不正を働く存在
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松下電器がまだ50人くらいの町工場のときの話です。
従業員の中に不正を働く者がいました。
幸之助さんは自分で事業を始めてから初めての体験であったため、どうしようかとあれこれ思い、悩みました。
その者にどう処置をとったらよいか、工場をやめさせてしまうことも考えられるし、なんらかの罰を与えてすますこともできる。
当時は従業員をやめさせることは比較的簡単で、「君はもうこなくていいよ」と言えば、すむことです。
しかし、せっかく採用して一緒に仕事にとり組んでいる従業員を、不正をしたからといって、やめさせてしまうのは人情からも、経営者からとしても、あまり気がすすみませでした。
どちらがよいか、どうすればよいか、幸之助さんはいろいろ考えて夜も眠れませんでした。
しかし、考えているうちに幸之助さんの頭にフッと浮かんだものがありました。
それは、今、日本に罪人が何人いるのか、ということでした。
そうすると、法にはふれないが軽い罪を犯している人は、当時の日本では50人に1人の割合でいるのでは、と考えられました。
「天皇といえば絶対的な存在である。
その天皇の徳をもってしても、50人に1人いる。
それを減らすことは、なかなかむつかしい。
それでは天皇はどうしておられるかというと、じっと辛抱され、日本国内に罪人たちが住むことを許しておられる。
そうすると、一町工場のオヤジが、天皇以上のぜいたくを言うことは許されない。
だから、今のこの不正を働いた1人くらいなら、必要な罰を与えるにとどめて、やめさせず、辛抱しておいておくことにしよう。」
幸之助さんはそう決心がつくと、非常に気が楽になりました。
このことがあってから、幸之助さんは従業員を信頼し、非常に大胆に人を使えるようになりました。
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