大文字山を食べる

『大文字山を食べる』(改訂増補版)が、螢灰肇灰箸ら出版されました。

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まずは笑い話、というか恥さらしから。
縄文時代の遺跡からテンナンショウの遺物が出土する。
縄文人の食料の一つにテンナンショウがあったとされる。
「テンナンショウ」というのはどんな植物かいな?と図鑑で調べてみた。
ふむふむ、こんな植物か…と一応納得した。
が、「似たような植物を知っているぞ! 山でよく見かけるやつだ。そうマムシグサ(蝮草)だ!」
イメージ 1

別の図鑑で「マムシグサ」を調べてみる。
「毒がある」と書いてある。
食べられないわけだ。
ところが、その「マムシグサ」が「テンナンショウ」と酷似しているのだ。
いくつか他の図鑑や事典も見てみたが、違いがわからない。
こいつは図鑑の写真だけでは判別できない、知っている人に実物を示して見分け方を教えてもらわないと…
そう思いつつ、そんな機会が得られないままに時が過ぎた。
イメージ 2

ある日、本を読んでいて、テンナンショウとマムシグサとが同一のものだと知った時の驚き!
「目から鱗が落ちた」というよりも、「泰山鳴動して鼠一匹」のよう。
「なぁ〜んだ、そうだったのか…」と、へなへな〜となってしまった。
今から十数年前のことである。

   ×   ×   ×

「テンナンショウとマムシグサとが同一のもの」と書いたが、正確ではない。
テンナンショウは「サトイモ科テンナンショウ属」の総称で、その中の一種に「マムシグサ」がある。
が、細かいことは抜きにして、ここではテンナンショウの別名がマムシグサということで話をすすめる。
マムシグサは、沢沿いなど湿ったところに生える。
花は上の写真のように奇妙な形をしていて、食虫植物を連想させる。
そして、茎は気味の悪い斑模様。
イメージ 3


この模様がマムシ(蝮)のそれに似ているので「マムシグサ」とよばれるのだ。

さて、マムシグサ(テンナンショウ)はサトイモ科であって、縄文人が食べていたのも地下の芋(植物学的には球茎または塊茎)の部分だ。
東南アジアを中心とするタロイモ(サトイモ)文化圏と共通する要素である。

そのマムシグサの芋を食べる話も、それはそれで興味深いのだが、それは後日にゆずることとする。
今回のテーマは「実」だ。
マムシグサの実は、花茎の頂上につく。季節は秋。
イメージ 4

まるでトウモロコシみたい。
はじめは緑色だが、だんだん熟していって赤くなっていく。
イメージ 5

晩秋から冬には、真っ赤になる。
先にも書いたようにマムシグサは有毒。
塊茎も実も、全身に毒性があるという。

わたしが「テンナンショウ」=「マムシグサ」と知った本というのは、
盛口満さんの『ネコじゃらしのポップコーン』(木魂社、1997年)
だったと思う。
そこには、マムシグサの芋を食べる話とともに、実を食べる話もつづられている。
著者の盛口さんが勤めておられた高校の生徒たちが好奇心から実を食べていったというのだ。

「ピリピリして死ぬかと思った」
「背中が寒くなるほど不快な刺激が口に残る」
「舌の裏とノドに小さなハリをつきたてるような痛み」
などという感想が語られ、
「くちびるがはれた」
「舌にポツポツができる」
という症状も述べられている。

また、
「しばらくはすずしい顔でいたのだが、やがて顔をしかめイタタタ…と騒ぎだす」
「ピーマンとイチゴが合わさったような味でおいしかった」
が、
「でも急にウェッとなってノドがいたくなった」
ともある。
刺激は時間差でくるらしい。

そうかと思えば、
「食べると甘い」
「うす甘いだけで、痛みはこなかった」
「平気だ」
という報告例も書かれている。

どうやら、熟し具合などの個体差(実ひとつひとつの差)があるらしい。

イメージ 9

能書きはここまで。

以前、ピラカンサを食べたことがあった。↓
http://blogs.yahoo.co.jp/yasudaimonji/31402694.html
毒があって、とんでもなく不味いと言われていたピラカンサだったが、食べてみると、それほど不味くも苦くもなかった…ということを経験した。
結実してから長い時間が経過した晩冬・早春のころになると、毒は薄れていったようだ。

