夢の旅路
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「いつか、この部屋に戻って来れたら良いかな」
ふと奏が呟いた。
「こんな散らかった部屋に?」
「いや、おれの部屋よりはよっぽどきれいだろ」
どうということもない部屋だった。暁の寮の部屋は二人入ればぎゅうぎゅうになり、荷物も多くなっている。文化祭で使った衣装もまだ放りっぱなしで、洗濯物は隅に積もる。テキストの類いがデスクに積まれ、その横には訳の分からない機械がなんだか繋がっているのだ。
顔をあげ、一周自分の部屋を見てから、ふと窓に目をやる。
カーテンのない窓からはちらちらと星が見えるようだったけれど、一瞬後には見えなくなる。頭上にある星空は本物だけれど、もう昔のように行けはしないのだと遠阪が言っていた。
「散らかってても散らかってなくても――おれはここに戻ってきたいな」
奏は独り言のように呟く。いつもなら意味不明な発言と独り言は放置して終わりだが、なんだか真に迫るところがあったので暁は手元の作業を中断して奏を見上げた。ベッドに座っている彼の顔は見えない。
「どうして? お前、死ぬの?」
「分かんね。人間いつ死ぬかなんて……分からないだろ」
「でも今の時代に死ぬ? 奏、またコンクールにでも出るの? 治安悪いとこでも行くの?」
言葉が空回りするように、ただ飛び出る。
養い親の横顔が浮かび、暁は首を振った。つい最近ニュースで知った養い親の死はこの世界で、システムとテクノロジーに統治された現代ではひどく珍しいことだった。それなのに友人まで失うのは天変地異が起こるのと同じ程度の確率だ。
「いや、身体にガタがくるほうがずっと早い。多分『あの人』はそれを待ってる」
「『あの人』?」
――早かれ遅かれ、君の大切な人は失われていくよ。
もう一人の『遠阪』の声が耳の奥で響く。
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