何らかの大きな問題があって困難な状態に直面にしている開発途上国の人達、
餓えや病気に苦しむ人達に対して何か役に立ちたいという善意の国際協力関係者達は、
純粋に頑張っていることは確かだと思うが、そういう善意だけで解決できない問題は山積みだ。
援助や協力を受ける開発途上国の人達の立場では、
何かもらえることが重要なようで、病院、学校、道路や橋等のいわゆるハコモノと言われるものや、
何らかの活動に参加することでポケットマネーをいくらもらえるか、
ということばかりを気にしている場合が多い。
そこには自国民や自国の社会をよくしようという観念や、
病院であれば患者達のためという意識は希薄だ。
このため何らかの物品をもらえるようなプロジェクトにはおおいに賛成されるけど、
これが技術協力となると全く別次元の話になるようだ。
技術移転とか、技術協力、というとそれで現地の人達の技術が向上するように思えて、
協力する組織や団体の側にとっては聞こえがいいけど、現地の人達には嫌われることも多々ある。
第一に技術移転を受ける側にとっては、技術知識や能力を身につけたからといって、
個人の収入が増えるわけではないので、積極的に関わろうという意識はあまりない。
第二に外国人からああしろ、こうしろと指図めいたことは聞きたくないということ、
実際にベトナムで行われた技術協力事業では、これ以上の指図は受けたくないといった苦情もあった。
第三に仮に技術を身につけても、それを実行できるような環境にないことも問題だ。
先進国の技術と開発途上国の環境における技術は必ずしも一致しないからだ。
こういう状況は実は途上国特有の問題、というわけでもない。
なぜならば日本国内での職場、企業内のような場であっても意識変革をするのは非常に困難だからだ。
開発途上国だから問題なのではなくて、万国に共通する普通の人間の反応だと捉えるべきだろう。
国際協力の場で、特に技術協力の活動に関わりたいと思う者は、
こういう問題をどのように解決するか、
それぞれの状況や環境に合わせて、知恵を絞り、工夫しなければならない。
やる気のない人達に教えるほど大変なことはないからだ。
場合によってはやめたほうがいいという選択肢もありうる。
現場での意識変革は非常に大きな問題なため、各現場の状況に応じてかなり工夫しなければならず、
一般化してああだこうだと言うこともできないので、関係者間で知恵を絞るという以外にない。
ただしここでは、開発途上国と先進国における技術環境は異なるということは特筆しておきたい。
医療機器について海外からの研修員を受け入れる仕事があり、
研修員に同行して医療機器メーカーの技術者と技術面での意見交換をしたときのことは忘れられない。
現地にて医療機器のメンテナンスを担当している技術者からの質問は、
「供給電圧が変動する場合にはどのように対応したらよいか?」
それに対する日本人技術者の回答には正直言ってがっかりした。
「この装置はそういう状況を考慮して設計していないので、変動しないようにしてください。」
ようはこの日本人技術者は、開発途上国の現場がどのようなものであるか全く理解しておらず、
研修員の技術者がなぜどのように困っているのか、想像すらできなかったのだろう。
開発途上国の現場では、ネズミが装置の中に入り込んで配線を食いちぎる等は当たり前、
供給電圧だけでなく、周波数までも変動する場合もしょっちゅうだ。
そういう状況に対応するために定電圧装置といったものがあるが、
それは日本国内や先進国ではほとんど必要のないものだ。
別の例として、一番簡易な構造の装置ということで「懐中電灯」を取り上げてみる。
単にスイッチをONにすればライトが点灯するというだけの簡単な構造だ。
先進国であれば、何らかの装置が故障した場合は、メーカーなり販売店なりに持ち込めば、
部品の調達と修理サービスを受けることで、ほとんど購入時の状態に戻すことができる。
でも開発途上国ではそのようなサービスはほとんど期待できない。
まず部品を調達するだけでも、調達ルートがない、予算がない、修理技術がない等、
先進国の修理方法を適応できる状態ではない。
仮に懐中電灯のスイッチが壊れたとすると、
先進国の技術者であれば故障部品を取り換えることを考えるのだろうが、
部品調達もままならない途上国ではそのようなことはできないため、
故障したスイッチを取り外して、スイッチなしで点灯しっぱなしの状態にすることが考えられる。
機械の修理についてどうしても部品が必要ということであれば、
別の故障した機械から部品を取り外して、修理すべき機械に取り付ける、という知恵も必要だ。
それが懐中電灯であれ、エアコンであれ、自動車であれ、基本的な発想は変わらない。
問題はそれを国際協力の名のもとに、
協力を実施する者がそういうアイディアが生まれる背景を理解しなければならないということだ。
「技術」と言えば何でもかんでも解決するという話ではなく、
現場の状況、根本的な原因、背景等といったことも配慮したうえでの技術でなくてはならない。
先進国の技術をそのまま押し付けるだけでは問題は解決しない。
あくまでも現場の状況に合わせて最大限に効率よく対応する方法を模索する知恵と努力が重要だ。
それがなくては、現地の人達にとって本当に役に立つ技術とは言えないだろう。
続く