マムシグサも同じなのかもしれない。
時は3月中旬。
秋に実ができてから十分な時間が経過している。
チャレンジしてみよう。

たとえ不味くなかったとしても、そんなにバクバク食べるつもりはないので、少量を洗って用意した。
イメージ 6

横にビールも用意した。
熟してブヨブヨになっているのを選ぶ。
いきなり口に入れる勇気はないので、果汁を指でしぼり出すようにし、舐めてみた。

うむ、甘味がある。
が、美味しくはない。
本に書かれていたような刺激や痛みもないが、ほんの少し気になる不快感がある。
舌がシュワシュワになる感じ。

もう一つ、別の実をつまんでみた。
こちらも先ほどと同じ。
予想どおり、よく熟したものは毒が抜けて、刺激もなくなっているようだ。

中には種が3つ入っていた↓(口の中に入れたものではありません)
イメージ 7

さらに2つほど、果汁を味わってみた。
結果は同じ。

というわけで、首尾よく実験終了…

…なのだが、これでは面白くない。
もうちょっと冒険してみよう。

で、あえて完熟していない、ちょっとコリコリした触感が残っている実をつまんでみた。
口をつけて、指で押しだして果汁を吸う。











ガーン!!!


来たぁぁぁ!!!!!!


もう、本に書いてあるとおり、無数の小さな針で舌を突き刺される感じ。
痛い!
激痛だ!
ビールを飲んでも、まったく洗い流されない。

唾液で口の中を洗浄しようとすると、下の前歯の裏側・舌の裏側に痛みが広がってしまう。
ヒリヒリする。

さらに、その唾液を飲み込むと、喉がやられる。
どう表現していいか分からない。
とにかく、とんでもなく痛い。

これはたまらない。
しかも、痛みが長時間つづく。
舌の先に、針でつついたような赤い傷(?)がついている。
唇も、若干だが腫れている感じ。
心なしか頭痛までしてくる。
いやはや、まいった…

今現在でも舌と喉の痛みは取れていない。
ビリビリ・チクチク・ヒリヒリする。
もう金輪際、マムシグサの実に手は出すまいと堅く誓った。

その一方で、わたしはこの痛みを楽しんでいる。
チャレンジして良かった…と思っている。
ひとつ人生経験が増えたというものだ。
残った実は、大文字山に撒いてくることにする。
イメージ 8


さて、お次は、縄文人も食べたという芋のほうのチャレンジだ。
だが、それはまた後日。

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閉じる コメント(39)

☆ドバさん。
そうかもしれませんね。
ぜひ実験していただきたいと思います。
報告、お待ちしております。

2013/10/21(月) 午後 1:30 安田陽介 返信する

わわっ、本当に食べてみたんですね、探究心がタダモノではありませんね(笑)
マムシグサは得意の分野ですがさすがに食べてみたことはありません。
毒のシュウ酸カルシウムはヤマイモにも含まれているので手がかゆくなりますし、生のパイナップルを食べると舌がピリピリしたり、唇がムズムズするのもこれです。
僕はこのあたりの安全なところで確認しときます。
次回の記事は”マムシグサで拭いたら”どうなるか?でお願いします(笑)

2013/10/24(木) 午後 0:53 keith 返信する

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始めまして。 昨日 丹沢に行ったとき マムシ草を見たんですが・・・ 名前もわからず調べていたら ココにたどり着きました。
食べちゃったんですね! 私が見たときは かなりカラフルで美味しそうに見えたんですが・・ やっぱり猛毒・・・
でも 気になります!! 今度食べてみようかな(笑)

2013/10/24(木) 午後 3:37 ハナ次郎丸&クッキー 返信する

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追伸です。 私の アメブロの方にも記事リンクさせていただきますね

2013/10/24(木) 午後 3:42 ハナ次郎丸&クッキー 返信する

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◇keithさん。
たぶん、葉っぱを利用しただけでは特に影響はないと思われますがね。
以前、カクレミノの葉で拭いていました。
「広くて丈夫でいいわい」と思っていたら、ウルシオールで尻が痒くなってきました。

2013/10/25(金) 午前 1:41 安田陽介 返信する

☆ハナ次郎丸&クッキーさん。
美味しそうでしたか?
わたしの目には毒々しい赤色で、不気味に映ります。
美味しそうと感じられるのは、縄文人のDNAを多く受け継いでおられるのかもしれませんね。
ぜひ是非、一度、食べてみてください。

2013/10/25(金) 午前 10:08 安田陽介 返信する

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あっちの土手こっちの山道でヤブカンゾウを摘み、今年はこのへんで終わりかなと思っていたのですが、ふと隣の空き地をみたら枯れ枝の下から青い草が・・・それにワサビも花が咲き始めていたので「これはいただきませう」と侵入いたしました。目的を果たしてもう一度足元を見たら、ギョギョっ!土の中からマムシかコブラか(まさか)ツチノコか!白地に茶色のまだら頭が覗いておりました。去年お訪ねするきっかけになったマムシ草の坊主でした。あそこに生えて来ることを知らなかったら「ギャー」っと叫んでいたと思います。伸びても不気味、芽生えたても不気味、面白い植物です。 削除

