大文字山を食べる

『大文字山を食べる』(改訂増補版)が、螢灰肇灰箸ら出版されました。

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おそらく今シーズン最後の「赤い実にチャレンジ」になるだろう。

住宅の庭木などに赤い実がたわわになっている。
イメージ 1

たぶん、ピラカンサ(ピラカンサス)。
リンゴやモモやサクラと同じくバラ科である。
ピラカンサとは、いくつかの種の総称らしいが、トキワサンザシが最もポピュラーだろう。
「トキワサンザシ」という和名より、「ピラカンサ」というカタカナ名(ラテン語)のほうが通用していることからして、我々の生活文化との関わりは歴史が浅いようである。

これらの写真は、昨年11月末に撮影したもの。
イメージ 2

一気に赤く色づいているが、鳥たちは見向きもしない。
何しろ、この実には毒がある。
青酸系の毒(青酸配糖体)を含んでいるらしい。
鳥は、食べ物がなくなって、この実を食べるとしても、少しずつ少しずつだ。
いっぺんに食べると中毒してしまうからだ。
ピラカンサ側からすると、少しずつ鳥に食べてもらうことで、種子をあちこちに分散して運んでもらいたいわけだ。
(逆に、美味しい実は、一斉に赤くならずに、時間差をもって熟していくようだ。)

見るからにドきつい毒がありそうで、実際、人間が食べると激しい嘔吐や呼吸困難などをおこすと言う。
だが、まさか一粒食べただけでそんなふうにはなるまい。
しかも、時が経つにつれて、毒性は薄くなっていくと書いてあるサイトもある。
不味いのを覚悟の上で、一粒食べてやろうと思っていた。
イメージ 3


   ×  ×  ×

そうこうしながら、ピラカンサのことをネットで調べてみたら、やはり先人がいた。
「ピラカンサの実を味わってみた!」という記事を見つけたのだ。
→ http://bokupapa.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/02/index.html
このブログの著者がインターネットでピラカンサの実を食べた人の情報がないかを調べたところ
「1件も見つからなかった」
という。
同じように、わたしもこの人以外にピラカンサを食べたという記事を見つけることはできなかった。

この著者は、以下のように考えて、ピラカンサを食べてみたという。
…擦魯團薀ンサの実が好き。 ⇒ 人間にとって嬉しい味ではなくても、それなりに食べられるのだろう。
▲團薀ンサの和名はトキワサンザシ。 ⇒ サンザシの名前が付いているじゃないか。食べられそう。
ピラカンサはバラ科。 ⇒ バラ科の実は食べられるものが多い。リンゴ、ナシ、モモ、サクランボ、ビワ、イチゴ、ラズベリー・・・。いっぱいあるぞ。

敬意を表します。
まったく、この発想は正しい。
とくに 
原始の人間も、「鳥が好き好んで食べているから、きっと…」と思ってチャレンジしたにちがいないからだ。
勘違いしないでほしい。
いま我々が普通に食べている果物も、はじめから今みたいに甘くてジューシーだったわけではないはずだ。
柿を思い出していただきたい。
果物も野生状態の原種は、もっと渋かったり酸っぱかったり…現代の味覚からすると“イマイチ”だったにちがいない。
それを原始の人たちが、「なんとか食える」「まぁまぁ美味しい」というヤツを選択して栽培し、長い時間をかけて改良に改良を重ねて、現在のような甘くて美味しいものに姿を変えさせたものなのだ。

ところで、この著者の感想。
詳細はそのブログ記事に譲るが、とにかく
「舌の刺激」
「口の中のマズさ」
「ムカツキ」
の三重苦にひどく苦しめられ、うがいをしても他のものを食べても効果がない。
「マズイ味を忘れるのに丸1日、刺激を忘れるのに3日もかかってしまった」
というのだ。

いやはや、これを読んで、わたしはすっかり萎縮してしまった。

単に「不味いのを覚悟して」というどころではない。
こんなに強烈な刺激があるのをわかっていて、あえて食べてみるのは、相当に勇気がいる。

わたしは長い間、ためらっていた。
「他人の言うことを鵜呑みにせず、何でも自分で体験してみたい」
という思いと、
「他人がやったことの追体験で二番煎じ。結果が分かっていたら冒険じゃない」
という思いの間を、行ったり来たりしていた。

