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2012年2月18日

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米中新時代における日本・ASEANと華人経済圏

中国の次期トップ、つまり胡錦濤国家主席の後継者に事実上内定している習近平国家副主席が、米国を訪問中です。

オバマ大統領はもちろんのこと、31歳の頃に河北省正定県のいち書記として訪米した際にホームステイしたアイオワの民家も訪れ、旧交を温めたそうです。当時は、同民家に2泊した際に、子供部屋に泊まったとか。

各メディアは、「G2時代」「米中新時代」を意識した取り上げ方が中心で、特に米国側がまだ実際には国家元首に正式にはなっていない習副主席を特別扱い的に歓迎し、大統領が85分、バイデン副大統領が2時間も会談に費やしたことに特に注目しています。

このような「次期トップの歓待」は、実は初めてではなく、現トップの胡錦濤が現在の習氏と同じ国家副主席だった2002年に「次期トップ」として訪米し、当時のブッシュ大統領が今回同様に対応しています。

しかし、2002年当時と今回の大きな違いはなんと言っても、G7だった当時から現在はG2とまで言われるほど、米国が冷戦後の圧倒的な唯一超大国であったところに中国の近年の急激な経済成長とその将来への持続的な成長確度から、世界はもはやこの米中2カ国の意思決定によって右にも左にも行く、と揶揄されるのが2012年の現在であります。

一昨年(2010年)の段階で、中国は名目GDPベースで日本を既に抜いているのはご承知のとおりですが、国際通貨基金(IMF)やゴールドマンサックスの経済見通しによれば、2026年頃には米国をも抜いて世界最大の経済大国になる、と予想されています。

この予想をどこまで信用するかは、読み手次第なのですが、慶応大学総合政策学部の神保准教授が2機関の経済見通しに各種修正値を重ねた見通しにおいては、2030年には中国の名目GDPが34.6兆ドル、そして米国のそれが28.4兆ドルと、決して小さくない、むしろ大きな経済規模の差が2国間でついているであろうとさえ予測されています。

実際の将来がどうなるかは神のみぞ知り得る訳ですが、こういう将来予測などに基づけば今回の習副主席訪米が「G2時代」の幕開けと評されても、決して大袈裟とはいえないことは間違いありません。

当研究所がここで注視したいのは、仮にこの将来予測が前提として議論された場合に、果たして東南アジアは、そして大国インドネシアはどのようなポジショニングを求められるのか、という視点です。

ちなみに、日本がどういう位置づけになるかももちろん神のみぞ知るですが、少なくとも地政学的には米中の狭間にあることは不変でありますことから、いかに米中の今後のセンシティブな関係の中でどのように重要な役割を演じられるのか、というのが論点であることも間違いないと思われます。

では、東南アジア。

2月14日付日本経済新聞朝刊国際面に掲載された、ASEAN事務局のスリン事務局長のコメントは思慮に富んでおり、現在の米中関係と東南アジアの立場を非常に慎重にとらえているものでした。

ASEANは10カ国で構成されていますが、米中の前では所詮「小国連合」であることをスリン事務局長は的確に自覚されており、その一面は上記記事でのコメント −

「(域内の貿易自由化の主導権を米国が握れば)ASEANの統合が脇道にそれる恐れがある」

「ASEANは、地域が覇権競争の舞台となることは望まない。我々は信頼感の醸成を何よりも重視する・特定の国が支配力を強めれば、不安定化につながる。域内の秩序は多国間主義の枠組みで守るべきだ」

− といった部分に色濃く現れていました。

スリン氏の生の声を聞く機会に恵まれたことが何度かありますが、世界的にも稀有な高い外交能力と優れた人格を持つ、ASEAN事務局長としては最適の人物であることは間違いありません。

しかし、そのスリン氏も「恐れて」いる、TPP(環太平洋経済連携協定)に代表される米国のアジア再進出戦略と、日本を抜いてアジアの唯一超大国となろうとしている中国の勃興の狭間で、東南アジアがどうポジションをとっていくのか、果たして10カ国は同じ方向を向いていけるのか、将来を考えるとリーダーとして悩みは尽きないようです。

東南アジアの生きる道は色々と選択肢があるでしょうが、「これまでASEANは日中の影響力の微妙な均衡の上で、経済連携の中心に座り続けることができた」(前出日経記事より)という事実から、G2時代においてどのように中国や日本と連携しつつ、米国とも折り合いをつけながら自らの繫栄を持続的に保ち続けるのか、最適解は限られつつあります。

そのひとつは、アジアの唯一大国となるであろう中国と独立的な距離を保つことを可能にするために、日本と効果的に連携を保つことでしょう。無論、日本も同じように両想いでなければなりません。

ASEAN10カ国の合計人口が約6億人、これに日本の1.2億人を足すと7億人超。小国連合とは言え、人口規模では結構なインパクトです。しかしながら、先の神保准教授試算によれば、2030年ころの名目GDPはASEAN(ただし5カ国:シンガポール+インドネシア+マレーシア+フィリピン+ベトナム)と日本を足しても、せいぜい18.5兆ドル程度にしかならず、前述した米中からは大きく見劣ります。

加えて、当研究所がもっとも重視しているASEAN各国にまたがる華人経済圏の存在により、中国はもしかすれば華人経済圏の主要財閥などを通じて「ASEAN日本連合」の形成を政治的に拒む恐れも十分あります。

逆説的には、華人経済圏をどう取り込むのかが、「ASEAN日本連合」の実現を大きく左右するキーファクターになるのでは、と考えます。

中国の共産党首脳は、周恩来政権時代から「覇権主義」を決して標榜しない、と言われています。それよりも、世界最大の人口を抱える大国をどうまとめていくか、すなわち外交よりも内政問題に優先度が高い、というのが中国をよく知る識者の理解です。

しかしながら、内政をまとめるために致し方なく資源外交に走ったり、ASEANに影響力を講じなければならない場面がある。そして、その場面が今後の20−30年でより増加するかもしれないと考えると、ASEAN事務局長の苦悩は理解できますし、日本は華人経済圏の取り込みにさえ真剣に向き合わなければならなくなるのではないでしょうか。

( tknaito 研究主幹 ) Copyright © tknaito 1999-2012

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