生と死

生と死のはざまを思索する

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2012年2月14日

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青春:書簡(3)

神戸の生活も2年が過ぎました。やっと一般教養課程を修了し、4月から経済学部専門課程へ上がりました。
 
この2年間の大半をアルバイトに費やした感じがします。それでも語学はしっかり勉強しましたし、西洋哲学の方は哲学史を中心に系統立てて勉強しましたので、かなり自分のものになったかと少しは自信もできています。
 
マルクスの代表著作の資本論の中に「労働者がより多く労働し、より多く他人の富を生産し、彼らの労働の生産力が増大するにしたがって、彼らにとっては資本の価値増殖手段としての彼らの機能さえもますます不安定となるのはどうしてであるか・・・・」との一文があります。
 
マルクスはそれまでの西洋思想、なかんずく哲学批判として「ヘーゲルの弁証法と哲学一般の批判」を著し、次いで近代資本主義社会が大きく花を開いてきたヨーロッパの経済社会の中にひそむ深い社会の矛盾をつかみ、近代経済学と社会を批判したのです。
 
彼は思想を含めた社会全体の批判を行い、社会の底辺にはいつくばっている労働階級全体の、人間としての自由を取り戻す道を探したのだということがわかってきました。
 
マルクスの思想と社会批判は多くの学生をとりこにしています。私の現在の境遇からいえば私自身マルキストとして、目の色を変えて社会活動家になっても不思議はないと頭の右半分は認めています。
 
前述の友人、三村幸男君などは本格的なマルキストで、ある日曜日に彼と須磨海岸で遊びましたが、何時間もマルクスの熱い思いを聞かせてくれました。
 
彼の経済学の勉強は太い筋の通ったもので、彼の目に映る私などは社会問題に対して目覚めの遅い子供のように映っていることでしょう。しかし私の頭の左半分は、学業半ばにして頭の中を一色に塗りつぶしてはいかんと叫んでいます。
 
 
今年は学年の後期から教授の個人別直接指導である「ゼミナール」がはじまります。二年半の日時をかけて、これまでに修めた経済学を卒業論文に仕上げていく制度です。私はマルサスの経済理論を専攻することにしました。
 
指導教授はK大学の経済原論を担当されている林田一雄教授です。先生からは英国の古典派経済学者、マルサスの厚さ5センチはあろうかと見える英文の原書「経済原論」を与えられました。
 
 
今年一年間は今のアルバイトを続けるつもりですが、来年の夏休みにはアルバイトを辞め、2ヶ月ほど山へ帰って読書三昧に耽るつもりです。久し振りに付近の山歩きをして体も鍛えたいと思っています。
 
生田さんとは積もる話が山ほどあります。
 
 
    生田一利 様
        昭和35年4月24日     
                             小松耕作

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