ある役者の話
|
アンドリュー・ロビンソンという俳優が居ます。この人↓
初めて見たのは、クリント・イーストウッドの大ヒット作=『ダーティ・ハリー』でした。
破天荒な刑事=ハリー・キャラハンと対決する、シリアル・キラー=スコーピオン役をやった俳優です。
![]() この時の悪役ぶりが、ホント、憎たらしくも、凄まじいサイコ野郎っぷりで、
眼に狂気を宿した感じが、「コイツ、地でもイカレたサイコ野郎なんじゃねぇの?」と思わせる、
文字通り、鬼気迫る演技でありました。
しかし、この作品の物語が、当時、未解決で、リアルタイムに現在進行形だった、
ニューヨークの連続殺人鬼=“サムの息子”をモチーフに描かれていて、
今、見ると、たわいも無い刑事物に見えますが、
当時は、かなり生々しく受け取られてたみたいで、
噂によると、犯人役のA・ロビンソン氏は、その熱演っぷりが逆に仇となって、
オファーされる役所は、み〜んな、サイコな殺人鬼役ばかりだったんですって。
で、一時、映画界から身を引いて、小さいテレビの仕事とかしてたんだそうです。
次に映画のスクリーンで彼を見たのは、すっかり中年になってから出演した、
スタローン主演の『コブラ』で、この時も、ガミガミとうるさい、官僚的な警察上司役だったっけな?。
あまり“良い人”ではありませんでした。
その後も、トンと映画で姿を見るコトが無かったんですが、
映画データ・サイトを見ると、ホラー系にチラホラ出てはいたみたいですね。
しかし、しかし、人気SFドラマ 『スタートレック』のスピンオフ・シリーズ、
『スタートレック・ディープ・スペース・ナイン』で、セミ・レギュラーとして、
長く役を務めていたコトを、最近知りました。
…しかも、素顔がほとんど解らない、異星人の特殊メイクをして!。これ↓
![]() 『スタートレック』シリーズは、世界中に熱狂的なファンが居る、伝説的人気シリーズで、
本国アメリカでも、自ら出演を希望する大物俳優も居て、
ウーピー・ゴールドバーグは、ノーギャラも同然の契約で、出演してたりもします。
(まだ無名だった、10代の頃のシャーリーズ・セロンが出演してたのは、前に書いた通り。)
件の『スタートレック・ディープ・スペース・ナイン』は、
シリーズとして7年間のロングランを記録してました。
物語は、遠い遠い別の銀河へ、一瞬でジャンプできる、ワームホールというトンネルの入り口にある、
ディープ・スペース・ナインという基地が舞台で、
様々な異星人が行き交う基地の中で、敵対する異星人同士の争いがあったり、
同じ星の住民同士でも、権力闘争が起きたり、
はたまた、遠くの銀河からの侵略者が襲って来たり…。
そんなドラマの中で、A・ロビンソン演じるエリム・ガラック (カーデシア星人)は、
母星の政権争いの混乱から、帰国を許されず、追放されてしまった元スパイという、
なかなかに複雑な人物で、普段は、慇懃な仕立て屋の主人なのですが、
いざコトが起こると、かつての凄腕スパイの本性が現れて、
時に味方、時には敵…という、峰藤子の異星人版みたいな活躍を見せるのでした。
このガラック、クソ丁寧にお世辞を言うかと思えば、
同じ口調で、しゃ〜しゃ〜と平気で嘘をつくし、
嘘がバレても、悪ぶりもせずに、平気な顔して、さらなる嘘を重ねる、
骨の髄まで、いけ好かないスパイ気質なのです。
「あいつは嘘つき!」と言うコトが知れ渡って居ても、
時々、誰も知らなかった極秘情報をサラッと暴露したりもするんで、
なんともつかみ所がないのに、
ロビンソンの演技力も相まって、
実に存在感のあるキーパーソンなんですよね〜。
しかし、人気番組のレギュラーを獲得したとは言え、↑あのメイクでは、
誰が誰なんだか解りゃしません。
どんなに演技を評価されても、そんな役では…ねぇ?。
でも、このシリーズを見ていると、A・ロビンソン氏は、
喜々として、実にのびのびと、顔の見えない役を、楽しそうに演じているのですよ。
時に見せる、あの狂気を宿した眼力が、
残忍なスパイだった過去を持つ役の迫力となって、
タダの仕立て屋の主人ではない、
油断のならない男然とした、雰囲気が出まくっているのです。
…高い才能ゆえに、悪い意味で有名になってしまった名優が、
顔を隠すことで、自分の才能を遺憾なく発揮できる場を得た…、
悲劇だったのか、幸運だったのか、何とも言えないんですけど、
なんか、こう、運命の妙を感じる俳優なのでした。 |

