4月2日(2012年)

 夜に始まったメールでのおしゃべり。時間はあっという間に過ぎていき、気がつけばもう12時を超えていた。
 相手は、海外に赴任した同僚の男の子。元々配属先が同じで同期ということもあり、普段からよく話をする仲ではあった。ところが彼の海外赴任が急に決まり、あっというまに私の目の前からいなくなってしまった。
 彼への気持ちに気づいたのはそれから。携帯の電源を入れ、着信を確認し、ため息をついては電源を切る。ある時、そんなことを繰り返している自分に気がついた。いつの間にか、心の中を彼が占めていた。

 遠く離れた地なので、彼の様子はよくわからない。朝、遠慮がちにおはようのメール。夜はこちらであったことを伝えつつ、おやすみのメール。
 週末はもう少し長くメールをやりとりする。時差が6時間ほどなので、日曜の夜なら、お互いに気兼ねなくメールができる。彼もそれを楽しみにしてくれているようで、週を追うごとにその時間は長くなっていった。今では食べているご飯の実況をしたり、観ているTVの話をしたりしながら、のんびりと夜を過ごすのが、日曜日の楽しみになっていた。

 今夜もそんな感じで、話は盛り上がっていた。でももう12時を過ぎている。明日の仕事のためには、もう寝なくちゃ。そんな寂しい気持ちが、思わず私の指を滑らせた。

 「私たち、気が合うよねー。もし付き合ったら、きっとうまく行くよねー」

 送信ボタンを押した後、その内容に気がつき、あせった。しかも──そのあと、彼からの返事が帰ってこない。

 慌てて何通もメールする。
 「寝落ちした?」
 「さっきのは、仮に、の話で、別にそういう意味じゃないよ」
 「おーい、返事しろー!」

 相変わらず、返信はない。

 私は呆然とした。胸がぎゅうっと締めつけられる。
 こんなことで、私たちの仲が終わってしまうの? そんなに重いの? 返事もできないほど嫌なの?

 私は布団にもぐりこんだ。眠れない。起き上がる。携帯を見る。着信はない。枕を抱えたまま壁に寄りかかり、何をするでもなく、ただ携帯を見つめる。

 ──あんなやつ、別に付き合っているわけでもないし、むしろあいつの気持ちがはっきりわかってよかったわよ──。
 そう自分に言い聞かせて目をつむるが、ため息ばかりが出て、またそっと携帯を見てしまう。

 そんなことをしているうちに明け方になり、私もいつの間にか眠っていた。目覚ましが鳴り、重い目を開ける。無意識に携帯を見ると、着信が一件。彼からのメールだ! 急いで開いてみる。

 「僕もそう思う。付き合ったら最高のカップルになるよ。来月帰る予定があるから、そのとき会おうよ」

 眠気は吹き飛び、私は何度もそれを読み返した。
 やったー!と思うと同時に、沸々と怒りがこみ上げてくる。私はすぐにメールを送った。

 「ちょっと、何ですぐ返事をくれないのよ! おかげで私、一睡もできなかったんだからね!」

 今度はすぐに返事が来た。

 「ごめんごめん、すぐに返事したかったんだけど、なんか昨日のうちに返事すると、嘘だと思われないかと思って」

 何でよ……そう思いつつ、ふとカレンダーを見て気がついた。そうか、昨日はエイプリルフールか……って、納得できるわけない!

 「今度会ったときは、このお返しを、じゅーぶん、させてもらいますからね!」

 そう返信すると、私は立ち上がり、鼻歌を歌いながら朝食の準備に取りかかった。

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4月1日(2012年)

 宣言します。私、y_fstwは、明日から1時間毎に新作を発表します。

 

 これを決意するまでには、長い間の葛藤がありました。 その間にビールの瓶が何本空いたことか、計りしれません。

 でも、決めました。明日から1時間毎に新作を発表します。 

 もしかしたら、キーを打つ時間が足りないかもしれません。ある館での殺人事件、探偵が容疑者一同を食堂に呼び出したところで終わってしまうかもしれない。サッカー部員とマネージャー、最近いい雰囲気だったところに、イケメンの新入生が入部してきて…で、時間切れかもしれない。またある時は、登場人物の紹介だけしかできないかもしれない。

 だが、それでもしょうがないのです。私は決めたのです。足りない分は、読者の想像力にお任せすることにします。 

 

