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今日は12月25日、今更言う必要もありませんが、イエス・キリスト生誕日であり、いわゆるMerry Christmasの日でした。皆様、いかがお過ごしになられていましたか?
さて、日本は今上(きんじょう)天皇のお誕生日が12月23日であることからラッキーな3連休となり、政治も経済も国際情勢も、日本人の頭の中からはほとんど忘れ去られたかのような一週間でしたね。それはそれで、精神衛生上は悪くないことだと個人的には思います。
その「幸せウィーク」の週初めに、北朝鮮の金正日総書記が死去したあとの情勢にかかる報道も、この3連休中はほとんど新聞でもテレビでも触れられることなく、何かミサイル騒ぎでもない限りは日本人の思考回路に於いては「あー、そういえば。。。」という位置づけに既になりつつあります。
米国でもクリスマス・ホリデーが既に本格化しており、オバマ大統領が生まれ故郷のハワイで家族休暇に入っているなど、企業も役所もすっかりお休みモードです。
しかし、話を戻しますが、金正日の死去について、日本も米国も、そして東南アジア諸国も、遅くならないうちに情勢の分析と対策の熟度を上げていく必要があります。
それでは、今後の北朝鮮問題とアジア主要国との間において、金正日の死去はどのような影響を及ぼし得るのか、概観してみましょう。
まず、はじめに、既に各マスコミでも金太郎飴的に報道されている、中国と北朝鮮の関係について。
中国は北朝鮮との関係において、改革・開放路線を推進する中国にとって、外部要因としての周辺国や地域の平和と安定が必要とされることは当然であり、それは中国の「朝鮮半島政策」の主軸を成しています。
中国は、北朝鮮と韓国の両国、いわゆる「朝鮮半島」と良好な関係を維持し、朝鮮半島の両政権が国際社会との協調関係を維持して、その関係に対して中国が自らの影響力が最も優位にある状態を作り出し保っていく、というのが「朝鮮半島政策」の根幹です。
したがって、今回の金正日の死去によって中国共産党幹部が最も恐れているのが、いくつかの報道でも書かれている「金正日の死去によって軍部の統制が弱くなり、北朝鮮国内が一時的に二分して混乱する」というシナリオです。なぜなら、混乱は「平和と安定」の対岸にあるものであり、北朝鮮と1300kmもの隣接する境界をかかえる中国にとって、内紛は新たな脱北者が数万人、数十万人単位で中国に難民として流れ込む可能性が中国国内の「平和と安定」に小さくない影響を与えかねず、ようやくソフトランディングが見えてきたリーマンショック後の最近においても、北朝鮮からの「難民リスク」は常に中国国内の政治経済を脅かす要因なのです。
その意味からも、また同じ社会主義国家としても、そしてアジア地域全体をめぐる米国との覇権争いにおいても、中国は北朝鮮に対して日々刻々と緊張感とフレキシビリティーをもって「衛星国」化を進めていく必要性を引き続き維持するものを思われます。
中国の他に、北朝鮮と具体的な関係を直接的に持っているアジアの主要国と言えば、それはインドネシアが代表国と言えるでしょう。
インドネシアが日本から一時的に占領されていたのは、太平洋戦争によって日本軍が南進してきた結果のひとつでした。それが終戦によって解放されましたが、すぐに旧宗主国であるオランダとの従属関係がまた始まり、そこから真に独立しようとして成し得たのが、インドネシア建国の父であるスカルノ元大統領でした。
その流れを公式にも私的にも汲んでいるのが、スカルノの実娘であり前大統領でもあるメガワティであり、今年の9月にも自らが代表を務めている闘争委民主党の幹部を引き連れて北朝鮮への(議員としての)公式訪問を行っています。ただし、その時は異例にも「金総書記の体調不良」を理由に総書記とメガワティの会談はキャンセルされました。時事通信によれば、予定された会談がこうした形で取り消しになるのは「異例なことだ」ということで、思えばその頃から相当悪化していたことが推し測れます。
インドネシアを北朝鮮は、スカルノが大統領だった1950年代に共産主義を標榜したことから接近したと考えられていますが、その後のカネと権力にまみれたスハルト政権から「民主化」を声高に掲げて実際に民主的な国への変容をリードしたメガワティが、今も共産主義国家の代表格である北朝鮮を重要視しているのはいささか「過去のVIP友人」としてのセンチメンタルな部分が多い気もします。
貿易の面でも、北朝鮮から見た「対インドネシア貿易」は完全な輸入超過であるらしく(数値は公表されていません)、インドネシアからは木材、紙、タバコなどが輸入されていますが、その貿易量はインドネシア・韓国の二国間貿易量(153億ドル、2009年)の比ではありません。したがって、経済面でのインドネシアと北朝鮮の結びつきは殆ど国際情勢的には影響はなく、やはりメガワティを中心としてセンチメントな歴史的関係が主であり、逆説的にはその「古き良き関係」は政治的に何かの時のカードとして残しておくべき、と誰しも考えているはずです。
