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8564 待ったなしの武富士

武富士が第一四半期決算を発表しました。
それによると営業収益は351億円、営業利益は96億円、純利益は92億円となっています。
ちなみに昨年は、第一四半期の営業収益は、549億円でしたから、約4割近くの減収ということになります。

ちなみに通期では営業収益1187億円、営業利益133億円、純利益130億円を想定しているようです。

武富士の決算をみると、営業利益、経常利益、純利益があまり変わらない数字となっているところに特徴があります。
営業外の要因が少ないうえ、過払で税務会計上は赤字か繰越損失が使えるため、税金を支払う必要がないからと窺われます。


同時に発表されたプレゼン資料をみると、今後の消費者金融業界の行く末を占う点でもなかなか興味深いところがあります。

武富士の1Q時点における営業貸付金は約8000億円。
これを2010年3月には7053億円、2011年3月には、6200億円、2012年3月には5730億円と減らしていきます。

それに伴って営業収益も減少していき、2010年3月期で1187億円、2011年3月期には、990億円、2012年3月期には、870億円と減少していく見込みです。

一時は営業収益が4000億円近くあったと記憶していますから、隔世の感があります。


貸し倒れや過払金の状況をみると、悲惨の一言に尽きます。
2009年6月の不良債権比率は、20.6パーセント。これを2010年3月には、17.3パーセントに押さえる予定のようですが、いずれにせよとんでもない数字です。

この不良債権の中には、破産や任意整理、過払いなどの理由により回収ができないものすべてが含まれていると思われますが、武富士の貸出債権のうち、問題債権が5分の1に達することを示しています。
これは2つの評価が可能です。一方は、過払いがこれだけいわれていても、結局のところ、それは全体の5分の1に過ぎないから、大した問題ではないという見方、他方は、表に出ている過払いはまだ全体の5分の1にすぎず、過払い問題はまだまだ続くという見方。


さて、双方の評価がありえますが、ここ数年の消費者金融業者に関する予想は、厚生省の人口推計のようなもので、見通しよりもよくなった試しがありません。
今回も後者の見方の方が正しいのではないかと思われます。

たしかに武富士は、最近貸出金利を18パーセント以下に引き下げ、約5割の営業貸付金は、貸出金利が法定金利内です。したがって、5割の債権については、もはやそういう問題はないかのようにも思われます。

たしかに、新たに勧誘し顧客となった者に最初から18パーセントの金利で貸し出しをしていたのであれば、こういう問題は起きません。しかし、既存の顧客に対して、金利を18パーセントに引き下げたにすぎない場合は、話が別です。
仮に既存の顧客のそこまでの取引で過払いになっていれば、その後はそもそも利息を支払い義務がないわけですから、18パーセントの利息を支払えばその分がまるまる過払金に上乗せされていきます。
過払いとなっていない顧客でも、すでに長い取引の結果、50万円の約定での貸付金が10万円になっているというケースもありえます。
しかし、このときに契約を切り替えて18パーセントの利息をもらうのは、あくまでも約定の50万円に対してです。そうすると、年間9万円の利息収入。他方、利息制限法で計算した10万円の残高に対しては、1万8000円の利息収入しか得られないわけで、この取引を2年も続けると過払いとなります。

ちなみに、武富士は、平成20年3月の時点で18パーセント以下の貸付利率の顧客はわずか10パーセントほどでした。それが1年で40パーセントも増えたわけです。

ところが、この間の新規顧客は10万人弱。割合にして、全顧客の6パーセント程度です。
つまり、現在、18パーセント以下の利率で取引をしている者のうちかなりの割合の者は、過払いがまったく生じない新規組ではなく、依然として過払いのリスクを抱える乗換組とみた方がいいでしょう。

しかも、武富士は、未だに半数の顧客に対して18パーセント以上の貸付をしているわけですから、リスクは広がる一方です。

ちなみにジャックスは、平成9年から18パーセントを超える貸付をしていません。しかし、そのジャックスですから、未だに20億円ほどの利息返還損失引当金を計上しています。それは、ここで指摘したとおり、平成9年前の取引を引きずった結果、現在過払いとなっている顧客への対策用と考えて良さそうです。

平成10年以降というと不況の中で貸金業者が業績を伸ばした時期。ジャックスの場合も、その間にかなりの会員の入れ替えが進んだと思いますが、そのジャックスですら10年以上前の過払いを引きずっている顧客がいるという前提のもとでここまでの備えをしているわけですから、武富士の過払い問題が3年や5年で解消するものではないことは容易に理解できるかと思われます。

では、その武富士は、どういう対策をしているかというと、ひたすら過去の蓄積を食いつぶすというもの。貸倒引当金と利息返還損失引当金を合計して約5000億円を蓄積したので、それで万全の備えを固めたというわけです。

ただ、武富士は、平成21年3月期だけでも過払金返還請求に伴う元本既存額と利息返還額が2000億円に達しています(前倒和解の特殊事情を強調していますが、それでも1500億円を超えます。)。このペースでは5000億円でも3年ほどで食いつぶしてしまう可能性が高いと思われます。

ちなみに武富士の純資産は1500億円ほど。可能性は乏しいと思われますが、5年間今の状況が続けば債務超過の可能性もあります。


ところで、この種の問題には対策はあるのでしょうか。いくつかの法理論は考えられるのですが、過払金をあまり姑息な方法で逃れようとすると金融庁や最高裁からどういう反応をされるか分からないのでうかつな手は取れないというジレンマがあります。消費者金融業者としては、今は敵(?)を極力挑発せず、静かに嵐が過ぎるのを待っているという感じがあります。



さて、過払いの問題については、過去にピークを超えたといわれたことが何度かありました。しかし、その度に盛り返す状況が続き、本当のピークがどこにあるかは現在も分からない状況です。

なお、武富士の1Q決算のプレゼンでは、過払金返還金額が減少しているかのように書かれています。しかし、過払金の発生の先行指標ともいうべき移管件数(債務整理等で管理部に回される債権)は変わっていないようですし、直前の平成20年12月から21年3月のボリュームがかなり大きかったことをみると、それの反動にすぎない可能性もあります。これで本当にピークを打ったといえるかどうかは、なお、慎重に見極める必要があるかと思われます。

ちなみにこのブログでは、一般に出回っているものに比べるとかなり厳しい予想に立って数字を挙げてきたつもりですが、それでも甘かったかなというのが正直なところ。

そもそも、考えてみれば当たり前のことで、最高裁の判例一つで一つの業界が消滅するかもしれないなどという危機は、おそらく日本の戦後史で初のことと思われます。誰もが経験していない異常な状況下にあるのだから、簡単に予測が立たないのも無理がないことかと思われます。

現場では、もう少し数字は分かっているのかもしれませんが、部外者の私としては、出てくる数字から推察するしかありません。


武富士の今後ですが、緩やかに現在と同じようなキャッシュアウトは続いていくでしょう。武富士は、貸付金を回収し、少しずつ融資を絞り込んでその返還原資を捻出すると思われます。
しかし、この状況が続けば、ゆっくりと状況は悪化していき、最後は緩やかに沈没していくかもしれません。ここ1,2年は大丈夫でもそこから先は何ともいえないのではないでしょうか。


しかし思えば、MUFGや三井住友、それに新生銀行まで、揃いも揃ってよくぞこんな危ない業界に手を出したものです。銀行の消費者金融投資は、揃って失敗するのではないか、何となくそんな予想も頭を横切っています。

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