 私は今、この挑戦に対する希望で胸がいっぱいです。 

 願わくば、この決意が今日、4月1日のみで消えてしまわないといいなー。

   

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青い猫型ロボット

(こちらは以前に1000文字小説というサイトのお題『小説・漫画・アニメ等のキャラクターの固有名詞を使用する』で書いたものです)。


 私はおもちゃを設計する小さな会社で事務の仕事をしている。
 「お疲れ様でしたー」
 退社時間となり、私は事務室を後にする。更衣室でメイクを直すと、別棟にある作業場に向かった。そっと中を覗くと、あの人はまだ中で作業をしている。私は流しに入り、コーヒーを淹れた。
 「いよいよ完成ですね」
 声をかける。彼が顔を上げた。
 「ああ、うん……あ、ありがとう」
 彼は笑顔でカップを受け取る。そのメガネの向こうで笑う目が、私はとても好き。
 私と同じ、二十代後半。この年で、すでに、ある商品の開発を任されている。と言っても、小さい会社のこと、ほとんど彼が一人で研究しているのだが。
 彼の目の前には、その開発の最終段階に入ったロボットが置かれている。背丈は子供と同じくらい。二本の短い足で立ち、まん丸の胴体の上に、まん丸の頭が載っている。体の色は青く、顔とお腹は白。彼が言うには、ネコを元にデザインしたらしが……見た目は青い雪ダルマと言った方が近い。

 「毎日残業で大変ですね」
 「うん。でも、クリスマスには間に合わせないといけないし……それに何より、子供たちに本当に喜んでほしいんだ。だから、全然平気だよ」
 日頃はどこか頼りない感じの彼だが、こういうことに関しては、
目を輝かせて自分の想いを語りだす。
 「僕はね、これが子供たちの友達としてだけでなく、ちょぴり勇気も与えられるような、そんなロボットにしたいんだ。
 ……そして、このロボットかが完成したら、僕も、自分に勇気が持てると思うんだ。その時には……キミに伝えたいことがある」
 「え……?」
 私の心臓が跳ね上がる。
 「あ、いや、その、べ、別にたいしたことでは……」
 彼は顔を赤くしてうつむいた。
 聞きたい。その言葉の続きがとても聞きたかった。
 だが彼はロボットに向かってしまい、それから顔を上げてくれなくなってしまった。



 それから数日が経ち、いよいよ試作品の完成予定日になった。作業場には社長を含め社員たちが集まり、彼とそのロボットの周囲に人垣をつくった。私もその中に混じり、祈るような想いで様子を見守っている。
 事前に聞いた話では、ロボットは最初に元気良く挨拶をし、それから自己紹介をするらしい。
 彼がスイッチを入れた。

 「こんにちは!僕……」

 ロボットの動きが一瞬止まる。やがて何やら難しい表情に変わった。

 「……我輩は猫である。名前はまだ無い」


 社員一同、頭の上に?が点く。
 社長が彼に聞いた。
 「おい、このロボットの名前は?」
 「……そういえば、まだ決めていませんでした……」
 「何やってんだバカ!会議だ、会議!早急に名前を決めろ!工場が口開けて待ってんだぞ!」
 作業場は一転、大騒ぎ。

 あーあ、彼の「伝えたいこと」が聞けるのは、しばらく先かー。

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エクストリームサンタ(3)

 (その1はこちらです http://blogs.yahoo.co.jp/y_fstw/7312977.html )。
 (その2はこちらです http://blogs.yahoo.co.jp/y_fstw/7324664.html )。


 スケートボードに乗ってプレゼントを配るサンタクロース。だが、街でスケートボードを乗り回す迷惑な人に勘違いされ、警察官に取り囲まれてしまう。


 「ホーッホッホー!困ったなぁ、これから他の国にも行かないといけないのに!」
 困惑するサンタ。すると、先ほどの男が小声で耳打ちする。
 「サンタさん、ボードに乗って」
 「え?あ、ああ」
 言われるままにボードに乗るサンタ。すると、男がサンタの左腕を取って組む。女が右腕を取って組む。三人がスクラムを組んだ格好だ。
 「それ〜!!」
 掛け声とともに、左右の二人が走り出す。ボードに乗ったサンタは二人に引っ張られて動き出す。三人は取り囲む警官たちに突進した。
 警官は意表を突かれ、おもわず左右に避けてしまう。その隙を突いて三人は包囲の輪を突破した。
 両脇のカップルはしばらく走り、そして腕を放してサンタの背中を押した。
 「サンタさーん、がんばってね〜!」
 手を振る二人。サンタもボードに乗ったまま後を向いて手を振った。


