中国伝来の古文化「闘蟋」は、コオロギを盆のような小さな闘技場で戦わせて楽しむ秋の小さな行事。
本来は、ツヅレサセコオロギの雄を終齢幼虫から単独で飼育し、成虫になる秋までにりっぱな戦士に仕上げてから試合に臨む。
強さは体の大きさではなく、いわゆる闘争心で決まると言っても過言ではない。
試合前にその闘争心を高めさせるために、人はいろいろな事を孤独な雄コオロギに施す。
土俵の仕切りが上がる前に軽く息を吹きかけたり極細の毛先で触覚や尻を器用にこすって怒らせるのが一般的だが、極めつけは、試合前夜から直前まで雌コオロギと同居・交尾させるという方法だ。
これは意外に効果的で、最下位だった雄が上位にまでランクを上げるほど大どんでん返しがおこったりする。
さて、同じコオロギでも種類が違えば闘い方も違う。
フェザー級のツヅレサセコオロギは、主に噛み付き攻撃を繰り返しながら、間合いを取ったりフェイントを仕掛けたりと、巧みな試合運びを見せてくれる。
軽いフットワークで攻撃をかわしたり、逆に狙い済ましたカウンターで相手が完全に参るまで粘り強い闘いを何度も繰り返す。
ライト級のミツカドコオロギは扁平な顔面を互いに重ねて押し合うのがメイン。
踏ん張った後ろ足の逞しさと、ピンと伸びたヒゲにみなぎる緊張感がたまらない。
ボルテージが最高潮に達すると「リッ」と羽を度々小刻みに震わせながら隙を見て大顎のジャブを繰り出す。
気が競って早々に勝どきをあげたりすると、相手もいきり立ち、突き上げたりひっくり返したりと、派手な演出も見ものだ。
ヘビー級のエンマコオロギはスマートな体裁きはあまり見られないものの、カッと開いた大顎で相手を牽制しながら、噛み付きと頭突きを織り交ぜて迫力のある試合にしてくれる。
噛み付いたままお互いに引きずり合う際に聞こえる、顎と顎の軋む音は、彼らのパワーそのものであり、観戦する人の手に思わず汗を握らせる。
黒い小さな虫の「闘い」は、それぞれのルールに則って繰り広げられるれっきとしたスポーツの世界ではないか。
無論そこには彼らが生き残るための厳しくも美しい掟があって、一方でその掟をひっくり返すチャンスがあることをも教えてくれる。
次回(来年)はオカメコオロギとクマコオロギの「闘い」も見せてもらおうかと考えている。
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