全保障理事会の要請に基き且つ一つ又は二つ以上の特別協定に従って、国際の平和及び安全の維持に必要な兵力、援助及び便益を安全保障理事会に利用させることを約束する。この便益には、通過の権利が含まれる。
2 前記の協定は、兵力の数及び種類、その出動準備程度及び一般的配置並びに提供されるべき便益及び援助の性質を規定する。
3 前記の協定は、安全保障理事会の発議によって、なるべくすみやかに交渉する。この協定は、安全保障理事会と加盟国群との間に締結され、且つ、署名国によって各自の憲法上の手続に従って批准されなければならない。

この協定を結ぶ前段となるのが、安保理によるいわゆる「脅威認定」である。安保理は第39条に基づき、「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在」を決定する権能を持つ。そしてこの権能に基づき決定された措置は、加盟国に対して拘束力を持つ。

第39条〔安全保障理事会の一般的権能〕
安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第41条及び第42条に従っていかなる措置をとるかを決定する。

総会で決議された勧告を、実効性のあるものとして国連の事実上の立法機関である安保理がこれを施行および執行するには、勧告の内容を受けた措置を安保理が7章下の行動として決定することを当該決議で明記しなければならない。ここで問題となるのが、どのようにして国連緊急平和部隊という常設の国連部隊の設置を7章下の行動に位置付けるかである。そのためには、ある特定の事態が、少なくとも「平和に対する脅威」として認定されるに足る状況である必要がある。つまり紛争あるいは人道的危機などの状況が、特定の国で発生していなければならないことになる。だが、平時常設する部隊のための決議が、特定の事態をきっかけに採択されるのでは、その特定の事態の発生を待たなければいけなくなるし、またその決議の内容が特定の事態のみならず他の事態にも適用できる汎用性を持つ必要がある。しかしそれでは後に、決議の内容の正当性が疑問視されてしまう。

権威と拘束力のある7章下の措置として、常設の緊急平和部隊を創設するためにはどのような条件が必要か、これが本案において現在未解決の課題である。

だが、あくまで私案としてであるが、総会決議の内容如何ではこれも可能になりうる。

■ 打開策:国連総会による「脅威認定」の委任 ■

総会決議の段階で世界の窮状(紛争やテロの頻発、貧困や経済格差がもたらす人道的危機など)について憂慮を示し、その解決策として緊急平和部隊の創設を提案し、安保理に勧告するのである。安保理にとって、特定の事態ではなく単純に“現状”を「平和に対する脅威」と認定するのはきわめて難しい作業となるだろう。しかし安保理の権能は「国際の平和及び安全を維持し又は回復する」ことにあるため、総会の意思として現状を「国際平和及び安全の脅威」と認め対策を求めるのであれば、安保理はこの要請に応じざるを得なくなる。つまり、総会の総意として採択された「平和に対する脅威」と考えられる事態=“現状”ついて、安保理は「脅威である」と認めるか認めないかの選択の必要に迫られるわけである。これは画期的な試みなのではないかと思われるが、実際にこのようなことが可能なのかは現時点ではわからない。相当に入念な調査によって過去数十年の統計が集められ、これが国連の平和維持活動の総決算として精査されるような状況になれば、あるいは可能なことではないのかと考える。要となるのは、総会の現状認識であり、これをどう方向付けるかについて、市民社会や専門機関、シンクタンクなどの英知の総動員が必要となるだろう。

以上



文責:参議院議員犬塚直史事務所・外交政策担当 勝見貴弘

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