
「診療室にきた赤ずきん―物語療法の世界」 大平 健・著 新潮文庫
このタイトル、不思議でしょう?何だろうって思って読みました。文庫本って後ろにあらすじが書いてあるんですけど、よく解らないんですよ。
「(前略)まさか精神科を受診して、昔話や童話を聞かされるなんて思っても見なかっただろう。(中略)そこに繰り広げられるのは自分の物語なのだ。(後略)」
結局、その解らなさにひかれて読んでみました。
著者の大平さんは現役の精神科医です。童話や昔話を治療を使っているその具体例を披露されているんです。勿論、その患者さんには承諾を得て紹介されています。
どの症例も本来は深刻で、相談に来た方々の苦労や苦しみは計り知れないものだと思います。ですが、大平さんの書き方と童話を例に取ることで、深刻さが薄れるんですね。むしろ、いつか立ち直れると思わせてくれます。
例えば、「幸せなハンス」というお話を使った時の治療例があります。相談に来たのは御両親。その息子は有名大学を卒業して、有名会社に就職しました。将来的には御両親の事業を継いでもらうつもりだったようです。ところが、その息子は3年もしないうちに何度も転職を繰り返したというのです。それも、最初は有名会社でしたが、段々中小企業になっていくのだそうです。それ以外は普通の生活をしています。むしろ、明るいくらいだというのです。ただ、理由はいつも「特にない」ということでした。
「幸せなハンス」は7年奉公した後、家に帰る道々で段々貧乏になっていくというお話です。大平さんはそれを思い出されて、相談者ではなく息子に話しました。彼も頷いたそうです。つまり、彼にとって学歴も職歴も逆に必要のないものだった、だから捨てて自分の道を何となく探していたというのです。
現代のニートやなかなか就職しても長続きしない人が多い事が、即この話に繋がるとは思いません。ただ、こういう人もいるんだなぁとも思わせてくれます。
また、こういう話し方をされると、きっと自分の中の整理が早かったのでしょう。この家族は特に治療もなく、終わったとか。
少し疲れた、と思う方に本屋さんで立ち読みしてもらうにはちょうどいい厚さです。しかも、1つの症例に対して20P弱なので、心が疲れた方はお試しください。
<以降、追記>
紹介されている童話や昔話の一覧です。
「赤ずきん」 「幸運なハンス」
「ももたろう」 「3匹のこぶた」
「ねむりひめ」 「食わず女房」
「三ねんねたろう」 「ぐるぱのようちえん」
「いっすんぼうし」 「うらしまたろう」
「つる女房」 「ジャックと豆の木」
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