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昨今の時勢を踏まえて、久々にこんな本を取り上げる。私はへそ曲がりなので、今こそ原発推進を!というわけで・・・
書名:原発安全革命
著者:古川和夫
出版:文春新書
内容:これまでの原発とは原理が全く違う、極めて安全な原発がある。しかも発電効率もずっと高い。違いは、「液体燃料を使う」「トリウムを燃やす」「小型化する」の3点だ。「原発は不安、でもエネルギーは必要」というのが今の現実。ならば、これで既存の原発に置換えようではないか。
福島の事故以来、原発を不安視する声は急速に高まっている。とはいえ、エネルギーが不可欠な現代社会で、簡単に原発を止めてしまうわけにはいかない。化石エネルギーをこれ以上利用して二酸化炭素排出を増やすのもまずいし、かといって今の技術では、太陽光や風力などの次世代エネルギーで原発の後を継ぐなど、論外である。しかし、そのジレンマは解決できる、と著者は言う。そもそも「これまでの原発は原理的に間違った技術に沿って開発してきた」のであり、福島やチェルノブイリで起きたような事故を「原理的に起こしようがない原発がある」というのだ・・・
感想:本書は、今回の東日本大震災とそれに伴う福島第一原子力発電所事故を受けて、2001年に刊行された本を急遽新版として発行したものである。本書の主な主張は次の3つ。
(1)原子力エネルギーを利用する手段として、これまでの原子力発電所システムは基本的に異なる「原理的により安全で、効率的な」技術が、既に30年以上前に提案され、研究も進んでいた。具体的には、「溶融塩に核反応燃料であるトリウムとウラン233(235でないのがミソ)を溶解させて、液相の状態で核反応を起こしてエネルギーを取り出す」という、「トリウム溶融塩炉」方式というのがそれである。
(2)これまでその安全な原発の技術開発は、主に冷戦下の核開発競争など、政治的な理由のもとに打ち捨てられてきた。
(3)従来型の原発の重大事故を起した今こそ、忘れ去られたこの技術に沿った原子力エネルギー利用技術を実用化し、次の世代のエネルギーである太陽光発電等が主力として実用になる数十年先までの経過期間におけるエネルギー政策の要としていくべきである。
今般のあまりに甚大かつ深刻な原子力発電所事故のおかげで、世界中に「嫌原子力」の風潮が蔓延している。残念なことに、理性的にこの事態を見据えて新たなエネルギーの形をみんなで考えようという人たちばかりではなく、ここぞとばかりに調子にのって「情緒的原発反対」を言いふらして原稿料を稼ぐ自称ジャーナリストが多くいることに、「人と技術が世界を救う」と信じている私としては危機感を感じずにはいられない。
止めてからどうするかについての十分な展望も持たないまま「危ないから全部止めてしまえ」というだけならサルでもできる。「怖いからリスクは考えないことにする」というのと同じ、愚かしい思考停止行動に過ぎない。原発をただ止めるのでもなく、徒に高いコストをかけて安全対策を上塗りするのでもない、第三の道はないのかと思っていた私にとって、このような手に届く技術が既に存在しているということは新鮮な驚きである。また希望を捨てず声を上げる技術者がいることを知り、自らの不勉強を改めて痛感している。やっぱり、「人と技術は世界を救える」のだ。
しかし、本書の内容はやはり結構専門的であり、私も十分に理解できたとは言えない。実のところ、なんだかんだ言ってもこれを商用原子炉として実用化するには、技術上の多くのハードルがあるのは間違いなさそうだ。固体燃料よりも液体燃料のほうが細かい制御がしやすく、安全性や効率性を高められるというのは分からないではないが、液体であるがゆえの困難だってあるはず(固体燃料ロケットと液体燃料ロケットの関係と一緒だ)。そのあたりの不安にどう答えられるのかについては、私の読解力では読みきれなかった。
そもそも、この技術による安全な核反応炉が実用化されるまでの期間だって、そんなに短いとは思えない。そのあたりの不確実性と、他の自然エネルギーの利用技術に「近いうちに驚異的な技術革新が起きるかもしれない」という不確実性を秤にかけたとき、世の中がどちらに軍配を上げるのか、と問いかける必要はあるだろう。どっちにも、相応のメリット・デメリットがあるのだから。
個人的には、世の中がどちらを選ぶにしろ、それが「残念な選択」にならないことを祈るばかりだ。
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