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産経新聞 4月13日(水)7時56分配信
■小児の臓器提供なお課題
昨年7月の改正臓器移植法の全面施行から約9カ月。初めて15歳未満の子供の脳死判定が実施された。今回提供される見通しの臓器のうち、未成年の患者に移植される予定となっているのは「原則18歳未満の提供は18歳未満へ」と定められた心臓のみ。その他は国で定めた基準に基づき成人に提供される予定になっている。しかし、従来、海外渡航でしか命が救われなかった子供たちに一筋の光が差したことは確かだ。
ただ、小児の臓器提供が定着するためには数多くの課題も抱えている。
幼いわが子が「回復の見込みがない脳死状態である」と診断された親の悲嘆は想像にあまりある。
親が子供の脳死判定を承諾することは、一般的な心臓死より前に子供の“死”を判断することでもある。改正法施行以降、大人の脳死判定が9カ月で40例以上あった一方、小児がなかったのは、こうした親の心情が大きいと言われてきた。
家族が重い決断を下すためには、誰もが「子供に十分な医療が尽くされた」と納得できるような国内の小児救急医療体制の充実や、医師による脳死に関する詳細な説明と厳格な脳死判定、残された家族への手厚い心のケア体制確立などが重要となる。
一方、医療関係者の多くが頭を悩ませているのが、18歳未満の脳死判定を行う際に定められている「虐待」の有無の確認だ。
実際に、虐待がないと証明することは難しく、医療機関は後日虐待が判明するケースなどを懸念している。
臓器移植ネットワークは今回、脳死判定に至った詳細な過程について「提供者の意向」「プライバシーの保護」などを理由に公表していない。
提供者の意向やプライバシーが配慮されるのは当然だが、脳死移植は、一つの命が失われることによって他の命を救う行為であることを忘れてはならない。治療の過程や虐待の確認、脳死の判断など“命”がつながれていった過程を可能な限り透明化し、公正に善意が届けられたことを明らかにすることも、今後臓器移植で救われる命を増やしていくためには不可欠だ。(豊吉広英)
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