   ×  ×  ×

先日、同じ場所のピラカンサを見てみた。
イメージ 4

11月末にみた時と、ほとんど変化していない。
いかに鳥に不人気なのかが分かる。
一方で、「鳥が好んで食べる」という話と齟齬しているな、とも思った。

だが、近寄って見てみると、じつに多くの小鳥が来ていて、賑やかな宴会を開いているのだ。
イメージ 5

写真ではあまり写っていないが、10羽近くの小鳥が集っていた。
たぶん、メジロだと思う。
隣の松の木には巣まであった。↓(黄緑色の○の中)
イメージ 6


「そんなにうまいのか!?」
鳥たちの饗宴を見ていると、上のような逡巡はどこかに飛んでいき、
「自分も味わってみたい!」
という欲求にとらわれた。

で、手を伸ばして、2〜3粒、採った。
中はこんな感じ。
イメージ 7

ふたたび不安になったが、種を取り除いて口に入れてみた。

…まずくない。
苦くも渋くもない。
食べ頃を過ぎたリンゴのようなスカスカな感じだが、ほのかに甘い。

そんなこと言って、しばらくしてから「ガツン!」と不味さがおそってくるのだろう、と覚悟していた。
だが、一向にそんなことはない。

時間が経つにつれて、毒性が薄くなる!

毒性が抜けたのだ!

上のブログの記事は日付が12月2日になっている。
その頃はまだ毒が強烈。
だが、2月下旬ともなると毒はあらかた消えてしまうのだ。
それを鳥たちは知っていて、ようやく今頃から食べ始めたということなのだ。

ああ、やっぱり自分で味わってみないといけないなぁと実感した。
食後、舌にわずかなシビれを感じたが、15分もすれば消えてしまった。

というわけで、2月下旬のピラカンサは食べられます。
嘘だと思う人も、思わない人も、チャレンジしてみましょう!

この記事に

閉じる コメント(16)

こんにちは。
毎度、体を張っての記事をありがとうございます。
もしもの時には食してみたいと思います(^^ゞ
その後、体調に変化はありませんか?

母が育てた小松菜はえぐ味がありました。
これが本来の味なのか・・・と陽介さんのブログを思い出しながら、美味しく食べました(*^_^*)

2010/2/23(火) 午後 5:15 [ - ] 返信する

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こんばんわ。
そうだったんですね・・・でも、やっぱり、私には勇気がないです f(^_^;
ポチ♪

2010/2/23(火) 午後 8:22 アキチャン 返信する

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家の周りで見かけたら、チャレンジしてみます。見つかるかな〜(^^;
常にチャレンジャーですよね、先生は〜♪体当たりって感じ。
私はビビりなので、尊敬してます、先生のこと(^▽^)
今日の記事を読んでいて、
先生の前世はワンちゃんとのことですが、前々世は鳥さんだったのかもと思えてきました。 削除

2010/2/23(火) 午後 10:45 [ のり ] 返信する

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いよ〜開拓者〜!!
すごいですね〜、下痢も何もかも覚悟して
チャレンジ・・・
人はそうして、判別を繰り返してきたんでしょうね
歴史の一ページは書き換えられたですね〜

確かに、渋柿は一度霜をかぶるとすごく甘くなって
木になってる物でも美味しいですからね。

感服しました
大ポチ☆です。

2010/2/24(水) 午前 1:46 koara2008 返信する

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☆くらげさん。
体調、まったく問題ありません。大丈夫です。
2年越しの課題を達成できて、感無量です。

野菜も、我々が子どもの頃に食べていたものは、もっと個性がありましたよねぇ。
ホウレンソウもトマトもキュウリもピーマンも…
酸っぱかったり、青っぽかったり、エグかったり…
野菜と人間がせめぎ合っている感じがして、なつかしいです。

2010/2/24(水) 午前 2:17 安田陽介 返信する

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☆アキチャンさん。
ま、こんなもんか…と体験しておくのもいいかもしれませんよ。
もっとも、わたしは責任もちませんけどね…(笑)

