|
先日、日本の国立社会保障・人口問題研究所が、長期的な日本の人口動向予測として「将来推計人口」を公表しましたが、じっくり見てみると、本当に考えさせられる数字のオンパレードです。
2010年(実績)と、50年後の2060年(推計)を比較すると −
総人口: 1.28億人 vs 0.87億人(32%減)
65歳以上人口: 2948万人 vs 3464万人(総人口比23%→39.9%に増)
15歳未満人口: 1684万人 vs 791万人(総人口比13.1%→9.1%に減)
生産年齢人口: 8173万人 vs 4418万人(総人口比63.8%→50.9%に減)
− 上記の他にも、「生涯未婚率」が9.4%から20.1%に倍増する見込みなど、驚愕の数値ばかりです。
これだけ見ていると、改めて日本の少子高齢化社会の深刻さを考え、今次国会でも争点となっている社会保障と税の一体改革や年金問題などの国内問題に議論が進んでいくのは当然なのですが、当研究所の視点からは、国立社会保障・人口問題研究所だけでなく総務省統計局などが日本国内の推計と同時に国連が公表している世界の人口推計などを連関させて一覧可能にしている資料がとても興味深く、今後の世界情勢を占ううえで不可欠な資料になってきています。
たとえば、国連は2050年までに世界の人口推計を出していますが、これによると、世界の人口は現在の70億人から2050年には91億人へ急増。日本は少子化で激減していく一方で、世界は反比例して人口爆発の時代が続きます。
しかし、人口爆発が続くのは得てして発展途上国が中心であり、世界における途上国の比率は現在の82%から2050年には86%まで増加する、と予測されています。
これはどういうことか、というと、日本においては「今までは2人以上の生産年齢人が、1人の非生産年齢を支えてきた」という構図が2060年には「1人が1人を支える」ということが数値上予想されています。誰しも「逃げられない世の中」になるわけです。
そして世界においては、「より少なくなる高所得国/先進国が、より多くなる発展途上国を支えなければならない」と予想されているわけであり、これも日本にとっては決して無視できない厳しい予測です。
すなわち、今後少なくとも40〜50年先を見てみると、日本は、国内でも少子高齢化で労働人口が厳しい状況を突き付けられつつ、国際社会においても日本は先進国として発展途上国への貢献を益々求められ続ける、ということになると思われます。
この考え方、すなわち国内問題も国際問題も同時に考えるべき、という考え方には異論がある方もいらっしゃるかもしれませんが、それはこの場では深堀しません。
当研究所がもっと議論のタネにしたいと考えるのは、日本が仮にそのような厳しい将来を迎えるとした場合、並行的にアジアの周辺国はどのような状況に置かれるのか、その時中国は、インドは、そしてインドネシアは、という部分です。
特にインドネシア。
2010年時点でのインドネシアの人口は2.38億人で、世界の中では中国、インド、アメリカについで第4位の規模であることはご承知の通りです。実は、第2次世界大戦終了後間もなくの1950年時点では、インドネシアの人口は7700万人で当時の日本の人口(8400万人)よりも少なかったことは、あまり知られていません。その後の60年でいかにインドネシアの人口が爆発的に増加したのかが、単純によくわかります。
国連人口推計によると、2050年のインドネシア人口予想は2.93億人で、世界では第5位(上述3国にナイジェリアが4位に浮上する)とされています。生産年齢人口の総人口比率も2025年頃がピークで70%近くまで上昇し続け、その後の2050年までは降下(高齢化)に転じますがそれでも65%程度の高比率を維持する、と予想されています。
もちろん、過去の本欄で解説したとおり、また世間一般でも著作が出てきているように、アジアは一般に少子高齢化時代が今後到来し、日本はその先頭ランナーを突っ走っている、という構図に変わりはありません。インドだけは例外、というのも通説ですが。
その前提に立てば、2050年ないし2060年に「超」のつく少子高齢化時代が予想されてしまった日本は、「高齢化」時代に突入すれどまだまだ「2人以上が1人を支える時代」を謳歌する余裕のあるインドネシアに対し、どのような関係を構築していくことが今後の日本にとって国益に資するのか、人口想定はひとつの大きなキーワードであることは間違いありません。
それは、先行利益として培われるはずの高齢化対策産業の技術移転や輸出なのか、はたまた2国間のEPA(経済連携協定)で既に開始されている介護士や看護人材の受け入れなどの加速などによる相互依存の深化なのか、いろいろな方策が考えられます。
もちろん、「少子化」の部分が是正されれば、すなわちこれから子供を生む年代にある日本人が子育て環境への不安が改善され出生率が劇的に改善することがあれば、これらの方策検討も基礎条件がかなり変容してきます。
しかしながら、日本政府の一端である厚生労働省傘下の国立社会保障・人口問題研究所が「出生率も2014年以降は再び低下に転じる」と見通している以上は、政府としてあまり根本的な改善意欲さえ見えない、と自虐的になっているとさえ思えてしまいます。
悲観的なシナリオばかり考えるのはよくないことですが、当研究所が興味を持って研究していきたい点としては、日本の将来とアジアの将来、特にインドネシアの将来がwin-winで明るく結びついていく形はどこにあるのか、という探し物です。
非常に重い話で、2050年や2060年など遠い先の話にどうしても見えてしまうかもしれませんが、自分たちの子供や孫の代がどれほど大変か、という逞しい想像力で考えると、もっと真剣に考えることが出来るのかもしれません。非常に重要な問題だと思います。
( tknaito 研究主幹 ) Copyright © tknaito 1999-2012
|