モンテヴェルディ『聖母マリアの夕べの祈り』(ユングヘーネル盤)
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今晩は、ドイツ・ハルモニア・ムンディ(DHM)50周年記念ボックスから31&32枚目の モンテヴェルディ『聖母マリアの夕べの祈り』を聴いています。 『聖母マリアの夕べの祈り』は、モンテヴェルディがマンドヴァ公ヴィンチェンツィオ1世に仕えていた1610年 (43歳)にヴェネツィアで出版された作品で、ローマ教皇パウルス5世に献呈されました。 この作品を教皇に献呈したのは、息子のために教皇庁神学校の奨学金を得るためであったと 言われますが、その目論見は果たせなかったそうです。 三年後にモンテヴェルディはヴェネツィアにあるサン・マルコ大聖堂の楽長に就任しますが、 この作品には、そこでジョヴァンニ=ガブリエーリ(1557-1662)らにより確立された「複合唱(分割合唱)」、 即ち合唱隊を左右二つに分割する形式を採用し、音響のステレオ効果を狙ったところがありますが、 バッハもこの形式を彼のモテットや『マタイ受難曲』で採用していることはよく知られていることでしょう。 バロック音楽の最高傑作の一つに数えられる本作は、いかにもイタリア的な明るい陽光を感じさせ、 あまり宗教音楽に聞こえないとこがあります。しかし、後半の古風な「めでたし海の星」や「マニフィカト」を 聴いていると、瞑想的で静謐な深い祈りの世界に入り込むところもあるのではないかと思います。 本盤の演奏はコンラート=ユングヘーネル(リュート&ディレクター)ひきいるカントゥス・ケルン およびコンチェルト・パラティーノらで、「うた」はOVPP(各声部一人)を採用しており、当たり前のことながら、 名盤として知られる二種の録音、即ちコルボ旧盤、ガーディナー新盤に比べるとずいぶんスリムな印象を 受けますが、音作りにひ弱さを感じるかと言えば、そんなことはなく、小編成ながらも力強くきびきびとした 堅実な演奏を聴かせてくれます。しかも、うたも器楽もそろって驚くほど巧すぎ! ただ、宗教的感動を味わうにはコルボ旧盤やガーディナー盤のほうが良いかもしれません。 両盤のように、合唱(成人、とくに児童)を用いたいほうが荘厳に聞こえ、天にも昇るような ある種の官能を得ることができるのではないかな、って気がします。 なお、OVPPによるバッハの教会音楽の演奏で「祈り」を感得できないという感想をLFJ2009のとき 目にしましたが、それは編成上の問題も大きく絡んでいることと思います。 技術の面から言えば、一分の隙もない完璧な演奏に聞こえます。 特にコルボ旧盤では金管の音が外れまくっていますが、 本盤ではそのような心配は全然ない(ガーディナー盤でもそうですね)。 同じくDHM50の5枚目に収められた彼らのバッハ・モテット集よりはこちらのほうがハマっている気がします。 残念なのは、二種類ある「マニフィカト」(6声部と通奏低音のためのもの、および7声部と6声の器楽合奏 によるもの)のうち、7声部と6声の器楽合奏によるものしか録音されていないことです。6声部と通奏低音 のためのものほうが、より古風で「神」の時代である中世的な趣が強いと思うので。 ともあれ、DHM50のなかでは間違いなく秀逸な作品でしょう。 HMVレヴューはコチラ。 『Monteverdi:Vespro della beata vergine』(DHM 88697 281822 / 31-32 1994年録音)
各トラックの邦題はココとコルボ旧盤日本語解説に拠る。 なお、以下に見える「合唱」はOVPPを採る本盤では「重唱」に等しい。 Disc1 01.イントナツィオ:「神よ、わが保護に-主よ、われを助けに」〜6声の合唱と8声の器楽合奏による〜 02.詩篇109「主は、わが主に言いたまいぬ」〜6声の合唱と8声の器楽合奏による〜 03.コンチェルト:「われは黒けれど」〜独唱用モテット〜 04.詩篇112「しもべらよ、主を讃えよ」〜8声の合唱、即ち複合唱形式による〜 05.コンチェルト:「わが愛する者よ、汝は美し」〜二重唱による〜 06.詩篇121「われは喜びに満ちたり」〜6声の合唱による〜 07.コンチェルト:「二人のセラフィムが」〜二重唱・三重唱による〜 08.詩篇126「主が家を建てたまわずば」〜10声、即ち5声ずつの複合唱形式による〜 09.コンチェルト:「天よ、わが言葉を聴きたまえ」〜6声〜 10.詩篇147「イエルサレムよ、主を讃えよ」〜7声、即ち定旋律をうたうテノールと各3声の複合唱による〜 Disc2 01.「聖なるマリアよ、われらのために祈りたまえ」による8声のソナタ 〜8声、即ち「8声のソナタ」のうえでうたわれる声部〜 02.8声のイムヌス「めでたし、海の星」〜独唱・合唱・複合唱による讃歌〜 03.マニフィカト〜7声部と、6声の器楽合奏による〜 わが魂、主をあがめ 04.マニフィカト〜7声部と、6声の器楽合奏による〜 わが精神、喜びおどる 05.マニフィカト〜7声部と、6声の器楽合奏による〜 賎しき者をそのはしためと 06.マニフィカト〜7声部と、6声の器楽合奏による〜 全能なる者 07.マニフィカト〜7声部と、6声の器楽合奏による〜 その御あわれみ 08.マニフィカト〜7声部と、6声の器楽合奏による〜 主、そのみ腕の力 09.マニフィカト〜7声部と、6声の器楽合奏による〜 権力者をその座より 10.マニフィカト〜7声部と、6声の器楽合奏による〜 飢えたる者には 11.マニフィカト〜7声部と、6声の器楽合奏による〜 主、御あわれみ忘れたまわず 12.マニフィカト〜7声部と、6声の器楽合奏による〜 アブラハムとその子孫につき 13マニフィカト〜7声部と、6声の器楽合奏による〜 願わくば父と子と 14.マニフィカト〜7声部と、6声の器楽合奏による〜 初めにありしごとく カントゥス・ケルン(Cantus Cölln) コンチェルト・パラティーノ(Concerto Paratino) コンラート・ユングヘーネル(Konrad Junghäenel, Artistic direction & Lute) |