 サンタはボードを蹴り、人々でごった返す駅前のビルへとやってきた。
 「あ、サンタだ」
 口々に言う声が聞こえる。
 サンタはビルを見上げる。壁に取り付けられた巨大モニターには、アイドルの歌う姿が流れている。と、その前にちらちらと動く小さな球体。風船だ。モニターの縁に引っかかったまま、ゆらゆらと風に揺れている。
 足元を見ると、それを見上げている小さな女の子。
 「君の風船かい?」
 女の子がうなずく。
 「よーし、サンタさんが取ってきてあげよう。ちょっと待っててね」
 その時、人ごみをかき分けてやってくる警官たちの姿が見えた。
 「ホーッホッホ!」
 サンタはボードを背負い、ビルの壁を登りだす。看板、窓枠、柱を伝って登る。
 下からは警官の「降りなさーい!」の声。肩の通信機から応援を呼ぶ者もいる。何人かはビルに入っていった。屋上に回ろうとしているらしい。
 サンタは風船の横にたどり着く。引っかかっていた風船の紐をほどき、ポケットから取り出したキャンディーの小さな包みをその紐にくくり付ける。風船をつかんだ手を空中に伸ばし、そっと手を離すと、風船はキャンディーの重みでゆっくりと下に降りていく。
 下で待っていた女の子がその風船をつかむのを見届けると、サンタはさらに上へと登っていった。
 そうこうするうちに、消防員が大きなクッション運んできて下に広げる。うわさを聞きつけたTV局の中継車がやってくる。空には報道ヘリが飛びまわり、と、大変な騒ぎ。


 ヘリからはマイクを持ったアナウンサーが、生放送を開始する。
 「私たち報道班は、クリスマスでにぎわう街の中、スケートボードに乗るサンタの格好をした男が現れたといううわさを聞き、ヘリコプターでやってきました。今入った情報によると、なんとそのサンタ男は駅前ビルの外壁をよじ登っているという話です。カメラでその姿が捉えられるでしょうか?あ、いました!確かに人がいます。10階建てのビルの8,9階あたりでしょうか、赤い服で背中に白い袋を背負ったサンタが登っています!速い、速い!あっという間に屋上まで到達しそうです!いや、到達しました。男はまだ登るのをやめません、屋上に取り付けられた看板をさらに登っています!」


 サンタはビルの屋上に取り付けられた、大きな看板の上に立った。下からはサーチライトの明かり。周囲をヘリが旋回する。
 「……いゃあ、大騒ぎになってしまったなぁ……」
 サンタはさすがに困った顔をした。


 ヘリのアナウンサーは、さらに声を張り上げる。
 「さあ、サンタ男は一番上まで上り詰めました。警官はすぐそこまでやってきています。お騒がせ男はいったい何の目的でこんなことをしているのでしょうか。おや、何か言っています。ここにある超高性能指向性マイクを向けてみましょう。どうでしょう、音声さん、なにか聞こえますか?」
 マイクが拾った声が中継放送に乗る。
 「……ホーッホッホ!……」
 アナウンサーのイヤホンにもその声が届いた。
 「笑っています、サンタが笑っています……あっ!」
 アナウンサーが叫び声をあげた。


 サンタは、空中へとジャンプしたのだ。


 アナウンサー、警官、地上の人々。まるで時間が停止したかのようにみながその動きを止めてサンタを見つめた。


 シャンシャンシャン……!


