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読売新聞 12月15日(水)12時54分配信
「宝の海」はよみがえるのか――。
国営諫早湾干拓事業(長崎県)の潮受け堤防排水門開放を命じた福岡高裁の控訴審判決について、菅首相は15日、上告断念を表明した。閉め切りから13年余、常時開門される見通しとなった諫早湾。「私たちの主張が受け入れられた」と歓迎する原告の漁業者らに対し、干拓地で農業を営む入植者らは「一方的な政治判断だ。納得できない」と怒りをあらわにした。
原告で佐賀市川副町のノリ漁業者川崎賢朗さん(50)は「上告断念は、干拓事業と漁業被害の因果関係を認めることなので歓迎したい」と評価した。その一方で、「原告側が求めているのは即時の段階的な開門調査。菅首相や鹿野農相から、上告断念と開門調査実施の決定の経緯などについて、直接会って聞きたい。政府は漁業者や干拓地の入植者に不安を与えないように、きちんと説明すべきだ」と注文した。
佐賀県の古川康知事は午前11時過ぎから、県庁で緊急の記者会見。「有明海再生に向け、大きな一歩を踏み出した。長期間にわたる争いの歴史に終止符を打つべく決断した菅首相に感謝したい。ほっとした」と述べ、安堵(あんど)の表情を浮かべた。
開門調査については「新たな被害者を生み出してはならない。営農、防災、漁業が並立できるよう国に求めていく」と力を込めた。
一方、干拓地4・5ヘクタールを借り、ジャガイモやニンジンを生産している農業生産法人・吾妻旬菜(長崎県雲仙市)社長の長谷川征七郎さん(67)は、「干拓地での農業を無視した判断。開門で使えなくなる農業用水の確保や防災対策などが示されないままで、納得できない」と唇をかんだ。
雲仙市で40年近く農業を営んできたが、規模拡大のため、干拓地が完工すると同時に2008年4月に入植。新しい土地での農業にようやく慣れてきたところだ。「菅首相は野党時代、事業を批判してきたから、こんな判断に至ったのか」と怒りは収まらない。
キャベツの収穫作業に追われていた農業生産法人・アラキファーム(熊本県苓北町)の諫早営業所代表、荒木一幸さん(33)も「もう、がっかり。国は地元に一方的に理解を押しつけるだけなのか」と悔しがった。タマネギを栽培している長崎県諫早市栄田町の前田国和さん(71)は「開門されて海水が入ってくれば、農業ができなくなってしまう」と語った。
長崎県のある幹部は「今回は上告断念の話どころか、(鹿野農相が)長崎に来る日程の連絡さえない。あまりに不親切で失礼ではないか」と憤った。
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