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蝶
「あなた」 女が甘ったるい声で私を呼んだ 女の四畳半の部屋からガラス窓越しに私は外界を眺めていた ベッドに仰向けに横たわっている女に視線を移した 女の小麦色の肌が光った 食い入るように私を見つめながら「こわい」と女が漏らした 「なにがこわいんだ?」と私が尋ねた時 女は全身を毛布で覆い「こわいんだってば」と呻いた 昔、女は妻子ある男と駆け落ちしたと私は耳にしたことがある やがて女は眠りに落ちた 私は煙草を吹かしながら再びガラス窓越しに闇を見つめた その時どこからともなく射し込んでくるやわらかな光の波の中を 真っ赤な小さな一匹の蝶が何かを求めるようにさまよいすぐに消えていった |

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