ベルアイル/サイドストーリー etc

ベルアイルの小説を少しずつかいてます。

ベルアイル サイドストーリー

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3人娘。が逝く --麒麟戦--

グリフォンと蜘蛛の群れの間にある、空白地帯。
決戦の場は、そこだった。
「行くよ」
イディスちゃんが、幽閉者達から奪った3つのパーツを抱えて、印として置かれた宝箱に接近する。
その瞬間、なんら前触れもなく麒麟が出現した。
それも2体!
「イディスちゃん、逃げてー」
その言葉が届いたのか、イディスちゃんが必死に逃げてくる。
しかし、麒麟2体にに追いつかれ、途中でめちゃくちゃに踏み潰される。
「イディス、あなたの死は無駄にしない。。。砲撃隊、衝撃波用意。目標、小型麒麟-ヴァルチャー」
クロノちゃんの言葉に応じて砲撃隊の戦士が強打撃の溜め状態に移行する。
「撃て!」
号令を発したのはは討伐隊のリーダーだった。
クロノちゃんの白く輝く衝撃波の円盤が、2体の麒麟の一方に撃ち込まれる。
つんざくような、麒麟の悲鳴。だがHPは1ドットも減っていない。
それでも麒麟は砲撃隊を敵とみなして向かってきた。
但し一匹だけ。
残りの大型の麒麟は、イディスちゃんを蹂躙した時点で役割を終えたと判断し、元の出現位置まで悠々と歩いて向かっていた。
「イディスちゃん、まってて、今蘇生する」
蘇生呪文を触媒紙に書き込み、イディスちゃんに駆け寄って、魔法を発動させる。
一発成功、幸先がいい。
肉塊となっていたイディスちゃんの体が修復され、とどまっていた魂が吸い込まれる。
「ありがとう〜」
治癒も待たずに、ヒーリングアンプルをがぶ飲みしながら、猛然とイディスちゃんが麒麟に向かって行った。
振り回した斧の一撃が麒麟のHPを削り取る。
が、その直後だった。
坑道のいたるところに生えているきのこが、突然超治療を麒麟に唱えた。
せっかくのダメージが、見る間に修復されていく。
「真言魔術部隊、きのこに対して魔術禁止区域」
そう言って、クロノちゃんが後衛の真言部隊と共に魔術禁止をきのこに飛ばし、超治療を封じる。
「ありがたい」
麒麟の真正面で槍を振り回していたリーダーがそう言った。
ダメージが徐々に蓄積されていく。
そのダメージに耐え切れなくなった、麒麟がすさまじい音で鳴き声を上げた。
「な、麻痺!」
イディスちゃんを始め、ほとんどの前衛が動きを止める。
抵抗したリーダーが、槍を少し下げ、後ろに下がった。
「引き離す、浄化の雨を──」
その言葉は途中で途切れた。
紫の閃光が麒麟の口からほとばしった。
ビームがリーダーの胸に吸い込まれ、爆発する。
その余波で、前衛と、蘇生に向かおうとした後衛蘇生部隊が吹き飛ばされた。
ほぼ、壊滅。残ったのはクロノちゃんを中心とした魔術禁止区域チームと、後方で待機していた私だけ。
「蘇生を。。。」
「マイナは保険、来てはだめ」
そう、私は保険。麒麟をこの世界につなぎとめる要石の役だった。
私まで死んだら、麒麟は消え去り、討伐は出来なくなってしまう。
「でも、前衛がいないと、後衛だけじゃもたない」
「ガーディアンがいるから」
そう言いながら、クロノちゃんが麒麟の前に立った。
残った魔法部隊が大慌てで蘇生を唱えて、前衛を起こそうとする。
それを、私は見ているしかなかった。
クロノちゃんを守るガーディアンが次々と殴り倒される。
時々ヒットする打撃を魂の肉体で受け止める。
受け止めきれずに、HPが減った。
クロノちゃんの全身が見る見るうちに傷だらけになっていく。
誰か、助けて!
祈りは、しかしどこにも届かなかった。
剣のような形の角が、クロノちゃんの体に振り下ろされた。
その身を守っていたガーディアンは、皆打ち倒されていた。
糸の切れた人形のように、クロノちゃんの体が倒れる。
そして、それでも惨劇は終わっていなかった。
クロノちゃんを倒したキリンが、後方へと振り返る。
蘇生を繰り返し失敗する魔術師に向かって、麒麟が走った。
そして麻痺の鳴き声。
身動き一つ出来ない真言部隊が、一人ずつ、念入りに踏み潰されていく。
全滅するまで、30秒もかからなかった。
そして、最後の一人、私の方に麒麟が顔を向けた。ものすごい勢いで襲ってくる。
いやあぁあ!
悲鳴を上げて、逃げ出した私に、キリンが追いついた。
背中を、角の一撃が横切った。
とっさにつかった魂の肉体で身を守る。
限界を超えた一撃に、MPがマイナスを表示した。
バグ!?
一撃に耐えたのはいい、でも、これじゃあ、蘇生が唱えられない。
どうしよう。。。
逡巡したのは一瞬だった。
その一瞬で、私を守る猫型ガーディアンのHPが激減する。
誰か一人でも。。。希望をつながなきゃ
前衛と魔術部隊が折り重なったところを目指す。
お願い、ビームは打たないで!
祈りをこめ、死体に駆け寄り、私は、持っていたルーンカードを握り締めた!
ガーディアンが私を中心に魔法放つ。
魔法円の煌きの中、私は見た。
麒麟の角が私に向かって振り下ろされるのを。。。。。