そういう意味では、インドネシアは北朝鮮に対して強硬な態度をとるポジションにはいないでしょうし、今回の金正日死去でもそのポジションは変わらないと思われます。
換言すれば、もしも北朝鮮が「揺れて」、米国や日本が何か政治的な取引を必要とする場合には、小泉政権時に日本人拉致問題でジャカルタのインターコンチネンタルホテルが舞台に使用されたように、インドネシアはその「仲介役」としての存在感をまた発揮することが要請されることも十分有り得ます。それが、今後のインドネシアにとってプラスと考えられる場合、インドネシアはやはり「センチメントな歴史的関係」をカードの一枚として保有し続けるのでしょう。北朝鮮側は、それを逆手にとる場合もあるかもしれませんが。
もうひとつ、東南アジアの中で異色的に北朝鮮と経済関係を保っている国があります。タイです。北朝鮮の対外貿易相手国としては、中国、韓国、ブラジル(これも少し意外ですが)に続いて、タイは第4位に位置する「友好国」です。
少し古い数字ですが、いまから5年ほど前の時点、すなわち2006年の北朝鮮の対タイ貿易規模は4億ドルに上り、内訳的には「対タイ輸出」は1.7億ドル(2005年比27.7%増) 、「対タイ輸入」は2.3億ドル(同10.3%増)で、北の貿易収支は6千万ドルの赤字でした。
「対タイ輸出」 の主な品目は、金、銀など貴金属輸出が35百万ドルと、対タイ輸出では圧倒的な比重を占めていました(対タイ輸出総額の21.2%)。 金に続く輸出品としては、機械類29百万ドル、有機化学製品22百万ドル、魚介類21百万ドル、銅製品が1千万ドル、といった具合でした。
「対タイ輸入」 の主な品目は、電気機器輸入が39百万ドルと最も多く、全体のタイからの輸入額の17.2%を占めていました。 続いて、ゴム製品が39百万ドル、機械類26百万ドル、銅製品13百万ドル、石材製品13百万ドル。
一方、タイと北朝鮮の間では、近年では北朝鮮によるタイ人拉致の事件が明るみに出たことから、国交は続いていても日本と同様に拉致問題で微妙な関係になっているのが実態です。タイは現在、中国を除けば脱北者の最大の脱出先となっているのです。
【最近のタイ脱北者流入数】
2007年 約1,000名(タイ入管公表数)
2008年 約1,500名(NGO推計)
上記の数値がどれだけ大きいかと考える場合、一般に知られている脱北者の韓国への流入数との比較で、その絶対数がどれほど大きいか、分かると思います
【最近の韓国政府脱北者受入数(韓国統一省公表数)】
2007年 2,544名
2008年 2,709名
つまり、タイにとって北朝鮮は「拉致問題、脱北者流入問題を抱えつつも、貿易相手として数少ない東南アジアの中で頼られてしまっている厄介な存在」という位置づけになっているのが実態です。したがって、今回の金正日死去は、タイにとっては中国と同様に脱北者の増加が最も懸念される材料であり、そういう意味では今後の情勢をタイ政府も注意深く見ていることは間違いありませんが、国境が接しているわけではなく、また拉致問題や脱北者問題に対してタイ政府が積極的に対応をしているとも言い難い現状を見る限りでは、あくまで受け身なのかもしれません。
ちなみに、タイから北朝鮮へ輸出している物品の調達代金については、「踏み倒されている」といった話さえよく出てきますが、実態は定かではありません。
今までに、新聞や報道各紙で取り上げられている北朝鮮と韓国、中国、日本、米国などとの関係以外に、特にアジアで北朝鮮との今後の関係上ウォッチしておくべき主要国についてインドネシアとタイの現状を見てみましたが、結論的には両国とも現在のポジション、すなわちインドネシアは「経済的な結びつきは薄れつつも、歴史的なセンチメントな関係は外交カードとして引き続き保有」という立場、そしてタイは「受け身ではあるが、アジアの中で稀有な国交保有国であり、貿易相手国」という立場を保ちつつ、日本、中国、韓国、米国が今後の北朝鮮と対峙していく際に巻き込まれていくのは必至だと思われます。
その際にどのように振る舞うことができるかが、今後のアジアの中でのインドネシアやタイに対する国際世論の方向に影響を与えるとも考えられます。尊敬を集めるチャンス、とも言えるでしょう。
さて、もう来週は2012年ですね。
皆様、今年は大変お世話になりました。良いお年をお迎えください!
2012年も、引き続き宜しくお願い致します!
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