昨年の正月登山で装備不良の為に撤退した権現づるねの再挑戦です。
単独 山行日 2012/01/17 〜 01/19
権現づるねは木曽駒ヶ岳へ至る登山ルートの一つです。
かのウォルター・ウエストンも辿ったという古くからの登山道ですが、
他の登山道と比べて行程が長かったり変化に乏しかったり・・・と、
廃れ、半ば見捨てられた様な状態でした。
近年になり登山道は再整備されたとの事ですが、無雪期のその道を私は登っておりません。
(この積雪期登山の偵察に、何度か途中までは登ってますが)
1月17日 無風快晴
伊那スキーリゾート、略して伊那リ、
このスキー場上部まで林道が走っておりそこに登山用駐車場も有る。
標高1000m、ここからすぐ登山道。 7時出発。
権現山は学校登山にも使用される里山で、ここまでなら入山者も多い。
年明け以来わりと暖かい日が続き、
この権現山までは殆ど雪の無い状態。
権現山は地元の信仰の山でもあり、僅かな雪の上にも無数の足跡が残っている。
しかしここから先へは、足跡が一切無かった。
ここから先が、いわゆるハイキングではなく登山者の道となる。
徐々に雪が増え道の積雪は30㎝〜50㎝、足の潜りは膝下。
板沢の頭からわかんを履くが、それでもこの程度の積雪ならまだまだ楽に歩ける。
昨年はこれよりずっと多い積雪の為、一日目にはこの板沢の頭にすら辿り着けなかった。
それを思えば今年は積雪量の少なさに助けられた。 かなり順調に歩を進められる。
12:30、標高点2096m。 五合目の看板が有り、見晴らしも開けてる。
ここまでは登山道もかなり整備されてるし楽だし、
権現山頂から五合目まではわりと森林も切り開かれてて見通しも良い。
無雪期ならば健脚自慢の方でなくとも日帰り可能なので、
この2096m五合目は里山ハイクの隠れた穴場かも。
権現山以降の入山者が極端に少ないのは実に惜しい。
2096mから森林の尾根道。
展望も開けず、あまり面白い行程ではなくなる。
積雪も深くなり、潜りは膝上。
積雪による足の潜り、これが膝下か膝上かで歩行の難度は大きく違ってくる。
勿論その雪質にもよるが、膝下であれば多少強引に雪を蹴飛ばす感じで、
ザッシュ・ザッシュ・・と、まあそれなりリズムを保った歩行が可能。
だがこれが膝上となると、グボッ・グボッ・・といった感じで、
いわゆる抜き足差し足忍び足みたいな歩行を余儀なくされる。
しかもこのグボッ・グボッ・・は淡雪の場合の事。
雪が一度軽く溶けたのち夜の冷え込みで再度凍って表層が少し固まった積雪の場合、
片足での体重はある程度支えられるのだが、
もう片足を踏み出そうと全体重を乗せた時に、
それを支えきれずズボボッ・・っとなる。
つまり、
グボッ・ボッ・ズボボッ・よいこらせっ・・グボッ・ボッ・ズボボッ・よいこらせっ・・・
って感じ。
なかなか進まない上に、脚の疲労も相当増す。
ま、これより最悪なのが胸まで潜る新雪の深雪の急傾斜でのラッセルですね。
ラッセルの名の通り、平泳ぎみたいに腕で雪をかきながら進まねばならなくなる時もある。
そんなラッセルではないだけ、まだまだマシですが。
実は私わかん派と云うわけでもないが、スノーシューを使った事が無い。
勿論これには理由があって、
私の冬山登山の第一は、登山道の無い山にも登るため。
積雪で面倒臭い笹や藪が隠れる中を歩く為なのだが、
しかし私の住む南信州は生憎豪雪地帯とは言い難く、
笹や藪が完全に隠れてはくれない。
おまけに灌木の密林や急傾斜を通過しなければならないとなれば、
スノーシューのような広い面積ではかえって煩う事の方が多いんじゃないか?と。
そんな日本の藪山でオールマイティに使えるのはやはり日本古来からのわかんじきなんです。
しかし、今回の様な、曲がりなりにも登山道が拓かれたコースなら、
曲がりなりにも刈込はされていて藪の無いルートは何処かしらに有る理屈であるから、
スノーシューの導入も検討すべきかもしれない。
なにしろ、
単独行の上に年齢もイッっちゃってるから、体力的にかなりキツくなってきてるんですよ。
これを読まれた中でスノーシュー派の方がおられましたら、
是非その使用感などお聞かせねがいたい。
笹や藪が隠れきってない中での行動や、密林通過、急傾斜の登攀が充分に可能か、
急傾斜の下降でも危険なく使用できるものなのか。
五合目から暫くは傾斜の緩い尾根が続くが、三角点2467.6mを前にして急に傾斜を増す。
15:40、今夜の泊地の目星を付け、そこにザックをデポ。
明日の行動の為に、空荷でその急斜面にトレースを付けてゆく。
思いザックを降ろしたことで、思いの外,体が軽い。
2467.6m三角点までトレースを付けることが出来た。 明日の行動が多少とも楽になる。
デポ荷まで戻りツェルトを張る。
真冬の信州の山岳とは思えないくらい気温が高くおまけに無風の為、
今日の日中はわりと暖かく過ごせたが、
さすがに陽が落ちれば冷え込みが厳しくなる。
