|
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2011/11/08 2032号 (転送紹介歓迎)
[JCJふらっしゅ]
世界の平和にかかわる最新ニュース、マスメディアのニュースの検証など、市民とジ
ャーナリストを真実の情報でつなぐメールマガジンです。メディア関係者、ジャーナ
リスト志望学生必見の情報を満載。
◇バックナンバー◇ http://archive.mag2.com/0000102032/index.html
◇購読申込み◇ http://www.mag2.com/m/0000102032.html
◇JCJ加入申込み◇ http://jcj-daily.sakura.ne.jp/postmail/postmail.html
◎◎◎◎┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓◎◎◎◎
┃Y・記・者・の・「・ニ・ュ・ー・ス・の・検・証・」┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
□■大手紙の空疎なTPP推進論──パブリシティと化す新聞「社説」の異様
大手紙が揃って、<FTAやEPAが本当に貿易拡大や経済成長に寄与するという
いかなる証拠も示すことなく、貿易拡大や新たな成長に役立つと呪文のように唱える
>なか、唯一、朝日新聞は上記のような<証拠>を試みたという点で、良心的と呼べ
ばよいのか、それとも理屈がついている分だけよけいに罪深いのか。
そして一年を経て今回だが、上に見たように、朝日新聞社説は今回は、<貿易や投
資の自由化を加速させ、国内の雇用につなげていくことが>ますます重要で、WTO
が行き詰まるなか、昨年のAPEC(横浜)は、FTAAPへの道筋の一つにTPP
も位置づけたことを挙げて、そして何をいうのかと思えば、「戦略づくりを急げ」と
いうのである。
APECとFTAAPとTPPの関連付けについて、殊更に検証するまでもなく、
いやそれを回避して、「戦略づくりを急げ」といいつつ、続いて、<「TPP参加で
産業の一部や生活が壊される」との懸念に、どうこたえていくか」>と責任の主体を
自社の論評から政権のなすべきことへと巧妙にずらして、<まずは農業である。特に
コメへの対応が焦点だ。政府は、経営規模を現状の10倍程度に広げる方針を打ち出
している。バラマキ色が強い戸別所得補償制度の見直しをはじめ、TPP問題がなく
とも取り組むべき課題である>と書いてみせる。
つまり、自分で「交渉参加で日本を前へ」と提言するタイトルを付しながら、「戦
略」の言葉を持ち出した以上、朝日新聞はどんな「戦略」を提案するのかと読み進ん
でも、もはやそこには同社の「戦略」もなければ「提言」もないのである。
農業の課題の次は「消費者の利益が原点」という。
「消費者の利益」については、この社説は、規制緩和の問題が最重要と考えている
らしい。
<規制緩和の問題はどうか>踏み出し、続いて、TPP交渉で取り上げられている
分野として、<米国が日本に繰り返し要求してきた項目と重なる>ことを紹介し、
<「市場主義」を掲げて規制緩和を進めた小泉内閣時代に検討された内容も少なくな
い>と前置き、<折しも世界各地で「反市場主義」「反グローバリズム」のうねりが
広がる。格差拡大への懸念が「米国の言いなりになるのか」という主張と結びつき、
TPP反対論を後押ししている>と、ようやく現実にふれる。
そして、この社説を、<ここは冷静になって、「何が消費者の利益になるか」とい
う原点に立ち返ろう。安全・安心な生活を守るため、必要な規制を維持するのは当然
だ>と、渦巻くTPPへの反対の声にクリンチをしてみせながらも、<TPP反対派
の主張に、業界の利益を守る思惑がないか>とチクリと刺してみたりしつつ、最後に
<真に必要な規制を見極め、米国などの要求にしっかり向き合いたい>と締めくくっ
ている。
なんですかこれは? と訊ねたくもなるような空疎なパブリシティ記事だが、この
パブリシティ記事には、一つだけ大事な情報が含まれている。
賢明な読者諸氏には、あらためていうまでもないことだろうが、そう「戦略」であ
る。TPP参加には「戦略」というものが必要らしいということ、そして、前のめり
にTPP参加を急ぐ政権もそれを後押しだか先導だかをしているつもりらしいメスメ
ディアの側にも、その「戦略」とやらは、依然、「不在」であるということだ。
農業について一応触れてみせ、また消費者にも触れて見せているが、社説の前のほ
うで、<TPPのテーマは幅広い。関税引き下げだけでなく、医療や郵政、金融、食
の安全、環境など、さまざまな分野の規制緩和につながる可能性がある>いいなが
らも、それを検討したり検証を深めようとする姿勢は見出せない。