ポチありがとうございます。

2010/2/24(水) 午前 2:18 安田陽介 返信する

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☆のりちゃん。
まぁ、手始めにナンテンでもチャレンジしてみたら?
「冒険こそが私の存在理由である」(byパブロ・ピカソ)

前世は鳥だったのかなぁ?
トリ年生まれだけど…
よく、「鳥になりたい」って言う人がいるでしょ。
わたしもなりたいけど、鳥になったら芋虫やらピラカンサを食べるんやで!
その心の準備をしているのよ。

2010/2/24(水) 午前 2:18 安田陽介 返信する

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☆こあらさん。
ありがとうございます。
開拓者の役割、遠い昔の人にだけ任せておいて、現代人はその成果の上に胡坐をかいていてもいいのか?と思ってしまうのです。
我々だって、いろいろやって子孫に残していかないとなぁ〜と。
で、わたしのできることと言えば、こんなことぐらい…。
先祖の恩に報いて ささやかな真似事です。

2010/2/24(水) 午前 2:27 安田陽介 返信する

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す、すごい勇気!パイオニア!
でも「食べられるかな?」から始まらないと今私たちが食べている食材は発見されなかったわけですものね!
ピラカンサは2月に食べる。
これ、また本にできそうですね^^!
ぽちぽちですが楽しく読ませていただいておりますよ〜♪

2010/2/27(土) 午後 0:02 お散歩 返信する

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☆お散歩さん。
原始時代のパイオニアたちへの敬意と感謝をこめて、挑戦してみました。
「鳥が食べているから、食べてみる」
「人がマズイって言っているから、食べない」
どちらも言い分はわかりますが、「やって後悔する」のと「やらないで後悔する」のとだと、わたしは「やってみる」タイプですね。
まぁ、とんでもなくマズかったとしても、最低限ブログの話題にはなるので無駄にはなりませんし…

本の感想、また聞かせてくださいね。

2010/2/27(土) 午後 0:26 安田陽介 返信する

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子供のときに、実を指でつぶして果汁をちゅーちゅーしてたんだけど、毒があったとは驚きだわ、早い時期だったら危なかったのね。
確かに味は、りんご系だった。 削除

2014/8/31(日) 午後 10:57 [ 通りすがり ] 返信する

☆通りすがりさん。
コメント、ありがとうございます。
毒性が薄まっているとは言え、ちゅーちゅーとは驚きです。
大人になればそんな冒険もしなくなりますが、味を知っているというのは強いですね。

2014/9/2(火) 午後 3:44 安田陽介 返信する

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赤い実が綺麗なので、鋭い刺にも耐えて育てていましたが、ある朝突然スッカリ実がなくなっています。
ヒヨドリが来ていた事は知っていましたが、目立って減る事はなかった
翌年ムクドリの群れに一瞬の内に食べ尽くされる事が分かりました。 削除

2015/11/7(土) 午前 5:58 [ ひーろー.こす ] 返信する

> ひーろー.こすさん
コメントありがとうございます。
鳥たちはどうして食べられるようになったことを知るのでしょうね。
それとも、やむにやまれず食べてみたら、意外と食べられたというのでしょうかね。
食べ始めたら一瞬で無くなりますね。

2015/11/8(日) 午前 2:12 安田陽介 返信する

小学生の時この実を食べていた事を思い出しました(^-^;
カスカスしたリンゴみたいな実
赤色の実は手当たり次第に食べていたので…
高学年になり図書館で図鑑を見た時少し怖くなった遠い昔
イチイも甘くて好きでした(*^_^*)
今はもちろん食べませんが…
何事もなくいられた事に感謝

2015/12/4(金) 午後 4:35 [ 稲葉志 ] 返信する

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☆稲葉志さん
コメントありがとうございます。
イチイはおいしいですね。
しかし、ピラカンサも食べておられたとは!
無事で何よりでした。
毒が抜けたものだったのでしょう。
何でも食べてみたくなる、小学生の時の好奇心とチャレンジ精神がすばらしいです。

2015/12/5(土) 午後 0:42 安田陽介 返信する

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