しかしまあ、今日は疲れたな。
1月18日 無風快晴
昨日の疲れで寝過ごした。
ツェルト撤収し出発できたのは8:30、日の短い冬山登山でこれは遅すぎる。
すぐに急登が始まるが昨夕のうちにトレースを付けたので順調に登る。
そしてまた暫く緩傾斜の尾根が続く。
が、雪質は例のグボッ・ボッ・ズボボッ・よいこらせっ・・なので、
緩傾斜でもなかなか進まない。
本ブログ記事に添付のものでなく詳細な地図をご覧になればお判りであろうが、
2600mに向けて再度の急登が有る。
その急登の直下までしか今日は進めなかった。
ツエルト幕営。
1月19日 薄曇り⇒小雪
7:00。 ツエルトはそのまま、アタックザックの軽装で出発。
しょっぱなから急登。
さてこの箇所、無雪期の登山道の状態を知らないのだが、
恐らく、あまり幅広くは刈込されていない様子。
再整備されたと言えど永らく廃道扱いだったのだから、
ここまではまだ充分な整備がされていないのかも。
だから、無雪期では、灌木の枝の下をくぐるトンネル状の登山道となるのかも。
そのトンネル状に雪が積もるわけだから、
ルートテープも散見できるその正規の登山道はむしろ積雪期では、
四つん這いでなければ通過できない高さのトンネルとなってしまう。
これでは却って疲れるだけなので、
積雪期では歩きやすい箇所を選りすぐってのルート取りとなる。
しかしその場合、頂上までの刈込は保証されていないわけで、
順調に進めてたと思ったらその先に面倒臭い密林に出くわして、
再度・再再度の大回りを余儀なくされる場合もある。
しかしそうは言っても今は空荷に近い軽装備なので、
行動は早い。
出発から1時間弱で森林限界を抜け、見通しが開ける。
お〜、真横には千畳敷カールを抱いた駒ヶ岳・宝剣岳の雄姿がっ!
ウエストン卿もこの瞬間には感動しただろうなぁ。
森林限界を抜けたという事は、
常時寒風に晒されてて、積雪もウィンド・クラストの比率が高いという事。
そう、ここからは、今までの雪の潜りが嘘の様に、
サクッサクッっと歩ける確率が高くなるという事。
順調、順調。
這い松と砂岩の、いわゆるアルペン的地形。
これは何だろう?一種の計測器? 暫く休憩。
そしてこの権現づるね尾根の最高点とも呼べる、
駒ヶ岳主稜線と合流するそのピークに立つ。 8:45。
遠望は、左に乗鞍、右に穂高連峰。
直下に西駒山荘。 立ち寄ってみる。 いや勿論、冬季の閉鎖中で無人ですが。
しかし何だなぁ、権現づるねは勿論マイナーなルートなので入山者が皆無なのも当然と云えば当然なんですが、
この西駒山荘のある主稜線の小黒川コースは、木曽駒登山のメインルートの一つでもある。
その山荘付近には、ここ最近の入山者がいたというトレースの痕跡も見当たらないとは。
正月休みからかなり経ってはいるが、わりと天候の良い日が続いてたから、
正月登山周辺の痕跡くらい有っても良いと思うんだが。
やはりアレか? 山ガールとか登山ブームの再来とか言っても、
そこはそれ、人気山域のみ一極集中の、ブランド登山ブームでしかないのか?
それにこの木曽駒ヶ岳はロープウェイが掛かってますからね。
この山域の入山者もロープ利用が圧倒的に多いと聞く。
西駒山荘の裏手には将棊頭山が控えてる。 時間に余裕があるなら足を延ばしてもみたいが、生憎時間切れ。
本日中に下山したい。
仕事の関係もあるし、昨日までの好天から徐々に下り坂の気配。
さっきまで西に見えていた御嶽も、雪雲に隠れてしまった。
これは、雪雲との追いかけっこ下山となるな。
来し方を望む。 二日かけてシンドい思いで登ってきた道。
下る時はあっという間。
しかしまぁ、その来し山並みを振り返ると、
いつもながら、改めてその長大さに驚く。
『こんなものを、よく登ってきたな』と。
そして、『こんなものを、これから半日で下ろうっていうのか?』と。
9:30、ピークを後にする。
幕営地へ戻り少し休んだら片付け、ツェルト撤収、そこを11:30に経つ。
もう後は、ほぼノンストップで下山。
途中から粉雪も舞い始める。
暗くなる直前の17:11、駐車場へ戻れた。
伊那リ・スキー場、ナイタースキーの設備も有るが、
平日夜にはそんな客もおらず、
強烈なライトだけが虚しく無人のゲレンデを照らしている。
それにしてもここからの伊那市街の夜景を、初めて見た。
百万ドルには遠く及ばないだろうが、
やはり高い所から見下ろす夜景は綺麗なもんだ。
よく、登山は人生に例えられますが、ホントその通りかも。
愚直な一歩一歩の積み重ねでしか高みに上ることは出来ず、
そこから下るのもまた意外と早い。
そして、
クライマックスのハレである山頂に立ってるのはほんの一瞬、
後は膨大な、ケとも呼べる愚直な毎日。
それでもそのハレのクライマックスの楽しさが忘れられず、
また愚直な一歩を積み重ねる。
カネやコネを駆使出来る者やプライドのない者は
反則技的にロープウェイやヘリを使えるってところ、
これもまた実に人生的だ。