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07年夏、ぼくと妻と2人でイタリアに来た。妻がこの夏はどうしてもアマルフィ海岸に行きたいと言ったから。妻はぼくと結婚するまでは、国際線のエアーホステスだったのだから、なんだって知っている。世界のどこに行けばおいしいものが食べられるのか、本当にリラックスできるスパ、ブランドものでない質の良いバッグを売るブティック、安全なヌーディストビーチ。彼女の知識には驚かされる。その妻が選んだ今年の滞在先は、アマルフィ。どんなところなんだろう。ぼくは尋ねたい気持ちを抑え、リサーチもしない。ぼくの大好きな彼女が好きな場所に、ただ行きたかったのだ。
岸壁に沿って建つパステルカラーの家々、深いエメラルドの海、レモン畑から香る甘酸っぱい匂い、空は常に青く、風が頬をなでる。ナポリ空港にはあらかじめ手配していたタクシードライバーが待っていた。白のメルセデスはワックスでピカピカ輝き、雲一つない青空を映す。ぼくと妻は2人でエアーコンディショニングのきいたバックシートで目を合わせず軽く手をつないだ。
いつの間にか眠ってしまったぼくは、妻の「ほら、見て!」という甲高い声で起こされる。そう、もうアマルフィ海岸に着いたのだ。カーブの激しい海岸沿いを飛ばすドライバーが、突然スピードを落としたかと思うと、、、そこは展望台。眼下に広がる真っ青な海に向かって、地面に腰をおろしてパニーニを頬張るイタリア男が3人。「チャオ、チャオ」とぼくの妻に愛想を振りまいている。ぼくは咄嗟にカメラを出して、ドライバーに撮影を頼む。ぼくの手は妻の細い腰、彼女の指はぼくの首に。ぼくの妻が、シャッターの瞬間にぎゅっとぼくの首に手をからませる。いい旅の始まりだ、とぼくは思った。
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