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2006年11月11日

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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番

 ベートーヴェンのピアノソナタは、「選帝侯ソナタ」やソナチネなどの小さい作品を除いて通常32曲です。特に後期の作風に含まれ作品番号にすると100番台に当たる最後の5曲は、ベートーヴェンの最も独創的な傑作として知られています。

 Op.110のソナタは、前作であるOp.109と同様、ベートーヴェンが51歳の1821年に作曲されました。当時のベートーヴェンは聴覚を失い、経済的に苦しく、精神的には孤独であったため、現実的な悲嘆や苦悩、非現実的な夢や、それに立ち向かう闘争といった内容が、高い密度で表現されています。

 第1楽章変イ長調はモデラートのソナタ形式で書かれ、優美で清楚で内省的な旋律が、表情豊かに歌われてゆきます。

 第2楽章ヘ短調はアレグロ・モルトで、スケルツォ風。ピアノとフォルテの強烈な対比が印象的です。中間部は、ハンス・フォン・ビューローによるとウィーンの道化芝居に由来するという、当時の流行した歌の旋律を引用しているといわれています。

 第3楽章変イ長調は、まず即興的なレチタティーボの序奏が密かに始まり、やがて『嘆きの歌』が切々と歌い出されます。主部はアレグロの3声のフーガで、途中再び『嘆きの歌』が現れるがしだいに元気を取り戻し、主題が大きく豪華に、そして素晴らしい高揚を見せ、真に悲嘆や苦悩に打ち勝って全曲を締めくくります。


●ピアノソナタ第31番 (ベートーヴェン)

 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタ第31番変イ長調作品110は彼の最後期のピアノソナタのひとつで、第30番よりもさらに叙情性を色濃く持つ作品である。とくに、歌曲のような哀切な旋律の『嘆きの歌』と呼ばれる部分と歓喜に満ちたフーガが入れ替わりながら繰り返される斬新な構成の最終楽章がよく知られている。

作曲時期:1821年完成、翌年出版。
だれにも献呈されていない。

●曲の構成
 ピアノソナタ 第31番 変イ長調 作品110

□第1楽章 Moderato cantabile molto espressivo 変イ長調

ソナタ形式。温かく優しい第1主題、躍動的な第2主題を持つ。


□第2楽章 Allegro molto ヘ短調

スケルツォ。三部形式で、軽やかな中にも全体的に不気味な雰囲気を漂わせる。


□第3楽章 Adagio, ma non troppo - Fuga. Allegro, ma non troppo 変ロ短調〜変イ短調、変イ長調

 複合二部形式と見られる。序奏の後に『嘆きの歌』と呼ばれる部分が入り、次に3声のフーガが展開され、頂点まで高まったところで再び『嘆きの歌』がト短調による途切れ途切れの旋律で歌われ、ト長調のフーガから主調に戻り歓喜を大きく表しながら完結する。

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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番

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一風変わった存在のソナタ。

後期の5曲の中でも一番個性的なソナタ。

ピアノソナタの基本構造から外れる、という点で右に出るものなし。

第3楽章、最も愛すべき楽章、心にしんみりとした感動を呼び起される。

私の大好きな楽章。

ケンプにこの曲はふさわしい。

 ベートーヴェンの晩年の作品はどれも大変魅力的だ。「英雄」とか「熱情」とか派手なかっこいい名前がついていないから、知名度は低い。が、音楽ファンは晩年のベートーヴェンの音楽を自分だけの宝物としてひっそりと味わっているに違いない。

 ベートーヴェンは晩年にピアノの世界でも名曲を残した。ピアノソナタの第30番から32番はベートーヴェン最後の芸術的境地を表した曲として人気も高い。

 どれも至高の境地に達した名曲だから、まとめて聴きたい。1曲も落とせないのだ。とりわけ第32番は変則的な2楽章の構成の中に音楽の最高の愉悦が盛り込まれているだけでなく、深遠な哲学が含まれていて聴き逃せない。

ベートーヴェン
 ピアノソナタ第30番ホ長調作品109
 ピアノソナタ第31番変イ長調作品110
 ピアノソナタ第32番ハ短調作品111
 ピアノ演奏ケンプ
 録音:1964年 DG

 ケンプというピアニストはかつての日本で大変な人気だったという。私はそれを老人の演奏をひたすら有り難がる独特の文化があるせいだと思っていたのだが、このCDを聴いて考えを一変させた。すばらしい!技術的にはとうに最盛期を過ぎていただろうが、そんな些細なことを忘れさせてしまう演奏だ。信じがたいほど格調が高く、思わず正座してしまう。これこそ後期のベートーヴェンではないか?

 技術を云々することのむなしさをとことん味わわせてくれる名盤。


●ピアノソナタ第30番 (ベートーヴェン)

 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタ第30番ホ長調作品109は、異形の大作《ハンマークラーヴィア》の次に書かれたピアノソナタで、続けて作曲された第31番、第32番とともにベートーヴェン最晩年の円熟期を示す作品である。

作曲時期:1820年完成、翌年出版。
献呈:マキシミリアーネ・ブレンターノ嬢に献呈。

●曲の構成

 ピアノソナタ 第30番 ホ長調 作品109

□第1楽章 Vivace, ma non troppo ホ長調

 ロンド形式、あるいは不完全なソナタ形式。流れるような叙情性を持つ2つの主題が繰り返されるが、やや不満足感を残したままあっさりと終止し、第2楽章に続く。Vivaceはまさしく「生気をもって」であり穏やかで流麗な楽章に適用するためには作曲の経緯について研究が必要である。

