りぼんの読書ノート

読書ノートの2000作めは『儚い光(アン・マイクルズ)』でした。

今月の読書(2012/5)

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ロスト・シティ・レディオ(ダニエル・アラルコン)

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長い内戦状態にあった南米の架空の国では、多くの人々の消息が失われていました。
村の少年たちは政府軍にもゲリラ組織にも身を投じて消息を絶ち、崩壊した村から
流入した人々で首都のスラムは膨張し、しかもそのスラムで激戦が戦われたのです。

家族や恋人の思い出を語り、消息を尋ねる人々の電話を受け、行方不明者に向かって
呼びかける人気ラジオ番組「ロスト・シティ・レディオ」のパーソナリティのノラは、
ある日ジャングルの村からやってきた少年の訪問を受けますが、その少年ビクトルが
村人たちから番組に託されたリストには、やはり行方不明中のノラの夫レイの名前が
あったのです。

物語は、ノラとレイとの出会い、民族植物学者だったレイの反政府組織との関わり、
ジャングルからやってきた少年ビクトルの村でのできごと、そしてビクトルと一緒に
夫レイの行方を求めて彷徨うノラ・・という過去と現在が交錯して進んでいきます。

錯綜する物語群から浮かび上がってくるのは、人が行方不明になることの重みであり、
「他人の記憶という煉獄」にしか存在しなくなった不在者が、他者に与え続けている
影響の意味なのでしょう。

内戦の勝利者となった政府が、内戦があったことも、反政府勢力が存在したことすら
公式見解から削除し、都市や村の固有名を禁じて無味乾燥な数字に置き換えたことは、
「記憶」を消去するための試みです。「ロスト・シティ・レディオ」という番組自体が
政府に対する消極的な抵抗なのですが、レイという不在者の存在が、その意味合いを
強めていきます。

物語の最後になって、ジャングルで起きた出来事の全貌とビクトルの出生の秘密が
明らかになり、ノラにも読者にも衝撃を与えるのですが、小説のテーマとの関わりに
おいては「エピローグ」のようにすら思えます。

2012/5

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