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「ただいま……」
「おかえり、
……どうしたの、ヴィヴィオ。
顔色、良くないよ……。
何かあったの……?」
心配そうに、
なのはママは覗き込んでくる。
そう、ちゃんと伝えよう。
大丈夫。
私は元々独りぼっちだったんだから、
もう子供じゃないし、
大人になったんだから、
私はもう一人で、生きていける……。
「……あのね、ママ。
話が、あるの」
ヴィヴィオの部屋で、
なのはは、ベッドに腰掛ける。
鞄の中から一枚の紙を取り出して、
なのはの隣に、人一人分空けて座った。
「ねぇ、ママ、
これ読んで」
渡されたのは、入寮希望届出書。
その届出書には既に、
名前も、住所も記載されていて、
書いていないのは、保護者の欄だけ。
10才。
そのくらいの歳になれば、
家族から友達、周りのことへと興味が移り出す、
そんな時期だと分かっている。
でも、最近のヴィヴィオの態度が、
寧ろ、本当の子供が出来た私達に嫌われたくない、愛されたい、
という気持ちの裏返しだとしたら……。
「あのね、ママ。
私、やりたいこと、あるんだ。
寮に入れば、もっといっぱいしたいことに打ち込めるし」
ヴィヴィオが自分で決めたことなら、
応援したいし、見守りたいと思っている。
でもそれが、私達と血の繋がりがないから、
親子の絆がないと思っていたのであったら………。
「……もうママ達に、
迷惑、かけなくて済むから………」
「え……?」
その一言は、頭を鈍器で叩かれたかのように、
頭の思考を止めてしまい。
「ママ達と一緒に暮らせて、
とても幸せだったんだ。
本当に幸せすぎて、
涙が零れちゃいそうなくらい幸せで………」
震える程強く握り締めて、
届出書の用紙は、クシャクシャになり、
所々に、水滴が滴る。
指先が、ピリピリと痛い。
「でもね、本当の親子じゃない私が、
此処にいたら、迷惑になっちゃうから」
ヴィヴィオの頬に、
一筋の雫が流れ落ちる。
「だからね、
私、出て行くね」
そっと、
その涙を拭って。
「私なんかが居たら、
ママ達……ううん………」
ゆっくりと、
頭を振り。
「なのはさん達、
親子水入らず出来ないもん」
悲痛さを堪え忍ぶ、
作り笑顔で。
「今まで、育ててくれて、
ありがとう、なのはさん」
笑みを浮かべた。
翡翠の瞳がほんのり紅く染まり、
鮮紅の瞳が赤みを増した、
寂しそうな表情で。
「……ダメだよ」
「え……?」
「こんなの、
絶対ダメだよっ!!」
頬に流れる涙さえ拭うことなく怒るなのはの表情を見て、
ヴィヴィオは言葉を失った。
幾度も怒られたことはある。
だけど、ここまで本気で怒られたのは、
聖王の揺りかごでの、あの時以来で。
「ヴィヴィオは私達の家族で、
パパとママの長女で、
泣き虫で甘えん坊で、
いつまでも、なのはママの娘なんだよ」
葛藤がぶつかり合い、
涙に押し流され、
崩れ出す、心の壁。
「……でも私は、
私は、ママ達の子供じゃないっ!」
「ううん、違うよ。
ヴィヴィオは、私の……、
なのはママの娘だよ」
堰を切って溢れ出す寂しさを受け止めるように、
大きくて優しい手が小さな頬に触れる。
「嘘っ!!
私は作り物の生命体で……」
「ママの娘だよ」
額と額が重なる。
蒼紫の瞳と、翡翠と鮮紅の瞳が見つめ合う。
「嘘……」
「娘だよ」
ヴィヴィオはなのはの胸に埋められ、
その温度を感じ、
そして、声を上げて泣き出す。
寂しさで固まった雪が、
春の温かさに溶け出したようで、
いつまでも、いつまでも、
大粒の涙は、流れ出ていた。
◇
「それで……、
出て行くとか言い出したの?」
「うん………」
ヴィヴィオが出て行くと言い出した、発端となった理由。
それが、新しい命−ロディオ−のお部屋をどこにするか、だった。
ロディオと自分を比較する内に、
悩みの森に迷い込んでしまい、
今回の騒動に発展してしまったのだ。
クスクスと、
笑い出すユーノとなのは。
「も、もうっ!パパもママもっ!!