 鈴の音が聞こえた。どこからか現れたソリがやってきて、空中のサンタを受け止めた。


 ソリの上にお尻から着地するサンタ。
 トナカイが振り返って言う。
 「……ほら、いわんこっちゃないでしょ?」
 サンタは起き上がって頭を掻いた。


 ウォーッ!
 歓声が上がる。
 何事かと下を見ると、こちらを見上げた人たちが一斉に手を振っていた。


 アナウンサーが叫ぶ。
 「みなさん、見ましたか!トナカイに引かれたソリが空を飛んできて、サンタを乗せていきました!
 報道に携わるものとして、私は自信を持って言いたい。サンタクロースは、本当にいるのです!」


 街は大歓声に包まれ、やがてそれはサンタコールに変わった。
 「サンタ!サンタ!サンタ!……」


 サンタとトナカイは顔を見合わせた。トナカイは
 「しょうがないですねぇ」
 と、つぶやいたが、どこかうれしそうだった。
 そうして方向転換をすると、歓声に包まれた街の上を、もう一度ゆっくりと周った。


(おわり)。

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エクストリームサンタ(2)

(その1はこちらです。http://blogs.yahoo.co.jp/y_fstw/7312977.html)


 交差点の真ん中に降り立ってしまったサンタクロース。ソリはあわてて空へと駆け上る。サンタは手にしていたスケートボードに乗り、地面を蹴った。
 ぐんぐんスピードを上げて滑るサンタ。車の間をスイスイすり抜け、やがて住宅街へと方向を変えた。
 ある一軒家のお家。滑ってきたサンタは生垣の横でボードの後ろを蹴ってジャンプ、生垣を飛び越えながらボードを手に持ち替えて着地する。そのボードを背中に背負い、家の軒下から飛び上がって屋根をつかみ、懸垂の要領で二階の子供部屋へと上る。
 またはマンション。階段を使わず、外壁を登って直接目的の部屋へ。そこが済んだらベランダからベランダへ、さらには屋上から隣のビルへと飛び移り、次から次へとプレゼントを配っていく。
 サンタはあっという間に子供たちの家々を回り、プレゼントを配って行った。その速度はソリを使ったときと変わらなかった。
 やがて袋の中のプレゼントもなくなった。あとはまた別の国へと移動することになる。
 「ホーッホッホ!」
 サンタは満足げに笑うと、再びボードに乗って地面を蹴った。


 トナカイとの待ち合わせ場所に向かう途中、再び繁華街に差しかかった と、その行く先に走る男が見えた。年は20代前半か。手に花束を持ち、大慌てで走っている。サンタはスピードを上げ、その男の横に並んだ。
 「ホーッホッホ!お急ぎのようだね!」
 男は走りつつ、ちらりとサンタの方を見た。
 「なに?ケーキの売り込み?いいよ、間に合ってるよ!」
 「その様子だと、どうやら待ち合わせの時間に間に合わないようだね」
 「わかってんなら、話しかけないでよ!」
 迷惑そうな男。サンタはその男をひょいと抱え上げた。
 「な、何すんだよ、降ろせよ!」
 「待ち合わせ場所は?」
 「……駅前の犬の銅像……」
 「ホーッホッホ!」
 サンタは男を抱えたまま、地面を蹴ってさらにスピードを上げた。


 駅前。犬の銅像。待ち合わせスポットとなっているその銅像の周囲では、人待ち顔の男女が何人も立っていた。
 その中の一人の女性。腕の時計を見る。あたりを見る。ため息をつく。また時計を見る。
 と、背後に風を感じた。振り返る。そこにはサンタクロースが立っていた。
 「ホーッホッホ!かわいらしいお嬢さん!誰かと待ち合わせかな?」
 「……ええ」
 戸惑いながらも答える女性。
 「でも、時間になっても現われない?」
 「……はい」
 「すっぽかされたと思ってる?」
 「ううん。──でも、そうなのかも」
 「その人はカッコよくて、優しくて」
 「──みんなからモテる」
 「でも、好きなんだ」
 「うん。彼のことを思うと──泣きたくなるくらい、好き」
 「そうか、その人は……きっとこんな子だね?」
 サンタが一歩よこに動くと、その後ろに先ほどの男が照れた表情で立っていた。
 「あっ!」
 女性は驚きの声を上げる。
 「この人は、待ち合わせ場所に向かって、必死になって走っていたよ。だから、今日の遅刻は大目に見てあげてくれないかな」
 サンタは二人の肩をつかみ、ぐっと引き寄せた。


 「おい、そこの男!」
 厳しい声が飛んできた。
 サンタが顔を上げると、その周囲を何人もの警官が取り囲んでいた。
 「市民から通報があった。サンタの格好でスケボーを乗り回している男がいると。お前だな!」


 (その3につづく http://blogs.yahoo.co.jp/y_fstw/7353272.html )。

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