徒然散文記

経営戦略・M&Aから民族、クルマ、蕎麦までいろんなテーマで感じたことを書いています。

全体表示

[ リスト ]

ルネサス・NECエレクトロニクス、統合へ

半導体大手の統合ニュースです。

ここ数年、大手企業同士の統合は珍しくはありませんが、その中でもこれはあまり華やかな話題とは縁遠いニュースに聞こえます。

業界2位と3位が統合で、例えば日産とホンダの組み合わせとか、KDDIとソフトバンクとかならビッグニュースにもなるでしょうが、そういう話題でもありません。

では半導体が地味な産業かといえば、そんなことは全然なく世界的にも大きなビジネスで、コンピュータはもちろん、家電、自動車、各種機械、ゲーム機から健康器具まで今やあらゆるところに使われているわけで、日本の中心的ビジネスに「なるべき」産業であったと言えるでしょう。

実際、世界のベスト10のうち6社が日本企業という時代もありました。ですが、最近は現在の「リーマン以降の不況」とは関係なく、各社四苦八苦しているのが現状です。

半導体技術の詳細は、もちろん私なんかにはわかるはずもないですが、この半導体業界には古い日本的な「なんでもやっちゃえ、横並びOK,戦略ってなあに?」的要素がふんだんに盛り込まれている典型的事例だと思います。

元々は、主にコンピュータや家電などに使われていただけあって、日本は半導体産業のリーダー的存在でした。1990年頃にはNECは世界でトップの半導体会社でした。

ですが、多角化大好き、なんでもやっちゃえの典型産業であるエレクトロニクス業界(家電、重電など電気関係)大手はこぞってこの業界に参入しました。

富士通、日立、三菱電機、東芝は言うに及ばず、消費財系の松下、ソニー、サンヨー、シャープまで、更には沖電気、キャノン、リコー、京セラ、ニコン、オリンパス、TDK・・・ときりがありませんが、多くの企業が参入したわけです。新日鉄や川鉄などの鉄鋼会社まで参入して失敗したのは、悪いジョークとしか思えませんが。

特殊な分野に特化している中小は別にして、大手はほとんど全てのカテゴリーに参入しました。典型はNECでしょう。世界1位が、どの分野でもこのまま続くと思ったのでしょうか?

半導体産業は、「各社の予想通り」この20年間は、大波小波はあったにせよ、世界的に成長してきました。ですが、NECの全方位参入に対し、インテルはMPUなどのロジック半導体に特化し、サムソンはDRAMに特化と、海外大手は自社の戦略を明確にして、日本の大手に対抗してきました。

NECのなんでも戦略に右ならえで、富士通も日立も三菱も東芝もなんでもやりたがり、半導体のほぼ全カテゴリーに参入したわけです。しかもこれらの会社は全て、洗濯機もエアコンも冷蔵庫も作っていたわけです。

せめて日本国内から、海外競合のような「戦略的企業」が出てきていれば、一時期の総花経営による隆盛も意味はあったのかもしれませんが、結果としてほとんど全滅です。

手元に資料がないので、経験上の勘ですが、どこもここ20年間の半導体事業合計キャッシュフローは赤字でしょう。つまり、いい時もあったけど、締めてみれば「やらないほうが良かった事業」ということになります。

なぜか?言うまでもなく、戦略不在です。90年代の経営者にはわからなかったかも知れませんが、今時のビジネススクールの学生でも簡単に解説してくれるでしょう。

しかも、この半導体は多くのカテゴリーがある「規模ビジネス」です。合計して1番大きいなんて意味ないわけで、各カテゴリーでどれだけ大きな投資ができて、どれだけ早く回収できるか、が勝負の世界です。

「わが社も系列販売店があるから、冷蔵庫も扇風機も発売するぞ」というマインドのままでは、立ち行かなくなるのは自明です。

私は、日本の半導体業界がここまで沈んでしまったのは、総花経営による失敗は当然のことながら、各社の事業性格との整合性が取れてなかったことが大きな原因だと思っています。

事業性格というのは、例えば「体内時計」、つまり時間軸です。日立や三菱などはもともと重電出身です。経営トップも重電出身が多いわけです。重電の時間軸はとても長いです。

