ハイゼンベルクの不等式〜不確定性原理〜小澤の不等式
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先月中頃に流れた“ハイゼンベルクの不確定性原理覆る”のニュースには興奮した。報道ぶりも興奮気味だったように思う。
現代科学の公理の如く受け止められていたものが“否定”されたかのような印象を持たされた。そうだとすれば、“超光速ニュートリノ”に匹敵する大発見だ。老科学ファンたる身としては黙ってはいられない場面であった。
しかし、直ちに感想を漏らすことをためらったのは、ハイゼンベルクの不等式に替わる小澤の不等式を見ると、式の精密化であると思われたからだ。つまり、ニュースの文言が誇大なのではないかとの懸念を持ったのだ。
これからの物理学の教科書には、“小澤の不等式”が記載されることは間違いない。しかし、ハイゼンベルクが提唱した“不確定性の原理”は、精密化されて生き続けるわけだから、言わば、土俵は“ハイゼンベルク”なのだ。
というわけで、報道ぶりと印象とに落差があったので、下手なことは言い出せない気分だった。そのうち、権威あるポピュラーサイエンス誌に解り易い解説が載るのを待っていたのだが、来月号でないと間に合わないようなので、見切り発車することにした。
取り敢えず、正確さを期待して小澤教授の属する名古屋大学のHPを参照した。丁寧に解説されていたので、要所を引用する:
“「ハイゼンベルクの不等式」は、どの測定も打ち破ることのできない究極の限界と考えられてきた。しかし、その限界が実は打破可能であることが、1980 年代の重力波検出限界を巡る論争を解決した小澤の量子測定理論を通して明らかにされ、2003 年に発見された「小澤の不等式」によって「ハイゼンベルクの不等式」に替わる新たな関係式が理論的に示された。
しかし、これらの理論的成果を実験的に実証することは、これまで困難な課題として残された。
今回、長谷川グループが開発した最先端の中性子光学実験装置により、この「ハイゼンベルクの不等式」の破れを実験的に観測することに世界で初めて成功し、同時に,「小澤の不等式」の成立も確認された。
不確定性原理(ハイゼンベルクの不等式):量子力学を開拓したドイツのノーベル物理学賞受賞者ハイゼンベルクがガンマ線顕微鏡の思考実験で導いた量子力学の根本原理。位置の測定誤差ΔQ と運動量(質量×速度)の測定誤差ΔP の間に ΔQΔP≧h/4π が成り立つとされ、位置と運動量の同時測定は常に不可能であることが導かれる。
小澤の不等式:ハイゼンベルクの不等式の不備を改良した関係式で、どんな測定でも普遍的に成立する。測定前の位置の標準偏差と運動量の標準偏差をσ(Q)、σ(P)とすると, ΔQΔP+ΔQσ(P) +σ(Q)ΔP≧h/4π が成り立つとされ、測定前の状態によっては,位置と運動量の同時測定が可能な場合がある。”
いみじくも“ハイゼンベルクの不等式の不備を改良した関係式”と記述されている。これが正確な表現だろう。
それにしても、式自体は素人にも解り易い形をしており、内容も一応理解可能だ。ハイゼンベルクの不等式そのものが、早い時期に“根拠不明瞭”との批判を受けていたらしいことも意外だ。
“不確定”の原理は解るが、その定量化には疑問が残っていたということだろうが、そのまま教科書に記載され続けたことは、素人には腑に落ちないことだ。
「物理学には結構ずさんな一面があり、その典型例が不確定性原理だ。」(東京大学 清水明教授)と朝日新聞に書かれているのも驚きだ。
つまり、専門家は“ハイゼンベルクの不等式”が不正確なことを承知していたが、通常の試験研究には影響が無いため、無関心だったのだ。その問題に取り組んで、地道に研究してきたのが小澤教授だということか。
ところで、小澤の不等式を素人解りするように変形すると、
(ΔQ+σ(Q))(ΔP+σ(P))−σ(Q) σ(P) ≧h/4π
になるのだが、これを哲学的に解釈するとどうなるのだろう。
“位置と運動量それぞれの誤差と標準偏差の和を求め、両者の積から標準偏差の積を減じた値”がh/4π(不確定性の下限値)を下回ることはできないことを意味するのだが。
実験、測定データの正確さを主に審査していたものと思われる。結果の意味するところの重大さに鑑み、それくらいの慎重さは当然なのだろう。発表は 15 January 2012 だから、更に1か月以上経過している。
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