定年からだいぶ経って子供の頃住んでいたところに引っ越してきた主人公の白石聡は、近くのコンビニで小学校時代の友人の吉沢弘に偶然出会う。弘は小学校6年の時の同窓会を時々、駅前の居酒屋でやっているから来ないかと、聡を誘う。
その同窓会に聡が行ってみると弘の他に、明男、正輝、博夫、規子と懐かしい顔が揃っていた。弘は東大を卒業して政府系金融機関に勤めたかつてのエリート、明男は筋肉モリモリに鍛えている変わった男で、正輝は孫が大勢いる完全な爺さんとなっており、博夫は経営する会社をリタイアした悠々自適な金持ちで、規子は父親と夫を介護する苦労人となっていた。
そうした友人たちと話が盛り上がり、一人4万4千円以上を出資し、一番長生きをした者が総取りをするという「長生き競争」をしようということになる。しかし、その同窓会の翌日、明男が脳卒中で急死する。葬式からしばらく経つと、聡の家にめいめいが現金を持って現われ、なんと弘、正輝は440万円ずつ置いていった。博夫に至っては4400万円で、規子は4万4千円だった。聡も定期預金から440万円を引き出し、胴元として家の押入れのダンボールに入れておいた。
そんな頃、道端で男性にからまれていた女の子を助けたことをきっかけとして、その女の子エリが聡の家に居つくようになってしまう。エリは20歳を過ぎたばかりの若い女の子で、よく話を聞いてみると彼女は男性にふられたと思いこみ、別に知り合った男性に弄ばれて、不幸なことにエイズに感染してしまっていたのだった。
聡は、幸薄い生まれの彼女をいたわるように生活をともにするようになり、やがて、友人たちが一人ずつ病気となって亡くなっていく。正輝は食道癌、博夫は認知症を患ったうえの肺炎、弘は肝硬変だった。エリも途中から「長生き競争」に参加することにするが、ついに発症し、最後はやせ衰えて亡くなってしまう。
規子は父親が亡くなり、その際に意識を無くし入院してしまう。眠り姫のような状態が続いた規子に語りかけるように励まし続けた聡だったが、やがて自分も肺癌であることを知り、入院する。聡が入院した当日、規子は長い眠りから目を覚ます。聡は「長生き競争」から脱落することにし、眠り続ける規子に同情して、仲間の遺産ともいうべき大金を使って、規子の夫を民間の老人ホームに入所させてしまう。
聡にやがて死期が近づく。エリが聡に言った天国のイメージであるお花畑の風景を夢で見ながら、聡は逝く。老いや近づく死を迎えてから、「長生き競争」を試みた7人の人々は様々な思いを胸に亡くなっていった。死が彼らにとってどういうものだったかは彼ら自身にしかわからない。
年金ぐらしになると、人はどういう精神状態になるのだろうか。そして10年、20年と長生きをして80才を迎えた時、人はこれまでの人生を振り返り、どう思うのだろうか。悔いのない人生を送りたいという月並みな言葉は選びたくない。私には人生というものがまだわかっているとは全然言えないし、わかりたくもない。しかし、今の私に言えるのは、欲というものをなるべく捨てて、人のために何かをするという精神を持っていたいし、そういう精神状態を保てるようにしたいとただただ思うのである。
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