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6月16日15時7分配信 西日本新聞


たばこ自動販売機用成人識別ICカード「taspo(タスポ)」の導入に伴い、街角のたばこ店が次々に廃業に追い込まれている。5月1日に導入された福岡県内でも、1カ月間で69店が廃業(福岡財務支局調べ)。例年の月平均(約30店)の2倍超に急増した。タスポ導入後の売り上げ急落が原因で、「未成年者の喫煙防止」という理念の陰で影響が広がっている。 (社会部・宮下雅太郎)


「これ以上続けても、明るい兆しが見えないから…」。大野城市の西鉄白木原駅近くにある藤たばこ店。1980年の開業以来店を守る藤理〓子(とうりよこ)さん(69)は、8月でシャッターを下ろすことを決めた。たばこの小売店には、1箱につき価格の1割が収益として入る。タスポ導入後、藤さんの店では自販機の売り上げが9割減。対面販売を合わせても収益は半減した。「年金で何とか暮らしてはいける」が、藤さんは「寂しいですね」と涙が止まらなかった。

父親の代から40年以上、たばこ店を営んできた春日市の男性(54)も切実だ。5年前に会社員を辞めて店を継いだ。5月中旬から自販機だけを残し、店頭販売を休止。「今の収入では無職同然。でも、この年で新しい商売を始めるのは難しいし」と困惑する。

福岡市中央区今泉に大正時代からある老舗も苦戦が続く。人通りの絶えない場所だが、近くのコンビニに客を奪われて5月の収入は4月の3割以下に。50代の女性店主は「自販機で1日に一箱しか売れない日もある。年金がもらえるまで長いトンネルにいるようだ」と顔を曇らせた。

同市東区にある店は、自販機の売り上げが5割減。それでも健闘の部類だ。幸いしたのは、顔認証システムの自販機を設置したこと。備え付けのカメラが顔のしわや骨格で成人識別を行う仕組みで、5月末現在、全国に約4000台、県内でも216台が稼働する。タスポよりは手軽に購入できる半面、リース代が100万円前後かかるため設置に2の足を踏む店も多く、県内にある自販機の2%以下にとどまっている。

タスポを発行する日本たばこ協会(東京)によると、福岡県内のタスポ普及率は推定26・1%(5月27日現在)。7月にはいよいよ東京など関東地区で導入される。

「損害賠償ものだ」と憤りの声が上がり、“掟(おきて)破り”と分かっていても自販機にタスポを備え付けるまでに追い込まれている町のたばこ店。同協会は「順調に普及しており、混乱はない」と強調するのだが‐。


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