共生
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頂いたアナグマの交通事故死体を剥製にした。
まだ若いメスで、津久井湖そばの道路で頭を強く打って死んだらしい。 後頭部を中心に顎まで骨がくだけ、肩甲骨にもひびが入っていたから、ほぼ即死だっただろう。 皮膚に付くダニ類は少なく栄養状態も良し、梅雨の時期とはいえ毛もそこそこ豊富で損傷なかった。
解剖すると肺が赤黒く変色している以外は目立った臓器異常はないし、本当に突然起こった不幸でアナグマ自身も自覚のないまま昇天したに違いない。 ただ、一つだけ気になったのは胃のそばにあった大きな白い腫瘤2個・・・。
切って中を見たら、中心部に何やら細長い繊維状の塊がいくつも見受けられた。 後で調べてみたら、野生のアナグマの膵管に寄生する線虫(tetragomphius melis)らしいことが分かった。 寄生されても特にアナグマに負担はかからないらしく、いたって平和に共生しているとのこと。 しかし結構大きな腫瘤だ。 そこそこ重量もあるしなんとなく邪魔な感じがするが、臓器と一緒に腹の中にあるからアナグマは気にならないのだろうか。 今でこそ先進国の人間は無菌で清潔な生活空間を当たり前と感じて生活しているが、考えてみれば昔は結構人間とうまいこと共生する寄生虫がいっぱいいたのだ。
多少のかゆみは伴うがケジラミやヒトダニ、消化管のなかにもカイチュウやサナダムシ、などなど・・・ 確かに大きな疾患の原因となる寄生虫も多いが、多くはそれほど厄介者とならないぎりぎりのところで共生していたはずだ。 なぜなら、寄生する側も宿主をあまり弱らせてしまうと自分の首をしめることになるからである。 寄生虫をあまり気にせず過ごしてもらい、より長く宿主に平和的に寄り添うことが出来れば、これほど楽な寄生生活はない。 もちろん、体質・体力的に寄生されることに耐えられなかった宿主が弱ってしまう場合も時々起こりうる。 そんな時は、寄生虫も多くは共倒れ、さもなくば、そうなる前に何らかの手段で次の宿主を探そうと必死になるだろう。 アナグマの膵管にぎりぎりの大きさの腫瘤を作ってその中で生きる寄生虫たちの存在は、長い時間をかけてアナグマとうまく共生してきた証でもある。 寄生虫とうまく共生できてこそ、この地球環境と共に進化してきた意味が問われるような気がしてならない。 |