私は真剣だったんだよ!!」
「ハハハ、ゴメンゴメン」
恥ずかしさで顔を真っ赤にさせるヴィヴィオ。
頬を膨らませ、プンッとそっぽを向き、
もう知らない!!とお冠で。
そんな、いつもの日常に戻ったからか、
一頻り笑った後、
なのはは一安心して、
ゆっくり息を吐く。
「ねぇ、ヴィヴィオ。
この子のお部屋はね、
ママのお部屋をあげるつもりだったの」
「え?」
「それで、ママがパパの部屋にお引っ越しして、
一緒に使おうねって、
もうパパと話してあったんだよ?」
「え……?
そうだったの?」
驚嘆の表情を浮かべ、
ヴィヴィオは、なのはの瞳を見つめる。
「うん、そうだよ。
だから、ヴィヴィオは悩んだり、
心配することなんて、
何もなかったんだよ?」
自分には居場所なんてない。
そういう風に、思って欲しくなくて、
寂しさを抱え込んで欲しくなくて、
彼と、毎晩話をしていた。
そして、誓い合った、
二人の子供を平等に愛すると。
寂しい思いなんて、させないと。
「でも、私……」
「ねぇ、ヴィヴィオ。
確かにロディのように、
ママのお腹の中から生まれたわけじゃないけど、
ちゃんとあるよね、ママとヴィヴィオを繋ぐ思い出が」
聖王の揺りかごの中で、一緒に乗り越えた、
産みの痛みと同じくらい大切な、
ヴィヴィオが生まれてきた証。
「うん………」
なのはママの身体の傷跡のことを、
偶然、耳にしてしまった日のこと。
ごめんなさい、
ごめんなさい、
ごめんなさい………、
と、何度も謝って、
だけど………。
この傷痕はね、
ヴィヴィオがママから生まれてきた証なんだよ。
そう言って、
ママは私を優しく抱き締めてくれて………。
あぁ、そうか、
私にも、ちゃんと親子の絆があったんだ。
「あぅぁ………」
なのはに抱かれている小さな命の小さな口から、
声のようなものが漏れ出す。
潤む瞳から零れそうな涙を堪えて、
ヴィヴィオは目尻の雫を指で拭い、
そして、ゆっくりと手を伸ばして、
ヴィヴィオは紅葉の葉のような小さな手に触れる。
「ロディ……」
小さな命に、
ヴィヴィオは名前を呼んで。
「私は……、
ヴィヴィオは、ロディのお姉さんだよ」
目と目を合わせ、
微笑むユーノとなのは。
肩を撫で下ろし、
目を細めるアイナ。
「ねぇ、ママ、パパ。
ロディのほっぺた、
すっごく柔らかい」
ヴィヴィオの手はいつの間にか頬にも触れていて、
ぷにぷにとした感触が堪らなく面白いのか、幾度も頬に触れて。
「ヴィヴィオも、
ほっぺ、すごく柔らかいよ」
そんな中、ユーノはヴィヴィオの頬を突っつき、
クスクスと、なのはが笑みが零れ出し。
「もう、パパ!
