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ナゾ深まる!モーツアルトの遺骨

 4歳の頃から演奏会を開き、楽聖と謳われたモーツアルトの「頭蓋骨」が、死後215年も経った今、大きな謎を呼んでいるそうです。

 以下は読売新聞の記事です。


【ウィーン=石黒穣】
『オーストリア国営テレビは8日、ウィーン古典派の大作曲家モーツァルト(1756〜1791年)のものとされる頭蓋(ずがい)骨の遺伝子(DNA)鑑定結果を明らかにした。
 しかし、今回の鑑定も、1世紀にわたって続いてきた頭蓋骨の真贋(しんがん)論争に決着をつけることはできなかった。
 頭蓋骨は、1902年以来、モーツァルトの生地ザルツブルクにある国際モーツァルテウム財団が保管している。鑑定には、インスブルックの法医学研究所と米軍遺伝子鑑識研究所のチームが合同で当たった。
 鑑定では、ザルツブルクにある「家族の墓」から、祖母および姪(めい)のものとされる遺骨を掘り出し、頭蓋骨の遺伝子と比較した。だが、どの遺伝子の間にも血縁関係を示す一致が見られないという意外な展開になった。
 「家族の墓」とされた場所が、他人の墓だった可能性も浮上。血縁者の遺伝子との符合を手がかりに謎を解明するもくろみは、はずれてしまった。
 35歳で早世したモーツァルトは、貧しい人々用のウィーンの共同墓地に葬られた。この土地は10年後に掘り返され、モーツァルトの遺骨は散逸。だが、「墓掘り人によって頭蓋骨は回収された」と言われ、20世紀になって最終的に同財団の手に渡った。しかし、墓掘り人が数多くの遺骨からモーツァルトの頭蓋骨だけを本当に見分けられたのかを疑問視する意見も根強い』
                             (2006年1月10日0時6分 読売新聞)


 テレビ局というのは何処の国でも、視聴者が好奇心を抱き話題となるようなネタには喜んで飛びつくもののようですが、オーストリアでも例に漏れず、世界中の誰もが関心を抱くであろう、「モーツアルトの頭蓋骨は本物か!?」という疑問を解き明かすため、墓地で静かに眠る死者の魂を揺り動かしてしまったようです。

 結果的には鑑定結果は「YES」でも、「NO」でもありませんでした。

 何故なら、家族と思われていた祖母、姪の遺骨が血縁関係を示していなかったため、「モーツアルトの頭蓋骨」と思われているものと不一致ではあったが、その事を持ってNOという結論には至らなかったからです。

 こうした「事件」はまるで映画やドラマの出来事のような気がします。

 元々、「モーツアルトの頭蓋骨」と言われていたものが、本物かどうかと言えば極めて偽物の可能性が高いものだったでしょう。

 読売新聞の記事にあるように、貧者の共同墓地に葬られたモーツアルトの遺骨は10年後に墓地の移転等で掘り返されてしまった。
 大体が共同墓地なのだから、そうした場合には出てきた遺骨を分類することなく全部一緒に集め、新たな共同墓地に慰霊塔などを建てるのが普通の墓堀人達の発想の筈。

 後に「モーツアルトの骨が金になる」という時代となり、機転の利いた墓堀人は、頭蓋骨を見分けられれる人間が何処の世界にもいない、という確信から、「これがモーツアルトの頭蓋骨です。私が掘り出したから間違いありません」と言いだし、現在に至っているのではないでしょうか。

 それにしても、人間とは罪深いものです。

 仮に頭蓋骨がモーツアルトの物であろうと無かろうと、音楽を志す者や普通に生きている人にとって何の問題もありません。あるとすれば、ラスベガスで世界一の金塊を飾るゴールデンナゲットホテルのそれであったり、大英博物館に飾るロゼッタストーンなど、それらを見せ物にしてお金を集めようとする興行主のような人間達でしょう。

 偽物かもしれない「モーツアルトの頭蓋骨」を飾って人を集め、金を儲けることは難しい。何とか本物という保証書が欲しい。
 そうした心根の者と、「モーツアルトの頭蓋骨は本物か!?」というスペシャル番組を企画しようと思ったテレビマンの思惑が合致し、静かに墓地に眠る祖母と姪の墓を掘り返し、遺骨を調べることの“罰当たり”な行為を正当化させてしまったんでしょうね。

 結果は罰当たりな人間には「吉」とは出ませんでした。

 祖母と姪の間に血縁関係がない。しかもモーツアルトの頭蓋骨とも一致しない。
 まるで金儲けや名声欲に駆られた現代人をモーツアルトの頭蓋骨があざ笑っているかのようなDNA鑑定の結果です。

 モーツアルトの優れた作品は疑いようもなく現代に遺っています。にもかかわらず真贋不明の頭蓋骨は依然として現代人によってああでもない、こうでもないと弄ばれています。
 エジプトのピラミッドの発掘では、そうした罰当たりな行いをしたものは「王の呪い」で非業の死を遂げるのが通り相場。
 モーツアルトの頭蓋骨を弄ぶ者も、今後、謎の死を遂げる者が続出するかもしれませんね。

 いずれにしろ、一刻も早く墓地に返し静かに眠らせてあげて欲しいものです。

 それにしてもオーストリアでも、死者の尊厳を守ろうとする価値観は崩れてしまったんでしょうか?
価値観の崩壊という現象は日本ばかりではないようですね。

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