「交渉参加で日本を前へ」と題して、TPP参加を提言しているはずのこの社説と
いう名のパブリシティ記事。政府・役所かマスメディアの側に、もし「戦略」とやら
が存在していれば、このパブリシティ記事が政府に「戦略」とやらを求めることもな
かっただろうし、日々の社説のなかに、こうして巧妙に(いやおおっぴらに)下手な
パブリシティ記事をもぐりこませることがあることも、露呈せずにすんだことだろ
う。つまりは「ちょうちん記事」の域を出ていない感じがしてならない。おそらく社
内では、さまざまな異論・反論の類が渦巻いていることだろうと期待しておきたい。
それとも朝日新聞は、この新聞の生き残りのかかったこの「経済戦争」の時代に、
あえてこの社説は「パブリシティに過ぎない」ことを読者に気づいてもらうために、
このパブリシティ社説の「クオリティ」をこの程度に放置して見せたのだろうか。そ
れを「朝日」の良心だと、私たちは深読みして受け止めねばならないのだろうか。困
ったことである。
なおTPPをめぐる国会の状況については、きょう(8日)の東京新聞「TPP
反対派の具体論に 説得苦しむ推進派」の記事がわかりやすくまとめている。
1)民主党内の議論は、九日の意見集約を目標に大詰めを迎えている。交渉参加の賛
否は真っ二つに割れたまま。野田佳彦首相は十日にも交渉参加を表明する方向で調
整しているが、党内では反対派が指摘する問題点に対し、推進派は説得力のある反
論ができず、説得に苦心している。
2)党の重鎮や執行部に近い議員は大半が推進、容認の立場だが、実際に連日のPT
の会合に出席して発言するのは、圧倒的に反対派が多い。
3)推進派は経済成長を維持し、国際社会で生き残っていくには自由貿易を進めるこ
とが不可欠だと主張。「日米関係、特に安全保障強化を考えればTPPは重要だ」
と訴えている。
4)反対派は「TPPはすべての関税撤廃、ルールの統一を議題に乗せる特異な経済
連携だ」と批判。医療や食の安全、労働の規制緩和など、影響が懸念される具体例
を多岐にわたって指摘している。
5)具体的な問題点を突きつけられ、推進派は「説明不足」と追及される場面が増え
ている。
6)政府は保険適用の診療と適用外の自由診療を併用する「混合診療」の全面解禁に
ついて「(TPP交渉参加九カ国の協議で)議論の対象にはなっていない」としつ
つも「(今後)議論される可能性は排除されない」との見解を明らかにした。これ
について反対派は混合診療が解禁されれば国民皆保険の崩壊につながると指摘する。
7)政府は「議論された場合でも、国民皆保険制度は維持する」というだけで、具体
的にどう維持するのかは説明しない。関税撤廃で壊滅的な打撃を受けるとされる農
業対策も、具体案や予算規模は示さない。
8)党の重鎮や執行部は、総会後の役員会で8日に提言案をまとめ、9日の総会に諮
る段取りを確認したが、推進、反対両派の主張は平行線のままだ。推進派の民主党
の仙谷由人政調会長代行は講演で、反対派を「旧態依然の部分的な議論に終始して
いる」と批判し、感情的な対立も深まっている。
9)反対派は7日、超党派の決起集会を開いた。民主、自民、公明各党などから議員
計146人が参加。首相の交渉参加表明に反対する国会決議を目指し、署名集めを
した。国民新党の亀井静香代表は「首相が強行すれば、細川政権がウルグアイ・ラ
ウンドでつぶれた二の舞いになる」とけん制している。
(「TPP 反対派の具体論に 説得苦しむ推進派」の記事まとめここまで)
韓米FTA批准案 韓国与党が強行処理方針(聯合ニュース7日)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2011/11/07/0200000000AJP20111107001900882.HTML
どうするTPP─交渉参加で日本を前へ(朝日新聞8日)
http://www.asahi.com/paper/editorial20111108.html
記者の目:TPP交渉参加は本当に必要か=位川一郎(毎日新聞10月27日)
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20111027ddm004070002000c.html
TPP 反対派の具体論に 説得苦しむ推進派(東京新聞8日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2011110802000027.html
大手新聞TPP社説 そろいもそろって無知蒙昧の恥さらし 米国も逃げ出す日本参加にラッパ吹く
(農業情報研究所2010.10.28)
http://www.juno.dti.ne.jp/tkitaba/opinion/japan-fta-fever3.htm
|