私はもう子供じゃないんだよ!!」
プンッと頬を膨らませたヴィヴィオの絹のような髪に、
二つの大きな手が乗る。
「……子供だよ、
いつまでも、パパとママの子供だよ」
例え、生まれ育った世界が違っても、
生まれ方が普通じゃなくても、
今ある幸せは、偽物でも、作り物でもない。
確かな絆が、いつもすぐそばにあって、
ずっと、きっと、これからも、
この絆は、決して途切れたりしないはずだから………。
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『Happy Life』でした。
シリーズ最後的なSSですが、まだまだ途中編を書きますよ。
えぇ、もちろん、反対意見は受け付けませんが(ぉ)。
なのはとユーノの間に子供が生まれた時に、
ヴィヴィオは、どう思うかということをテーマにして、
その背景として、「ユーノくん」から「ユーノパパ」へと、
呼び方が変化したお話を織り込んでみました。
僕の中では、
ユーノとなのはが結婚したと仮定した時に、
ヴィヴィオは、自分は本当の子供ではない、
という寂しさを抱くのではないかなと思います。
結構、ヴィヴィオはフェイトのネガティブな部分を引き継いでいたりしそうなので。。。
ロディオの名前は、
半年前くらい前に夢で見たアニメのタイトルが、「ロディオ・マイン」で、
なのはが妊娠しているという設定だったので、
じゃあ、子供の名前はロディオにしようと思いました。
「魔法少女リリカルなのはAFTER STORY」的な、感じでした。
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丁度、色々なサイトを回っていたら新作UPされていたので、前編、後編と一気読みさせていただきました。シリアスと書かれていたので少し緊張しながら読み始めたのですが……最後はなんかほんわか、あったかな感じで終わってホッとしました。
こんな感じのお話、好きですよ。あんまり心臓が痛いシリアス系は少し苦手ですが(相当、気合を入れないと精神ダメージをモロにうけますので)……次回作、期待して待ってます。
2009/5/6(水) 午後 8:02
どうもです。
はい、本人目の前にして何なんですが、
本文中に「管理局でも、パパやママのところに幾度も嫌がらせがあった。」というところは、
神楽風香様の『慈愛の月 星霜の空』より設定をお借りしています。
この設定がずぅっと心に残ってたせいか、
本文にそういう記述を入れさせて頂きました。
神楽様には、大変感謝しております。
2009/5/6(水) 午後 8:22 [ mgmg ]
待望の新作SS、拝見しました。
自分の存在意義に悩むヴィヴィオの葛藤がもう切なくて切なくて…。
そんなヴィヴィオを優しく包み込んだなのはとユーノの想いがもう温かくて…。
読み終わった後に思わず涙がホロリとこぼれました。
家族とは、血の繋がりよりも心と心の繋がりだという事を感じました。例え血が繋がっていなくても、誰がなんと言おうとも、ヴィヴィオはユーノとなのはの子です。
それにしても…
『ユーノとなのはの間に子供が出来ない』という設定は結構ショッキングでした。
「まさかブラスターの後遺症がここまで…」とか思いました。(汗)
身を切られるような辛い出来事を乗り越えたこの家族が、末永く幸せである事を願わずにはいられません。
切なく温かいSS、どうもありがとうございます。
次回作も楽しみにしています。
2009/5/6(水) 午後 9:27 [ TK ]
どうもです。
ブラスターというか、
ユーノとなのはの生まれた世界が違ったため、子供は生まれにくい、
って言う設定ですね。
ゲンヤ・ナカジマ三佐に、子供が生まれなかったのも、
もしかしたら、ナカジマ家の尊属が第97管理外世界出身だったからなのかな、と僕は思っています。
で、ユーノとなのはにも、
子供が生まれにくいのかなぁって思って、SSを作ってみました。
一応、願いは叶って、生まれたんですけど(特殊能力持ちで)。
ネコ科だけど、トラとライオンくらい違うという感じです。
(ライガーは居ますけどね)
2009/5/6(水) 午後 10:09 [ mgmg ]
どうも、お久しぶりです。いや〜パソコンがいじれない環境といいますか、状況になりまして・・・。
それは置いといて。
このSSを読んだときは涙が溢れそうになりましたね。
シリアスで悲しい涙と感動の涙が。
将来ユーノ君となのはさんが結婚したら起こりうる話ですからね、今回の話は。
でも、ユーノ君となのはさんはきっと血が繋がってなくともヴィヴィオを愛すると思います。
あぁ、ユーノ君一家が仲良く暮らす風景画目に浮かぶ・・・。
子供は何だかんだで、5人くらいは生まれてそう(オイオイ
これからも頑張ってください^^
でも、無理は禁物です。
2009/5/8(金) 午後 8:00 [ tdg*nmm ]
どうもです。
僕もパソコンをいじれない(?)環境が始まりつつあります。
「二人の距離が前進するお話」…We'll be fine
「シリアスだけど、最後に恋が実るお話」…Baby's Breath
「その後のお話」…Happy Life
この3つは、かなり書きたかったお話でした。
こんな風に、ヴィヴィオがユーノとなのはの子供に嫉妬するお話は、
かなり、起こり得るのではないかと僕も思います。
さて、次の更新は、
本試験日の翌日から起算して1月以内(シナリオが多数に上ること等から1月を超える期間を要すると認めるときは3月以内し、積雪等により、3月を超える期間を要すると認めるときは6月以内)になるのかな?
2009/5/8(金) 午後 9:49 [ mgmg ]