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[新 脱亜論]

渡辺利夫
文藝春秋
2008

著者は拓殖大学学長。

それだけで引いてしまう読者も多かろう。

「NHK 東京カワイイTV」などとは対極的な、オジサマ向きの本なのだ。

帯の宣伝文句は、次の通り。

いま東アジアは「坂の上の雲」と同じ舞台設定に立ち戻っている。福沢諭吉の「脱亜論」をはじめ、陸奥宗光、小村寿太郎などの明治の先人たちのしたたかなリアリズムに学ぼう。

渡辺利夫は経済学博士であり、この手の愛国本は、歴史家ではなく畑違いの学者が書くことが多い。

そういえば、アグネス・チャン、元へ、アイリス・チャンはジャーナリストであった。

ただし渡辺は、『非専門家も「歴史」を紡ぎ上げる知的作業を』せよ、と訴える。

「華夷秩序への挑戦、日本の自衛」の章。

「明治新政府樹立の旨を伝達し、新たな修好を求める国書をもって釜山港に入った日本使節が対馬藩家老であったが、李朝は国書の受け取りを拒否した。」

対して、姜在彦「西洋と朝鮮」では、「薩長を中心とする明治政府の首脳は、江戸時代の『交隣』の意味やそのいきさつを知っていなかった」とある。

「尊皇攘夷と衛生斥邪」の章。

渡辺はこれら二つのスローガンの「両者に差はない。」と簡単に片付けてしまっている。

しかるに姜在彦は、「衛生斥邪」とは「学統の純潔性を固守する立場である。」という。

明が滅びてのちは、朝鮮だけが清浄な世界になったのであり、清や倭やキリスト教国は、朝鮮を汚染する存在であった。

だからこそ、攘夷、すなわち、「夷狄を打ち攘(はら)」わなければならなかったのだ。

「日英同盟成立」の章。

伊藤博文が満韓交換論をとったことで、「日露協商を嫌悪するイギリスが伊藤のロシア訪問に
猜疑の念を持ち、この猜疑が焦慮を招いて日英同盟成立へとイギリスを誘った可能性が大なのである。」

「ポーツマスへの道」。

著者はセオドア・ルーズベルト大統領が「親日家」であると書いているが、本の後半では、アメリカのワシントン体制が日本をいわば「坂の下のドブ」に追い落としたのだ、と仄めかしている。

いつぞやのNHK番組ではもっと具体的で、「黄禍」が満州を覆ってしまったのではアメリカの中国進出が危うくなる。

そこでルーズベルトは日本の勢力を抑えるため、講和条件をロシア寄りに誘導した。

小村寿太郎は空手で帰国せざるを得ないところまで追い詰められたが、イギリスが助け舟を出した。

ニコライ二世の真意を見抜いて密かに小村に伝達し、日本はようやく樺太の南半分を獲得することが出来たのだ。

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