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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番

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一風変わった存在のソナタ。

後期の5曲の中でも一番個性的なソナタ。

ピアノソナタの基本構造から外れる、という点で右に出るものなし。

第3楽章、最も愛すべき楽章、心にしんみりとした感動を呼び起される。

私の大好きな楽章。

ケンプにこの曲はふさわしい。

 ベートーヴェンの晩年の作品はどれも大変魅力的だ。「英雄」とか「熱情」とか派手なかっこいい名前がついていないから、知名度は低い。が、音楽ファンは晩年のベートーヴェンの音楽を自分だけの宝物としてひっそりと味わっているに違いない。

 ベートーヴェンは晩年にピアノの世界でも名曲を残した。ピアノソナタの第30番から32番はベートーヴェン最後の芸術的境地を表した曲として人気も高い。

 どれも至高の境地に達した名曲だから、まとめて聴きたい。1曲も落とせないのだ。とりわけ第32番は変則的な2楽章の構成の中に音楽の最高の愉悦が盛り込まれているだけでなく、深遠な哲学が含まれていて聴き逃せない。

ベートーヴェン
 ピアノソナタ第30番ホ長調作品109
 ピアノソナタ第31番変イ長調作品110
 ピアノソナタ第32番ハ短調作品111
 ピアノ演奏ケンプ
 録音:1964年 DG

 ケンプというピアニストはかつての日本で大変な人気だったという。私はそれを老人の演奏をひたすら有り難がる独特の文化があるせいだと思っていたのだが、このCDを聴いて考えを一変させた。すばらしい!技術的にはとうに最盛期を過ぎていただろうが、そんな些細なことを忘れさせてしまう演奏だ。信じがたいほど格調が高く、思わず正座してしまう。これこそ後期のベートーヴェンではないか?

 技術を云々することのむなしさをとことん味わわせてくれる名盤。


●ピアノソナタ第30番 (ベートーヴェン)

 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタ第30番ホ長調作品109は、異形の大作《ハンマークラーヴィア》の次に書かれたピアノソナタで、続けて作曲された第31番、第32番とともにベートーヴェン最晩年の円熟期を示す作品である。

作曲時期:1820年完成、翌年出版。
献呈:マキシミリアーネ・ブレンターノ嬢に献呈。

●曲の構成

 ピアノソナタ 第30番 ホ長調 作品109

□第1楽章 Vivace, ma non troppo ホ長調

 ロンド形式、あるいは不完全なソナタ形式。流れるような叙情性を持つ2つの主題が繰り返されるが、やや不満足感を残したままあっさりと終止し、第2楽章に続く。Vivaceはまさしく「生気をもって」であり穏やかで流麗な楽章に適用するためには作曲の経緯について研究が必要である。

□第2楽章 Prestissimo ホ短調

 ソナタ形式だが、きわめて速く演奏されるため間奏曲風の印象を与える。第1楽章の透明な明るさを否定する暗い激情に満ちている。

□第3楽章 Andante molto cantabile ed espressivo (Gesangvoll, mit innigster Empfindung) ホ長調

 変奏曲形式。"じゅうぶんに歌い、心からの愛情をもって"と付記されている。主題とそれに続く6つの変奏からなり、トリルを多用した最終変奏の後に主題が回想されて静かに閉じる。第5変奏での古典フーガ的展開は後の31番、32番にも現れる晩年のベートーヴェンの理性的な特色である。

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