生と死

生と死のはざまを思索する

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2012年2月1日

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青春:山の別館(18)

伯父夫婦の養女として村役場で戸籍に記入された翌日、カナは伯母にたいして思い切って、お母さんと呼んでみた。
 
伯母はしばらくカナを見詰めていたが目をうるませて、有難うといい、カナを強く抱きしめた。伯母はいままで通りカナちゃんと呼んでいるが、明らかに気持ちの違いを感じた。
 
カナはこの度のことは生田一利から示唆をうけたことを正直に二人に打ち明けた。伯父は一度機会をみて生田君を夕食に誘ってみたらどうかと伯母に話した。
 
生田さん一人を招待するのは何か意図でもあるようでおかしいではないか、と伯母が意見を述べた。それではカナの入籍祝いということで小松さんにも声をかけ、二人の都合の良い土曜日の夕方に招待しようということになった。
 
 
岡島俊夫はその日、朝から妙にそわそわとしていた。養女となったカナの男友達が来るというよりも、カナの婿養子の候補者が来るような気がしてならなかった。
 
伯母は勤めに出る二人を送ると川下の町まで夕食の食材を買出しにでかけた。若い男性は食欲も旺盛であろうと思い、肉料理を中心にした献立をいろいろ考えた。
 
知識欲の旺盛なあの二人がどんな笑顔で自分の料理を食べてくれるかと思うと慶子もなぜかうきうきとしてくるのであった。
 
カナちゃんはあの二人をどう思っているのかしら、とやきもきしてくるのであった。夫はいつも夕食時に酒かビールを飲んでいるが、若い人達にはウイスキーも要るだろうかと酒屋にも寄ってみた。思わぬ散財に、独りでくすっ、と笑ってしまった。
 
 
 
約束の時間に二人は揃って訪ねてきた。準備はすっかり出来ていたので慶子も台所に立つこともなく五人がテーブルにつき、まずシャンペンの乾杯から夕食は始まった。
 
「この度はおめでとうございます。ご招待有難うございます」
 
生田はそつのない挨拶をした。
 
「日頃はカナがお世話になっています。今後ともよろしくお願いします」
俊夫の普段と異なる四角張ったものいいにカナはうつむいて笑いをころした。
 
屈託のない二人の食べっぷりは見ていて気持ちがよかった。スープの飲み方、フォークとナイフの使い方など必ずしも正しいとはいえないが、少しも不快感を与えることなくテーブルにある料理がどんどん片付いていく様は壮観であった。
 
ウイスキーボトルが半分くらいになった頃には無口な耕作までが冗談を言って皆を笑わせていた。
 
「岡島さん、会社がボリビアで銅鉱山を買った、というのは本当ですか?」
 
「本当だよ、来年には従業員の中から何人か現地へ派遣されることになる。条件は二十歳以上、学歴は高校卒程度ということになりそうだから、生田君など応募してみてはどう?」
 
「そうですか、それじゃ、やはり今年の11月には大検を受けておかねばなりませんね」
 
「岡島さん、鉱石って光っているんですか?」
 
耕作の質問にカナがぷっと笑った。
 
「ボーリングで鉱脈が伸びている方向を確かめてから試掘するだろう、含有率の高い鉱脈を掘り当てると光っているよ。まるで星空を見上げているような気持ちになるね」

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