ローマ人の物語(XIV)キリスト教の勝利
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超ロングシリーズの書評も、いよいよラスト2冊。 書名:ローマ人の物語(XIV)キリスト教の勝利 著者:塩野七生 出版:新潮社 内容:388年、ローマ帝国はキリスト教を国教に指定し、ローマ伝統の神々を邪教として否定し た。それはキリスト教の完全勝利であり、古代から中世への移行を示す歴史的事件といえる。 ローマの進路を決定的に変えたのは皇帝ではなく、一人のミラノ司教であった。・・・巨大帝 国ローマの誕生と興隆、そして衰亡までを、ヨーロッパ文明外のそして現代の、独自の視点か ら描き出す、塩野ワールドの集大成。その第14巻。終局まで残すところ、あと1巻。 感想:ミラノ勅令以後、ますますキリスト教への改宗者は増えていく。安定した権威の支柱として 皇帝たちが利用しようとしたキリスト教は、逆に皇帝の権威を飲み込むことになる。その流れ に抗った、恐らくは最後の皇帝、それが「背教者」ユリアヌスである。形骸化しつつあった4 頭政治の末期に西方ローマの正帝へと擁立された彼は東ローマの中心たるコンスタンティノー プルへ入城し、ギリシャ・ローマ宗教復興・古き良きローマ復興への最後の努力を始める。 しかし、戦場にてユリアヌスが倒れるとともに、その努力は無に帰する。そして394年に東西 ローマの分裂が決定的となり、ローマという価値観を同じうする最後の世代の時代となってい く。ここまででローマ世界の価値観に魅了された読者としては、分かりきっているこの展開を ただただ頭を垂れて見守るのみ。 さて、本巻での一番のポイントは、384年におけるミラノ司教アンブロシウスと首都長官シ ンマクスとの間でなされた、ローマ元老院に鎮座した「勝利の女神像」撤去の是非にかかる文 書による論戦(実際には、シンマクスが皇帝に直訴した手紙の内容をアンブロシウスが論評す る、といった形だが)であろう。この論戦で女神像の撤去が決まったことを最後に、ローマ宗 教は最後の息の根を止められ、これがキリスト教の決定的勝利を象徴するイベントであるから だ。塩野氏はあえてこの論戦の全訳を紹介している。その内容は実に興味深い。 もちろんその内容は、宗教が個人の問題である現代人から見ればじつに滑稽である。こんなこ とのために、ローマ伝統のあまたの芸術が破壊されたのかと思うと、「なんと野蛮なことよ」 と思わずにはいられない。ところが、先の対立意見をよく読むと、また違った側面が見えてく る。それは、社会システムがどうあるべきかに関する対立と選択である。 本シリーズではローマ的世界観にとかく肩入れしがちであるためこのキリスト教の勝利は不幸
なできごとというニュアンスで描かれてはいるが、実はこの選択は「古代から中世へ」という 時代の流れの一側面にすぎないとも言えるのだ。 |
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2011/1/20(木) 午後 10:05 [ 本読みの記録 ]
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