すさまじい打撃音。
現実の画面上にエラーメッセージが浮かんでいた。
ベルアイルで、時々発生するクライアントエラー。
なんでこんなタイミングで。
マウスを動かし、エラーメッセージを消す。
固まっていたクライアントが一度消え。元の、ごちゃごちゃしたデスクトップ画面を表示する。
そして、私は再びベルアイルを起動しようとした。
一瞬だけためらう。
全滅の2文字が脳裏をよぎる。
全滅なら全滅で、遺品を回収しに行かないといけない。
私は一度唇をかみ、そして、ベルアイルをクリックした。

「マイナちゃん、よくやった!」
まるで、復帰するのを見計らったように、その声が聞こえた。
イディスちゃんが、前衛たちが復活していた。
現世の扉、間に合ったんだ。。。
MPもHPも一桁。スタミナを見れば500の数字
一度は確かに死んでいたのだと、そのステータスが教えてくれる。
傍らに立っていたはずのガーディアンも、その活動をとめていた。
「じゃあ、下がって蘇生するね」
周りを見回し、まだ死んだままのクロノちゃんを見つけて、駆け寄った。
蘇生するためのMPを回復アイテムで回復させ、触媒紙にペンを走らせる。
「マイナ、むちゃしすぎ」
あう。。。
「でも、あれが正解。マイナ、よくがんばった」
なでなで、とクロノちゃんの幽霊が口で言う。
蘇生の発動。
そして治癒も唱えて、クロノちゃんを回復させる。
「じゃあ、マイナ、下がって見守ってて、がんばるから」
「うん」
クロノちゃんのところからさらに離れて、前衛の様子を見た。
麻痺だけではなく、氷雨の魔法を放って前衛たちを苦しめる。
その前衛に、治癒を打つことはできない。
生きた前衛に魔法を使うと、麒麟がビームを放つと斥候部隊が言っていたからだ。
力尽きて倒れる前衛を、蘇生部隊がすかさず蘇生する。
氷雨に巻き込まれて傷ついた蘇生部隊を、後方魔術部隊が治療する。
蘇った前衛が、ポーションで体を癒しつつ、激しい攻撃を再開する。
決死の、背水の、ぎりぎりのコンビネーションが、完全に決まっていた。
麒麟のHPが見る見るうちに減っていき。
そして、麒麟の、最後の鳴き声、
麻痺をかいくぐったリーダーの槍が、麒麟の体を貫き通した。
巨体が倒れ、消滅する。
「よっしゃあ!」
リーダーの声、周りのみんなも歓声を上げる。
魔術部隊の浄化の雨が、前衛の麻痺を拭い去る。
傷ついた体を回復し、強化魔法を次々と与える。
まだ、1体麒麟が残っていた。
でも、1体を倒した勢いで、そのままいけるような気がしていた。
「突撃!」
リーダーが声を上げて麒麟に向かった。
残った前衛がそれに続く。
「あ。まって、まだ強化しきって。。。」
防御特化のイディスちゃんが攻撃力を上げるのに手間取っていたのが幸いした。
接近してきた一団を、麒麟のビームがなぎ払う。
「まるでナウシカの巨神兵ね」
死屍累々の中、麒麟がまっすぐ、後方部隊に向かってかけてくる。
その麒麟を、イディスちゃんが真正面から食い止めた。
攻撃を受けると共にその体が爆炎に包まれる。
焼けただれた体を、ヒーリングポーションがすかさず再生する。
「今のうちに蘇生を」
言われる前から蘇生部隊が動いていた。
リーダー他、主要なメンバーから順に蘇生を行う。
「よーし、みんな取り囲め」
リーダーに従って、散開した前衛が、麒麟を逃げられないように封じ込める。
その直後、麒麟が炎を放った。
炎の結界がキリンの身を守るように円を描く。
「うおっ」
その熱気に、前衛がとっさに後ろに引いた瞬間、紫の閃光がほとばしった。
再びの惨劇──だが、今度は蘇生部隊は巻き込まれていない。
すかさず蘇生で体勢が立て直される。
「いける!」
誰かがそう口走った。
みんなそう感じた。
麒麟の巨体が跳ね回り、次々と攻撃目標を切り替える。
少しでも離れた前衛にはビームを放ち。
全員が次々と倒れては蘇り、再び麒麟を取り囲む。
ひやりとしたことは1度じゃなかった。
誰もが傷つき、誰もが倒れ、そして起き上がり、麒麟に対して闘志を燃やし、再び戦場にとびこんでいった。
そして、40分が過ぎようかというころ、
最後のイディスの斧攻撃が、麒麟の巨体を引き裂いた。
キリンの体が横になって消えていく。その全てを、私はしっかと見届けた。
ああ、これで、地上にいける。

そんな私達に、4層という苦難が待ち受けていることを、ドワーフが告げたのは、わずか4ヵ月後のことだった。


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開設日: 2007/1/1(月)


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