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ベートーヴェンのピアノソナタは、「選帝侯ソナタ」やソナチネなどの小さい作品を除いて通常32曲です。特に後期の作風に含まれ作品番号にすると100番台に当たる最後の5曲は、ベートーヴェンの最も独創的な傑作として知られています。
Op.110のソナタは、前作であるOp.109と同様、ベートーヴェンが51歳の1821年に作曲されました。当時のベートーヴェンは聴覚を失い、経済的に苦しく、精神的には孤独であったため、現実的な悲嘆や苦悩、非現実的な夢や、それに立ち向かう闘争といった内容が、高い密度で表現されています。
第1楽章変イ長調はモデラートのソナタ形式で書かれ、優美で清楚で内省的な旋律が、表情豊かに歌われてゆきます。
第2楽章ヘ短調はアレグロ・モルトで、スケルツォ風。ピアノとフォルテの強烈な対比が印象的です。中間部は、ハンス・フォン・ビューローによるとウィーンの道化芝居に由来するという、当時の流行した歌の旋律を引用しているといわれています。
第3楽章変イ長調は、まず即興的なレチタティーボの序奏が密かに始まり、やがて『嘆きの歌』が切々と歌い出されます。主部はアレグロの3声のフーガで、途中再び『嘆きの歌』が現れるがしだいに元気を取り戻し、主題が大きく豪華に、そして素晴らしい高揚を見せ、真に悲嘆や苦悩に打ち勝って全曲を締めくくります。
●ピアノソナタ第31番 (ベートーヴェン)
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタ第31番変イ長調作品110は彼の最後期のピアノソナタのひとつで、第30番よりもさらに叙情性を色濃く持つ作品である。とくに、歌曲のような哀切な旋律の『嘆きの歌』と呼ばれる部分と歓喜に満ちたフーガが入れ替わりながら繰り返される斬新な構成の最終楽章がよく知られている。
作曲時期:1821年完成、翌年出版。
だれにも献呈されていない。
●曲の構成
ピアノソナタ 第31番 変イ長調 作品110
□第1楽章 Moderato cantabile molto espressivo 変イ長調
ソナタ形式。温かく優しい第1主題、躍動的な第2主題を持つ。
□第2楽章 Allegro molto ヘ短調
スケルツォ。三部形式で、軽やかな中にも全体的に不気味な雰囲気を漂わせる。
□第3楽章 Adagio, ma non troppo - Fuga. Allegro, ma non troppo 変ロ短調〜変イ短調、変イ長調
複合二部形式と見られる。序奏の後に『嘆きの歌』と呼ばれる部分が入り、次に3声のフーガが展開され、頂点まで高まったところで再び『嘆きの歌』がト短調による途切れ途切れの旋律で歌われ、ト長調のフーガから主調に戻り歓喜を大きく表しながら完結する。
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