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8月10日23時46分配信 読売新聞
「被害にあった当時のことを覚えていますか」――。さいたま地裁で10日に始まった全国で2件目の裁判員裁判の初公判。
裁判員4人が殺人未遂事件の被害者の男性(35)に、次々と質問を投げかけた。検察側は凶器となった出刃包丁を見せ、弁護側は裁判員に直接語りかけることを意識するなど、ともにわかりやすく丁寧な立証を目指した。東京地裁に続く活発な審理は、制度の順調な滑り出しを感じさせた。
◆裁判員の発言
裁判員が最初に発言したのは、閉廷間際の午後4時40分頃。被害者の男性への証人尋問が続く中、田村真裁判長が「質問のある方、いらっしゃいますか」と水を向けた。裁判員の1人が手を挙げ、「包丁を持った相手を止めようとした時の記憶はありますか」。男性は「とにかく抵抗しようとして手を出したのは覚えています」と答えた。
別の裁判員は、被告が被害者にした借金について質問した。弁護側が、被害者の男性が関係者に三宅茂之被告(35)の借金額を実際の2倍以上と話したことが事件の引き金になった、と主張していることを取り上げ、「なぜ1000万円と言ったんですか」。被害者は「話が面倒くさくなって、勢いで強く言ってしまいました」と答えた。
さらに別の裁判員は、被告が被害者から「能なし」「早く金を返せ」などと言われたとする弁護側主張の真偽を尋ね、被害者は「一切ありません」と否定した。質問は、計5分ほどだった。
◆凶器を回す
検察側は証拠調べで、凶器の出刃包丁をプラスチックのケースごと裁判員の席に回した。裁判員は凶器の重さを確かめたり、間近で食い入るように眺めたり。女性の補充裁判員が、包丁を受け取るのを拒んだように見えた一幕もあった。
通常の刑事裁判の証拠調べでは、検察官が凶器を手に持って見せる程度にとどめていた。ある検察幹部は「凶器の重さや形状を確認してもらうのは有効。今後も使える」と述べた。
弁護側の冒頭陳述。間川清弁護士は、証言台と被告人が座る席の間に立つと、「裁判員の皆さん、本件は被害者に追いつめられて刺してしまった事案です」と裁判員の顔をじっと見つめ、大きな声でゆっくりと語りかけた。三宅被告についても「被告人」とは言わず、「三宅さん」と表現した。
ときおり身ぶり手ぶりを交えたり、間を空けたりしながら、1週間かけて朝晩1時間ずつ練習して暗記した主張を展開。加工画像を駆使した検察側と対照的に、モニターは青色の画面のままだった。主張をまとめた資料は冒頭陳述後、裁判員に配布した。
山元勇気弁護士は、「検察側の冒頭陳述で、裁判員はモニター画面や手元の資料ばかりを見ていたが、弁護側のときは顔を上げて集中して聴いてくれた」と手応えを感じた様子だった。
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