坂本安さん(92歳)のエッセイ集に『あざみのうた』という2009年に出版された小冊子があります。
お許しを得て子供の頃、高知城の藤並神社内に住まわっていて、朝鮮人の手品を見た一文を紹介しましょう。
朝鮮人の手品
藤並神社の大鳥居の前に、子供連れの手品師がよく来ました。
ジャンジャンジャンと金属の盆を叩いて人を集め、簡単な手品から始めました。
それは二個の椀に数個の小さな毛玉を投げ込んだり取り出したりしながら数を当てさせるというものです。
二人の子供は十歳に満たないぐらいの男の子で、前髪を伸ばしていました。
軽やかに前転や横転をやって見せ、次に小さい方の子を大人の片手の上に高く差し上げ、唯一覚えさせられたであろう日本語で「チンポイターイ」と叫ばせるのです。
観客の何人かがゲラゲラ笑い、子供は下ろされます。
最後に大きい方の子は、お腹を上にして丸く反り両手で足首を握りアーチを作らされます。
その腹の上に、一人の大人が靴ごと立つのです。
子供の顔はとても見ていられません。
他の大人が、「子供がかわいそう、お金をください。」と言いながら盆をさげて回ります。
観客の輪は忽ち崩れさり、わずかな一銭銅貨が盆に投げ入れられています。
一日に何回かそれが繰り返されます。
また大人の一人が先端を丸めた短刀を自分の口から胸のところまで押し込み金を要求するシーンもあります。
しかし、観客は主に子供と貧しげな通行人だけだから、金はいくらも集まらなかったようです。
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