ピアノに熱き思いをよせて・・・・

『古屋博敏の愛すべき人々との日々』は、アーティストピアノサービスの運営により行われています。

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音楽からアクセスするピアノの調律

ラフブロからの転用です。
ご意見を色々と頂けたので、こちらにも投稿してみたいと思います。


最近お知り合いになる方が多く、職業についてよく聞かれるので、自己紹介も兼ねて日頃から考えていることを書いてみたいと思います。
僕はアーティストが調律を行うという概念を大切にしています。
一般的にはアーティストと調律師は全く別の職業と思われがちですが、僕は違うポジションをとっています。職業は、歌手、調律師、プロデューサー。でも、これは少しも不思議なスタンスではなく、つい100〜200年前まではアーティスト自らが楽器の調整を行っていました。チェンバロなどが良い例なのですが、弦楽器も殆ど自ら音程を調整しますよね。それが楽器が複雑になり、ピアノを調整する仕事が確立されて現代に至っています。しかし、その確立された仕事が、余りに確立されすぎてしまい、細分化されたというよりは分業に近い状態かな
・・・とも感じています。そんな時代的背景から誕生した仕事でもありますが、僕は時代を巻き戻して、プロのアーティストがピアノの調律を行う姿勢を持っても良いのではないか・・・そんな考えから、自らの仕事を見つめています。
自らのレコーディングやライブのとき、使用するピアノは自ら調整しますし、どこかのコンサートホールでサポート役で入るときにも調律をします。と思えば、知り合いのお家のお子さんのピアノも全く同じ工程で調律します。つまり、音楽のメジャーシーンで自らも使うピアノ、また他の演奏家達の使用するピアノ、はたまたご家庭のピアノ、全て同じピアノの調律を行います。やはり人間自らが主役として関わるものは目の色変わりますし、自らが所有し、自らが感じ、自らが感動したその経験や技術・感性こそが、最大の財産であると思っています。そしてその感性を、他の方が使うピアノにも投入して行く。これが今僕が持っている美学です。

また、ピアノの調律と一言に表現されますが、これは至って保守管理のような印象を受ける語句ですよね。僕はこの印象付けられたイメージがどうも苦手です。
僕はどちらかと言えば、音創りの中にピアノの調律が含まれているという印象を持っています。これは表現を違う観点から言い表したものではなく、単なる『修正』か、より高い音の世界を追求する『創作』なのかという、全く違う概念からの視点です。この音を追及するという行為は、突き詰めて行けば、かなり高い感性の土台に組み上げられた経験値と情報量が必要であると感じます。というのは、単に調律や修理ばかりやっていても音創りの経験値は上らないし、一向に音楽の世界へピアノを触っていながらアクセスすることは出来ないものです。いわゆる『創る人』というよりは、『直す人』に近い状況になります。これは自らが切実な思いとして実感したことです。結局、調律や修理というものは、先ほど触れた『保守管理』から脱していなく、『創作』とは遠い世界だと僕は感じました。あくまで『直す』訳であって、『創る』訳ではないんです。しかし、技術的基礎部分である調律や修理の概念も、おさえておくことは最低限のことと言えるでしょう。しかし、これは最低限なんです。先ほどから書いている『音を創作する』という世界に入ってしまうと、明らかに音楽的経験値を必要としますし、音の世界を深く理解していないと、到底行き着けないステージが存在しています。
自分がミュージシャンとしてスタジオ入りしRECする時、経験豊かなミュージシャンと共演すると、今までに無いような能力が自分から引き出されているような感覚になります。経験の長いプロ特有のコード進行、リズム感、グルーヴ感、何を取っても超一流で、その中にいる自分が信じられないような中で演奏することは、否が応でもスキルアップさせられます。勿論自分の演奏にもクオリティが求められ、その上レコード会社の締め切りも待っているという、極限の緊張状態で感性は研ぎ澄まされていきます。
その叩き上げられて来た音楽的感性を使いながら、ピアノを調律・調整するという感覚は、非常に理に適っていると直感しています。音楽を奏でるためのピアノであって、ピアノは家具でもなければ工芸品でもない、まぎれも無い楽器なのですから、方向としては音楽からピアノに向いているわけで、決してその方向が変わる事はまず有り得ないと思います。

長々と書いてしまいましたが、音楽やピアノの好きな方々のご参考になれば幸いです。


PS,あるピアニストさんからご意見を頂きました。『書いていることは、当然といえば当然なんだよね。珍しいけど』だそうです(笑)。

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