2014/4/27(日) 午後 5:18 [ 黒澤祐子 ] 返信する

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◇黒澤祐子さん。
マムシグサ、ありましたか!
不気味だけど、面白く、とても惹きつけられる植物ですね。
これだけ目立っておいて、食べたら最悪、というのですから、マムシグサは何がしたいのでしょうね。
それにしても、あちこちで山菜を摘んでおられるようで、うらやましいです。

2014/4/28(月) 午後 11:35 安田陽介 返信する

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山菜にマムシグサ混入で喉にしびれの記事を見て、マムシグサ検索でたどり着きました。花はいつも見ていたのですが、真っ赤な実になるまで知りませんでした。またそれを食べてみたとはすごいですね。勉強になりました。 削除

2014/5/4(日) 午前 10:15 [ ほうちゃん ] 返信する

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はじめまして。貴重な画像を拝見させていただきました。昔植物図鑑をよく見ていました。まむし草を見てどん引きした記憶があります。似た植物にウラシマソウがあります。これも薄ら寒くなるほど不気味な植物です。サトイモ科には他にもミズバショウなどの毒植物がありますね。老婆心ながら食べるのだけは本当に危ないのでやめてくださいね。

2014/5/4(日) 午後 5:31 [ チラシの裏日記 ] 返信する

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すみません。お尋ねします。
葉っぱの汁などでも同様の症状が出るのですか?
肌に付着した程度では・・・?
触った程度なら、手を洗えば大丈夫ですか?
全く無知な私なので教えてください。

2014/5/25(日) 午前 1:12 [ とんちゃん ] 返信する

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☆ほうちゃんさん。
はじめまして。
返信が遅くなり、申し訳ありません。
「山菜にマムシグサ混入で喉にしびれ」というニュースがあったのですか!
検索してみて初めて知りました。
こちらこそ勉強になりました。

2014/5/26(月) 午後 1:12 安田陽介 返信する

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☆チラシの裏日記さん。
はじめまして。
ウラシマソウも知っています。
有毒植物を原始人たちは研究と努力を積み重ねて食用植物にしていったのですね。
御心配ありがとうございます。
食べる時には慎重にやります。

2014/5/26(月) 午後 1:12 安田陽介 返信する

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☆とんたんさん。
はじまして。
返信が遅くなり、申し訳ありません。
マムシグサについて、詳しくは知りません。
上のコメントで、葉っぱ(新芽?)を誤食して喉がしびれたというニュースが紹介されていますが、それで葉にも有毒成分があることを知ったくらいです。
想像ですが、触ったくらいでは大丈夫じゃないでしょうか?
触った手で、口や目を触ると被害があるかもしれません。

2014/5/26(月) 午後 1:13 安田陽介 返信する

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マムシ草が気になって検索してたどり着きました。
私も、「食べてみたい」と思ったのですが、やめておきます!
でも、チャレンジしたあなたは、エライ 削除

2015/5/25(月) 午後 9:03 [ やまだ ] 返信する

☆やまださん。
ご訪問ありがとうございます。
そう言わずに、一度チャレンジして、縄文人を追体験してみてくださいませ。

2015/5/26(火) 午後 8:27 安田陽介 返信する

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初めまして。娘が5歳のときにこの実を摘んで遊んでいたところ、10分ぐらいして急に手のひらが痛いと泣き出し、洗っても消毒をしてもだめで辟易しました。表面に触れたぐらいではなんともないのですが、実をこねくり回したり、茎をギューっと引っ張ったりなど、液汁が出るまでいじったのがいけなかったようです。痛がる手のひらを見てもなんともなく、一同首をひねったものですが、こちらを拝見して娘の体験がわかりとても助かりました。症状は一晩寝てだいぶ引いたようですが、その後も2日間くらいは思い出したように痛いと言っていた気がします。

2015/8/13(木) 午前 10:05 [ hag*71* ] 返信する

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☆hag*71*さん。
コメントありがとうございます。
返信が遅くなって、申し訳ありません。

娘さん、災難でしたね。
触っただけでも汁がつけば…なるほど。
そういう危険があることは気がつききませんでした。

2015/9/9(水) 午前 11:39 安田陽介 返信する

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初めまして マムシグサで検索しましたら

こちらにたどり着きました

もう最高!!

スミマセン<(_ _)> 笑いながら読んでしまいました

分かりやすく楽しく 素晴らしい文章力!!

お勉強させて頂きました

ありがとうございました

niceポッチン☆

2015/12/16(水) 午後 8:43 Saya 返信する

☆Sayaさん。
コメントありがとうございます。
お誉めいただいて、ありがとうございます。
自分でも久しぶりに読んでみました。
面白いことをやっていたものです。
楽しんでいただき、勉強してもらって、光栄に存じます。

2015/12/17(木) 午後 1:27 安田陽介 返信する

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