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毎日新聞 5月29日(日)10時20分配信
東日本大震災で被災した石巻市牡鹿地区住民を励まそうと、日本小型捕鯨協会(東京)が同地区の避難所に生鯨肉を送ったところ、市が「食中毒の原因になりかねない」として、28日に配達をストップさせたことがわかった。昨年9月に市が同地区で生鯨肉を販売した際、集団食中毒が発生したこともあり、止めたらしい。一方、鯨肉を楽しみにしていた避難住民はがっかりした様子だった。【石川忠雄】
鯨肉は春季釧路沖鯨類捕獲調査で捕獲されたミンククジラの生肉。同調査には石巻市鮎川出身者も参加しており、中には今回の津波で家族や自宅を失った人もいる。鯨肉発送は「避難所生活をしている家族や地域の人たちに鯨肉を食べてもらい、元気になってほしい」という鮎川出身者らの思いに日本小型捕鯨協会が応えたものだった。
同協会の申し出を受け、市牡鹿総合支所地域振興課職員が避難住民に意向を確認すると、ほぼ全員が「鯨肉を食べたい」と回答。協会はこれを受け、牡鹿地区の避難所23カ所に鯨肉が28日正午前後に届くよう、26日に計280キロの肉を宅配便で釧路から発送した。
しかし、27日夕に生鯨肉送付を知った市産業部は「食中毒の恐れがある」と、同協会に配達中止を要請。既に発送済みだったが、協会は業者に連絡して配達を止めさせた。
市産業部は「衛生面でも、避難所で生鯨肉を食べることは問題。長い避難所生活で抵抗力が弱っているお年寄りが食中毒になる恐れが高い」と配達を止めさせた理由を語った。
市は昨年9月、牡鹿地区住民に生鯨肉を販売。その後、住民約160人が食中毒症状を起こしたため、市は住民に約400万円の損害賠償金を支払ったことがある。
市牡鹿保健福祉センターに避難している土屋京子さん(57)は「送り主の善意を無視している」。自宅が津波で全壊した遠藤幸男さん(60)は「生食がだめなら加熱処理すればよいのに」と市の対応を疑問視する。
日本小型捕鯨協会の木村親生事務局長は「残念だが無理に押しつけるわけにはいかない。楽しみに待っていてくれた地域の人たちに心苦しい」と戸惑っていた。
5月29日朝刊
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