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わたしが乗り継いだクルマたち

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SA22編〜第2回〜

イメージ 1

*写真と記事の内容は関係ありません。写真は昨年のスーパーGT、GT300ユンケル・ポルシェです。写真をクリックしていただけるとより鮮明なフォトがご覧になれます。



SA22編〜第2回〜


 上りだと右に緩やかに曲がる複合コーナー。
 下りの場合は速度が乗るのでクリップを奥にとって高速で流して抜けるのだが、上りだと旧車では速度が乗らないのでエイペックスが2箇所あるような感じになる。
 とはいえ、突き刺さっているクルマを回避するためにブレーキで止れる速度ではない。
 そこでわたしは左に流して入ってきて左側に荷重が残っているSA22のグリップを回復しながら、本来は必要のないフェイント・ステアを切った。
 フェイント・ステアはサーキットを攻略するような方は知っている荷重移動テクニックの一つで行きたい方向・・・つまり切りたい方向とは逆の方向に一瞬だけステアして揺れを起こさせることで荷重移動を促す手法でジムカーナやラリーではよく使われる。

 しかし、これはミリセカンド単位の入力タイミングの正確さが要求されるのでちょっとでもステア入力が大きすぎたり、時間が遅れると間違いなくスピンモードに突入する。
 ここまで書いて「あ〜なるほど・・」と思った方は間違いなく上級者。

 右コーナーに100キロ近い速度で流して入ってきて向かって左側に突き刺さっているクルマがいます。自分の車線はさえぎられていてコーナーの曲率と速度の関係から反対車線に出て交わす余裕はありません。
 ここはスノーロードです。あなたならどうしますか?

 しかも昔のスノータイヤは現代のような高性能ではありません。スピンさせて交わすくらいしかこの時の選択肢はありませんでしたから、わたしがとっさに思ったのは反対側にぶつけて止める・・・でした。
 当時は冬場の交通量はほとんどなかった場所でしたし、イン側はちょっとしたエスケープのあるコーナーだったので下ってくるスキー客用バスの邪魔をすることもないはずでした。

 愛車をぶつけて停めなければならず、後ろ髪引かれる思いはありました。
 しかし、下りで止まれずにガードレールに突っこみ怖い思いをしている助手席のご婦人にこれ以上怖い思いをさせるのは良くありません。
 心の中でゴメンとSAに謝って意図的にスピンモードにしました。
 予想通り2回回ってフロントから岩壁に突っこみ止りました。昔からシートベルトは必ず装着していたので怪我もありませんでした。
 この時の悔しい思いが後のわたしの原動力になった。
 ぶつけなくても、いついかなるときもクルマをコントロール下におく。それができたらこの事故は防げた。

 不覚にもわたしは泣いた。避けられなかったことが悔しくて泣いたのではなく、純粋に愛車に申し訳なかったと思って泣いた。
 雪の降る中、外は厳しい寒さにも関わらず、わたしは車外にでてSA22の損傷度合いを確認した。フレームやクラッシャブル・メンバーまでいっていて、直せないことはなかったかもしれないがフレーム修正機などが今のようにどこにでもある時代ではなかったので修復は困難を極めたはずだ。

 学生で親のすねをかじってなんとか買ってもらった愛車を失った悲しみは大きかった。
 それがわたしを強くした。
 もっとコントローラブルで性能の高いスノータイヤが作れればなんてことはなく交わせるようになるはずだし、雪のない道路に出てからもそのまま走ることができるスパイクのないタイヤができたらもっと便利になるはずだと思った。
 わたしはこのときにすでに普通の乗用車を4WD化してクルマの基本性能を向上させるヴィジョンを持ち始めていた。
 それはこのスノーロードを走りこんだ経験があってこそだ。
 スノーロードを必要以上に怖がる方がいるが、物理を分かっていればそれほど怖くはない。怖いのは流れた時に怖がって反射的にスロットルを閉じてコントロール不能になってしまうことで、これは雪のせいではなく厳密には自身の無知さによりコントロール不能になってしまうものだ。
 どんな場合もスロットルをあけてトラクションを確保できるテクニックがあればスノーロードは怖くはない。日本人には無縁な世界かもしれないが、わたしの知り合いにはスノーロードが大好きな方が多い。
 本当にマシン・コントロールを覚えたければスノーロードが一番いい。
 なぜならスロットルを抜いた時にクルマは物理の法則に従い慣性の働く方向に流れていくから。簡単にうかがい知ることのない慣性という神の見えざる手を垣間見ることができるからだ。

 これを知らずにスロットルを踏んで走っているだけでは限界の向こう側で冷静にコントロールすることなどできない。
 不本意ながら潰してしまったSA22が今のわたしの礎になった。
 この後はやはりショックで落ち込んだ。中古だし、決して自慢できるクルマでもなかったけれど大好きだった車。今のクルマのように思い通りに動いてくれないところも良かったりする。
 わたしの通っていた大学はその名前だけで家庭教師のアルバイトが引く手数多になるほどだったのでガソリン代には事欠かなかったが、クルマを買うとなると話は変わってくる。
 わたしは家庭教師の件数を増やし、アルバイト収入の増額を目論んだが次の愛車のめどは簡単には立たなかった。

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