□第2楽章 Prestissimo ホ短調

 ソナタ形式だが、きわめて速く演奏されるため間奏曲風の印象を与える。第1楽章の透明な明るさを否定する暗い激情に満ちている。

□第3楽章 Andante molto cantabile ed espressivo (Gesangvoll, mit innigster Empfindung) ホ長調

 変奏曲形式。"じゅうぶんに歌い、心からの愛情をもって"と付記されている。主題とそれに続く6つの変奏からなり、トリルを多用した最終変奏の後に主題が回想されて静かに閉じる。第5変奏での古典フーガ的展開は後の31番、32番にも現れる晩年のベートーヴェンの理性的な特色である。

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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第29番ハンマークラヴィーア

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長・・・・い、ソナタ。

第三楽章でもゆうに一曲分のボリューム。

難解さからベートーヴェンの生前には理解されなかった。

誰でも弾けるっと言う代物ではない。

それゆえ、挑戦する価値がある。

弾くにも、聴くにも


●ピアノソナタ第29番 (ベートーヴェン)

 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタ第29番変ロ長調作品106は彼の書いた4楽章ピアノソナタ(全10曲)の最後となる大曲。《ハンマークラヴィーア》と呼ばれている(ベートーヴェンはシュタイナー社への手紙の中で、作品101以降のピアノソナタに、ピアノフォルテに代わりドイツ語表記でハンマークラヴィーアと記すように指定している。作品106に限ってハンマークラヴィーアと呼ばれることは、ベートーヴェンの意思に反するだろう)。後に続く最後の3曲とは対照的に、空間的な巨大さが特徴。演奏は現在でも非常に困難なものとされ、多くのピアニストにとって“壁のような存在”と言われる。

作曲時期:1818年完成、翌年出版。
献呈:ルドルフ大公に献呈。


●曲の構成

 ピアノソナタ 第29番 変ロ長調 作品106《ハンマークラヴィーア》

□第1楽章 Allegro 変ロ長調

ソナタ形式。再現部の後に二次展開部を持つ。

□第2楽章 Scherzo. Assai vivace 変ロ長調

スケルツォ。終わり近くに2拍子が差し挟まれる。

□第3楽章 Adagio sostenuto 嬰ヘ短調 

ソナタ形式。20分に及ぶ楽章。

□第4楽章 Largo - Allegro risoluto 変ロ長調

 幻想曲風の序奏と、3声のフーガ、コーダからなる。


●解説

 ベートーヴェンのピアノ作品中はもちろん、古今のピアノ作品中未曾有の規模を持つ傑作。ピアノ独奏曲として歴史の一角をなす、高度で膨大な内容。ピアノの持つ表現能力の可能性を極限まで追求しており、当時のピアノ及びピアニストには演奏不可能だったと言われる。しかし、ベートーヴェン自身は「50年経てば人も弾く!」と一切の妥協をせず、作品の音楽的価値(芸術性)のために考えうるすべてを駆使した。作曲に対する彼の後期様式を強く示す1曲でもある。当然管弦楽編曲も容易であり、ピアノに強烈な効果を発揮させている。後年指揮者などで編曲する者も多かったが、逆に管弦楽ソナタと鍵盤楽器ソナタとの相違は何かを問いかけてさえいる。

 現実には、作曲後20数年でクララ・シューマンやフランツ・リストがレパートリー化して、各地で演奏した。

 この曲を弟子のフェルディナント・リースが出版するとき、ベートーヴェンから1通の手紙が届く。受け取ったその手紙には、アダージョの最初に2つの音符を加えるようにとの指示があった。リースは回想している。「正直に言って、先生は頭がどうかしたのではないかと疑った。これほどまでに徹底的に考え抜かれ、半年も前に完成している大作に、たった2つの音符を送って来るとは。…しかし、この音符がどれほどの効果をもたらすかを知った時、私はさらに増して驚嘆した。」ベートーヴェンが細部まで徹底的にこだわり抜いたことを伝えるエピソードである。

 グレン・グールドはインタヴューの中で「鏡に映すと右手と左手がそっくり一緒になるパッセージが第4楽章にあり、確実に意図的だ」という指摘を示した。


●エミール・ギレリス ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第19番&第20番&第29番

 全集としては未完成に終わったが、ギレリスが晩年に到達した至高のベートーヴェンを聴くことができる。特に第29番の雄大なスケールは感動的だ。

 ギレリスはベートーヴェンのソナタをこよなく愛していた。彼が最後に残した録音も、ソナタの30・31番である。比較的簡単とされる初期作品の19・20番と晩年の大作「ハンマークラヴィーア」(29番)を収めたこのCDはその数年前、82年・84年の録音で、まさに彼が72年から85年までの長期に渡って32曲中27曲を録音したベート-ヴェンピアノソナタ集のミニチュアとでも言うべきものとなっている。

 ギレリスが弾くソナタは、どちらかといえばがっしりとしたものである。しかし繊細さから遠いというわけではなく、あくまでも全体の印象がそうなのであって、よく聴けば大胆な部分と繊細な部分とのコントラストが見事なまでに浮き出ている。このようなコントラストはまさにオーケストラに似たダイナミックさを感じさせるもので、ギレリスの演奏はベートーベンのソナタが本来持っている交響的な要素を、最大限引き出しているものだといえる。80年代にはルドルフ・ゼルキンとリヒテルが後期ソナタのライブ版を残しているが、それらの録音にも、やはりこのようなダイナミックさが少なからず感じられる。

 ところが、現役で活躍しているピアニストたちの演奏にはこのような側面はあまり見られず、全体的に小さく纏められてしまっている。ギレリスが残したこの録音は、そのような意味においても比類なき価値を持つものだと断言できるだろう。

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