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3日目 8月4日 5:00 その後 野営場の客は増えなかった様だ。 出発。気兼ねなくアクセルを開く。 バイク乗りの不都合。この二気筒エンジンから発せられる排気音をも好きなのだが、悲しいかな走り出すと音は後ろへ出される。更にどこまでもお節介なヘルメット着用義務がその音を閉ざし、それを聞かんと更に音量をあげる馬鹿ものが現れ、二輪嫌いの世間の眉間にシワを増やす羽目となる。ともあれ今朝も快調エンジン君。 めざすは、東京。現実へ帰る。 津軽半島 国道280号。漁村の朝。 防波堤から漁をみつめる老人。すれ違いざま、こっちを見る、 ヨソモノが夏を遊んでいる、と。 サヨナラありがとう津軽。「東京まで700キロ」の標識。 下北半島、八甲田山、十和田湖、どれも今夏は無理。 東北自動車道。ひらすら南下。 盛岡を過ぎると一気に 東京射程距離内という感じがしてくる。 山が消え、車線が広がり、車が増えだす。 気温がどんどん上がっている。皮ジャンの襟がヒリヒリする。 露出部分だけが焼けた。昨日、不老不死温泉で再入場ok印の手首に回されたオレンジ色に白抜き文字のタグ。まだ着けたまま。 …………… 結局、元の鞘。主人公の暮らしで変わった事は、娘の結婚を渋々認め、 孫の出産に向けてうれしそうな細君。 …………… ただいま トウキョウ。 夕方4時 首都高速、渋滞。夕立ち。クールダウン。 何しに行ったの?と聞かれると、去年の鹿児島東京間高速道路往復の続き「ただバイクに乗っていたい旅」だった。 去年「1日当たり700キロの移動が自分には限度」というモノサシができた。ただ移動するだけで、その地を知らない。そんなの旅でも何でもないかも知れない。誰かに自慢する話でもない。 カメラの才能は元々ない。北海道をツーリングした時、雄大な風景をカメラに収めようと試みるも、出来上がったプリントを見た時の失望。脳が見た風景とカメラが切り取った風景は全然違っていた。 それに似ている、どう説明しても伝わらない。現にこの翌週、飲み会があり「夏休みどこそこへ行ってきた」と話しは盛り上がるが、どこか消化不良。うまく伝わらず、のみ屋の天井に視線は消える。 小説の言葉を借りれば「行方不明」になって来たと言う事が精一杯。 今回は1500キロ位の移動だったと思う。 しばらくバイクに乗りたくない「プチ燃え尽き症候群」が1週間ある。 何年も経ってから、ふと思い出すシーンがある。 富山、宿無しで不安な時みた夕焼けに立つ一本の木。 襟裳岬に向かう海岸線、降り出しそうな黒い雲と銀に光る道。 釧路湿原、霧の中、前を走る低速の路線バス。ふと「このバス、無人じゃないか」と思った不思議な感覚。 長野、道に迷い込み、Uターンするが、来る時には感じなかった急過ぎる登り路。森が覆いかぶさるように思えた。 どれも心細くて不安でいっぱいの時の様だ。 龍飛岬海面から沸き上がる雲「龍」がその一つに加わる事になるだろう。 しかし、このシーンは不安ではなかった。 勇気が湧いてきた。ワクワクしたシーンだ。 明日、本を返しに行こう。
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