電力会社が新しい発電所を作るから、そこに発電機などを納品しよう、などという話は、数年先の話でゆっくり客と話し込んで、自社の持てる技術力をフルに生かして、競争上の優位性を持てるわけです。投資計画も顧客の長期投資計画を見れば、大体想像はつきます。

ですが、半導体は違います。巨大な投資を必要とし、ムーアの法則(簡単に言えば、1年半か2年でどんどん単価が安くなる)がないとしても、価格下落は激しく、早期回収が成功への鍵です。

同じ技術の製品でも1年遅れて出したのでは、致命的に手遅れなのです。つまり、意思決定のスピードが勝負です。意思決定のスピードが勝負なのに、総合会社が「タービンへの投資と半導体への投資」を経営会議で比べていては、勝てっこありません。「他社はどうしている?他社がやって成功したら、うちも」なんて経営では、絶対に無理です。

しかも半導体は、「そこそこ経営」はできません。「そんなに洗濯機に投資しなくても、販売店で品揃えができ、工場の稼動がまずまずであればいいじゃないか」なんてことはできません。

大型投資を続けるか、さもなくば撤退するか、です。結局、NECや日立、三菱などの多くの大手電機メーカーは、この「金食い虫」を本体から切り離すことで一時しのぎをしました。

ですが、別会社にした経営者はやはり似たような人が多いわけで、半導体産業の中でも相変わらず絞込みをせず、「顧客のニーズがあるから」という大義名分で、総花経営を続けてきたわけです。

では、消費財系の松下やソニーはどうか?これもまた事業性格とのギャップだと思います。

彼らの優れているのは、消費動向を掴んで、いかに消費者にとって良いものを作って提供できるかにあります。その点は、世界的に見てももちろんトップレベルでしょう。

その際には、「消費者にいいものを!」ということが全てに優先するわけで、部品をどこから買おうが、誰が作ろうがそんなことは関係ありません。

ですが、自分でこの部品の心臓部を手がけてしまうと、それを使わざるを得ません。消費者志向が最大の武器だったのに、社内の半導体技術レベルに合わせないといけません。

つまり、常に、永遠に、自社の半導体が絶対に世界一の製品であるという保証がない限り、こんな戦略は、消費者志向を武器にする会社にとっては、マイナスになるだけです。

アップルのiPodの重要部品の多くが日本製だったのは有名な話です。ソニーは自社生産により世界中から英知を集めるオプションを捨ててしまったけど、アップルはフリーハンドで最高のものを調達できたのです。

というわけで、一時は世界を制覇しつつあった日本の半導体企業は、どこも苦しくなり、親会社からはお荷物扱いされ、再編を繰り返し、従業員も「また、会社変わるの?」(NECやルネサス)とか「うちはどことくっつくのかな?」(富士通や東芝)という意識を持ちながら日々過ごさざるを得ないという結果になってしまったのです。

今度の新会社は、足して日本一位、世界三位だそうです。でも、足して一位には意味ないことは、当のルネサスが一番良く知っているはずです。

新生ルネサスが誕生したときは、日本一位、世界三位と、今回と全く同じポジションだったのですから。カテゴリー別にどれだけ効率経営ができるかが、本当の勝負でしょうが、今後は親会社が3社にもなり、意思決定が一層長引くことがあれば、建て直しは不可能になるでしょう。

思い切った戦略の転換が望まれます。



閉じる コメント(0)

コメント投稿
名前パスワードブログ
投稿

閉じる トラックバック(0)

トラックバックされた記事

トラックバックされている記事がありません。

トラックバック先の記事

  • トラックバック先の記事がありません。

芸能人・有名人の新着記事

Yahoo Image
idanbo
Twitteridanbo: @as...
05月30日 09:55

.

田崎正巳
人気度

ヘルプ

Yahoo Image

ブログバナー

  今日 全体
訪問者 10 76983
ブログリンク 0 12
コメント 0 261
トラックバック 0 134
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
検索 検索

開設日: 2007/8/12(日)


プライバシーポリシー -  利用規約 -  ガイドライン -  順守事項 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2012 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.