なるほど、“怪演”とはこのことなのだと教えられた気がする。
内田朝陽――主役を完全に“食う”その抜群の存在感に魅せられてしまった。
思えば、つねに“脇役”で名を轟かせてきた俳優であった。
深キョンの相手役オーディションでグランプリを受賞し、デビュー。その後、プライベートでも深キョンとの熱愛をフライデーされ、公私ともの“深キョンのお相手”として注目された。
今年に入ってからはNHK朝の連続テレビ小説「どんど晴れ」でヒロインの婚約者役を務め、朝のお茶の間をにぎわせている。
主演映画も2本ある実力派だが、彼のキャリアはいつも主役の脇で築き上げられてきたといってもいい。
その俳優がついに牙をむき出しにした。
主演の中村俊介、ヒロインの北乃きいを向こうに回して、内田朝陽は映画を“自分のもの”にしてしまっている。“爽やか”な印象の強い俳優が、狂気的なヒールに扮し新境地で爆発した。
「ワイルドスピード」や「頭文字D」にも通じるカーアクションもの。
友を亡くしたことから走ることを止めた天才ドライバー・颯人(中村)が、ふらりとある街にやってきてヒロイン(北乃)を悪党(内田)から助ける。
カーショップのオーナーの御曹司で走り屋の悪党は、颯人を敵視し、昔の噂を聞きつけてバトルを強要。過去に囚われる颯人は首を立てに振らないのだが、ある伝説的な一台の車が彼の心のエンジンを再び稼働させる…といったベタベタなストーリーが本筋。
そこにヒロインとの心の交流や走り屋のもつ独特な哲学が加わり、独自の世界観は保持しているが、既視感は否めない。
肝心のレースシーンもCGに頼り切りで迫力に欠ける。
テクニックの差異が見出しにくく、ボタンを押すとターボのかかるテレビゲーム的設定も安易だと言わざるを得ない。
しかししかし、内田朝陽、なのである。
片目にブラックのふちどり、真っ黒なロングコートを羽織り、『時計仕掛けのオレンジ』のアレックスを彷彿とさせるキレキャラ。
このキャラクターイメージそのものが内田によるものだというのだから恐れ入る。
「僕のイメージしていたのは鮫のようなキャラ。注射針とか割れたガラスみたいな、恐怖感をもっていた。最初はジャイアンのようなキャラになっていて、僕の中では違うな、と思って台本もだいぶ変えてもらいました」
役にこだわりを見せ、自分のものへと回収していく。
埋もれがちな王道プロットのカーアクションものB級作品の中で、内田の存在感はどこまでも光る。
役者のパフォーマンスが決して作品全体の出来を左右するわけではない、といういい例というか悪い例というか、なんとも変わった作品であった。
(07年 62作目▲)
|