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河北新報 4月1日(金)6時14分配信
 東日本大震災で下水の浄化センター(終末処理場)が深刻なダメージを受けた仙台圏沿岸部で一時、マンホールから汚水があふれ出した。今後、上水道やガスの復旧に伴って排水量が増えれば、汚水の流出範囲がさらに拡大する恐れもある。浄化センターの機能が完全に回復するには相当な時間がかかる見通し。宮城県は下水道流域の住民に節水を呼び掛けている。

◎一時120ヵ所で逆流 多賀城周辺

 仙塩浄化センターにほど近い多賀城市大代地区の住宅地。路上で作業員がマンホールの周りを土のうで囲み、あふれ出た汚水を道路の側溝へと誘導していた。周囲には鼻を突く異臭が漂う。
 「下水の臭いが気になって食事もまずい」。この地区に住むスーパー店員渡辺彰さん(56)は、津波で自宅1階が浸水。今度は異様な臭気に悩まされる。「水道の復旧が進み、下水量が増えれば臭いがさらにひどくなるのではないか」と先行きに不安を募らせる。
 多賀城市では大代のほか桜木、栄の両地区でも下水の逆流が起きた。汚水があふれ出たマンホールは一時、約120カ所に上った。
 市は当初、バキュームカーで汚水をくみ上げようとしたが、流出量が多く断念。土のうを積んで側溝に流す処置に切り替え、さらに、マンホールから直接ポンプでくみ上げもしている。側溝の汚水やポンプでくみ上げた水は、消毒剤をまいた上で地区内の川に放流している。
 毎日十数件の苦情が寄せられているという市下水道課の江口明課長は「職員はあふれ出た汚水の対応に追われている。このままでは下水管の点検、復旧にも入れない」と窮状を訴える。
 多賀城市大代地区に隣接する宮城県七ケ浜町湊浜地区でも、汚水が路上にあふれた。
 七ケ浜町は今も断水が続いているが、他市町からの排水で下水道の幹線が満杯になり、結果的に町内の汚水があふれ出たとみられる。給水制限に加えて節水を呼び掛けざるを得ない状況で、町職員は「非常に心苦しい」と話す。
 仙塩浄化センターは仙台市泉区や宮城県利府町の大規模住宅団地から出る生活排水の処理を一手に引き受けている。今後、大雨が降った場合、事態は再び悪化するかもしれない。(加藤伸一)

◎ポンプ停止で危機に 角田周辺 

 角田市では、汚水をくみ上げて下流へ送るポンプが震災直後の停電で止まり、ポンプ場の手前に位置する岡など3地区で汚水があふれ出た。
 市はバキュームカー5台を使って汚水をくみ上げ、農業用集落排水施設に運搬。ポンプ場は電気の復旧で3月21日にくみ上げを再開し、ようやくマンホールの水位も下がった。
 だが、これで一安心とはならない。角田市の下水を処理する県南浄化センター(岩沼市)は、震災で機能が停止したままだ。角田市下水道課は「排水量が増えないよう、広報車や区長を通じて市民に協力を呼び掛けている」と話す。
 宮城県丸森町でも、停電でポンプ場が一時停止した。町は3月18〜22日、各世帯への給水を午前6〜9時の3時間に制限。水の供給を抑えることで生活排水も抑制し、汚水の流出を回避した。
 町はポンプ場が復旧した22日以降も、広報紙などで節水を呼び掛けている。町建設課は「給水制限をしたことで町民の節水意識は高まっている。(下水管の上流部に当たる)丸森町が下流の自治体に迷惑を掛けるわけにはいかない」と強調した。(小木曽崇)


◎現状と対策は/処理量は仙塩5割、県南8割
消毒・沈殿物除去し放流/完全復旧に2年

 宮城県営下水道の仙塩、県南両浄化センターは、汚水をくみ上げるための大型ポンプが津波で壊れた。「心臓部」とも言える設備の機能停止だ。それぞれ小型ポンプで対応しているが、処理量は仙塩が通常の5割、県南は8割にとどまっている。
 県は、汚水を塩素剤で消毒して川に放流する緊急措置に踏み切った。さらに、浄化センターの隣地などに突貫工事で露天掘りの貯水池を造成。ここで汚水の沈殿物を除去し、上澄みを消毒して川に流す策を講じた。
 国土交通省のポンプ車も3月29日到着し、仙塩浄化センターで汚水をくみ上げ、川に放流する作業に参加。多賀城市や七ケ浜町で発生した汚水噴出は31日に止まった。
 浄化センターで大型ポンプが復旧し、汚水のくみ上げが可能になるのは、仙塩が4月下旬、県南が5月中旬の見込み。その際も、汚水処理は簡易沈殿と消毒にとどまるため、放流時の悪臭や水質汚濁は避けられない。
 微生物を用いた通常の分解処理ができるようになるまでには、2年かかるという。
 マンホールからの汚水流出を防ぐには、下水量の約6割を占める生活排水を抑える必要がある。上水道の復旧とともに各家庭の水道使用量は徐々に増えており、今後、ガスの復旧も進めば、風呂の使用などで排水量はさらに増加する。
 少しでも生活排水を減らす対策は(1)風呂、シャワー使用時の節水(2)風呂の残り湯で洗濯やトイレを流す水の再利用(3)食器のため洗い―など。洗濯や食器洗いで生活排水の排出が集中する午前9〜10時の時間帯をずらして家事をするのも有効な対策の一つだ。
 生活排水を確実に減らすには、丸森町が踏み切った給水制限が最も効果的。ただ、実施の判断は「各自治体に委ねられる」(県下水道課)のが現状だ。(門田一徳)

  ◇   ◇  ◇
 施設が壊れた浄化センターの規模と現状は次の通り。
■仙塩浄化センター(多賀城市)
 処理区域は仙台市の泉、宮城野両区と多賀城、塩釜の2市、利府、七ケ浜、大和の3町。流域人口は約31万5000人。
■県南浄化センター(岩沼市)
 処理区域は仙台市太白区と名取、岩沼、白石、角田の4市、蔵王、大河原、村田、柴田、丸森、亘理の6町。流域人口は約26万6000人。
■石巻東部浄化センター(石巻市)
 処理区域は石巻市と女川町。流域人口は約3万3000人。汚水のくみ上げポンプは破損したが、応急の小型ポンプで対応している。
■仙台市南蒲生浄化センター(宮城野区)
 処理区域は仙台市。流域人口は約70万人。下水処理は簡易沈殿と塩素消毒にとどまっているが、下水管が自然勾配を利用してセンターへ流れ着く構造のため、流域の途中でマンホールから汚水が流出する可能性は低い。


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